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その世界、不可思議につき ~異世界精霊戦闘奇譚~  作者: 銀銅鉄金
強襲、クロックナンバー
45/94

6

「うーん、暇なんだぜ。……あっそうだ。襲ったのは私の方なんだからぁ────」

そう呟くとテトラは武器を構える。そしてニヤリと笑ったかと思うと────

「私からしかけちゃえば全部解決なんだぜ!」

「ッ!?」

テトラはあろうことか雫ではなくソフィアの方に向かって突っ込んできた。目にもとまらぬ速さで。射程圏内に入った瞬間にソフィアの頭部目掛けてモーニングスターを振り下ろす。

「アホかッ!!」

当たる寸前で雫が両手の刀で受け止める。ギィンという鈍い音が響く。

「あわわわ……」

ワンテンポ遅れてソフィアが驚いて尻もちを着く。さっきまで戦うと言っていた気迫はどこへやら、青ざめた表情をしている。

「何が解決だ! 意味わかんない事言ってんじゃねぇ!!」

「いやー、闘う闘わないでいつまでも押し問答してるんだったら、私が攻撃しちゃえば闘わないといけない状況になるんだぜ? さすが私! 選択できる女は違うんだぜ!」

「だから、アホか! だったらオレ狙えばいいだろうが! なんでソフィアさん狙ったんだよ!」

「ソフィアを狙えば自分の身を守るために闘う必要があるだろ? 本人が闘いたそうにしてたからその意見を尊重したんだぜ!」

「オレの方を尊重してくれよ……!」

雫とテトラの二人は鍔迫り合いをしながら会話をしていた。拮抗しているように見えなくもないが、ジリジリと雫の方が押されていた。

「ほらほら~。話してると力が入らないんだぜ? 押し切っちゃうぜ?」

「クッソ……」

テトラの方はいかにも余裕といった表情であるが、雫の方は苦痛に歪んだ表情であった。

そもそも雫の方は両手を使った刀二本で受け止めているが、テトラの方は片手で武器を扱っていた。誰がどう見ても力の差は歴然であった。

と、そのとき

「え、エイッ!!」

いつの間にか立ち上がっていたのか、掛け声と共にソフィアがテトラの側面にタックルをかました。

足場が砂地だからか、慣れていないのか、非常に弱弱しく不格好なタックルであった。

「おっとっと?」

テトラはソフィアがぶつかって来るとうに前から気付いていたが避けることはせずにタックルを受ける。そしてわざとらしくよろけてみせた。

「あ~れ~」「わわっ!?」

そのままソフィアと一緒に地面に倒れ込んだ。

「何やってんだよソフィアさん!」

雫はソフィアに駆け寄ろうと近づくが、テトラはソフィアを抱きしめたままゴロゴロと砂の斜面を転がっていく。

「目ぇ……、目がぁ……。回ってぇ……」

「アッハッハッハ!」

転がりながら目を回しているソフィアと楽しそうに大笑いしているテトラ。非常に対照的であった。

「そーれ、こちょこちょこちょこちょ!」

「!? ……あはははは!! や、止めてください~!」

平地まで転がりようやく止まったと思った矢先、テトラがソフィアの脇腹をくすぐり始めた。どうもソフィアは脇腹が弱いようで我慢できずに笑いだし、身をよじらせる。

「何やってんだ……」

雫が呆れたような表情で砂の斜面を両足で器用に滑り降りながらソフィアたちに近づく。

「く、く、黒川く~ん……。た、助けてくださ~い……」

「ほーらほら。今度は上下にこすっちゃうぜ~?」

笑いつかれたのかゼーゼーと息をしているソフィア。表情が表現できないほど歪んでいた。一方のテトラはまだまだ楽しそうにソフィアの脇腹をくすぐり続けている。

状況を知らない人から見れば少し過激にじゃれあっている女子二人にしか見えないだろう。

「おら、離れろテトラ。いつまでやってんだ」

二人の目の前まで来た雫は少し乱暴にソフィアの身体を引っ張り、テトラから引き剥がす。

「あっ。……あーあ、せっかく遊んでたのに。邪魔しないでほしいんだぜ」

「うるせえよ。ソフィアさん死にかけてんじゃないか」

「……コヒュー……コヒュー……」

ソフィアはビクビクと痙攣していた。よっぽどくすぐり攻撃が効いたらしい。

「ソフィアさんもほら。しっかりして。……てかなんであんな無茶を?」

「い……いや……。く、黒川君が……ピンチだったんで……体が勝手に……」

息も絶え絶えにそう答えたソフィアをみて雫はため息をついた。

「……あなたの好奇心と優しさはいい感じにマッチしてるけど、早死にするタイプだな……」

「え、えへへ……。そんなに褒めなくても……」

「うん、褒めてないから」

雫はソフィアがなんとか立ったのを確認すると手を離す。ソフィアはふらついてはいるがなんとか倒れないように踏ん張った。

「もう無茶すんじゃないよソフィアさん」

「はーい……」

「……とうッ!!」

「グエッ!?」

ソフィアに軽く説教をしていた雫は、突然吹っ飛ばされた。テトラが雫に向かって飛び蹴りをしたからであった。

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