機上の人
ポン、と気の抜けたような音がして、シートベルト着用サインが消えた。
飛行機は安定飛行に入ったようだ。
すばらしくふかふかの椅子に吸っていると、思わずここが飛行機だということを忘れてしまう。
「お待たせしました。当機は安定飛行に入りました」
認識から少し遅れて、機内放送がはいった。
手野航空のごく一部の路線にのみある特級クラスの座席、ファーストクラスよりもさらに上位の座席は、半個室のタイプとなっている。
誰からも邪魔されることなく、まるでホテルのようなサービスを受けることができるようになっていた。
ここを選んだのは、一度は載ってみたかったということもあるが、1年間にファーストクラス利用を10回以上した場合、無料で1回アップグレードすることができるためだ。
残念なのがその座席数の少なさで、特級クラスに乗るために2か月待たされてしまった。
しかし、それを上回る満足感が、身体全身を包み込んでくる。
ファーストクラスよりもさらに上位のもの。
他じゃ体験できない、素晴らしい体験となるだろう。