変貌
すいません遅くなりました!!
突如として現れた少女にヘクターは驚きを隠せなかった。
ナノウェポンが人体化するなど聞いたこともなっかったからだ。
そしてなにより、この少女はクロスよりも格上の風格が漂ってくる。
死神一人の相手ですら手に負えない状況なのに正体不明のもう一人と同時に相手するなど軍隊を一人で相手をした方がよっぽど楽に感じられた。
額から出る冷や汗。
果たしてこの汗は手首がなくなったことから出ているのか、この状況に対して出ているのか本人にも分からなかった。
そして、この状況を打開するためヘクターはある決断をする。
アカデミー社からトッププレイヤーにしか支給されていないドラッグ。
Nウイルスの使用。
このドラッグを使用すると細胞を活性化させ、劇的に身体能力があがり、自己蘇生を持つようになりどんなキズも瞬時に蘇生してしまう。かの有名なヴァンパイアさながらの能力を得ることができる。
しかし、そんな都合が良いことばかりではないのは、目利きの読者ならお分かりであろう。
その通り、この効果は約15分間しか持たずこの時間を過ぎてしまえば細胞が負荷に耐えきれなくなり死滅し体が崩壊してしまう恐ろしいデメリットを保有している。
けれど、今のヘクターにとってそのデメリットはまるでデメリットにはなり得なかった。
なぜならこの先にはどちらにしろ死しか待っておらずその死に方が変わるだけであるのだから。
そして密かな決意を決め内ポケットに手を動かす。
その時だった、まるで母親に隠し事がバレた子供のような感覚に陥る。
そうあの少女が突然として声をかけてきたのである。
それもいまからまさに行おうとしていることを咎める声が。
しかし、ヘクターは一瞬硬直するがすぐさま注射器を取り出し、一切の戸惑いも見せずに首に打ち込んだ。
「妾が態々忠告したのにもかかわらず使用するとは、どうしようもない阿呆じゃなこやつは。」
咲夜は目を細めゴミを見るかのように再度口を開く。
グギギギギギッギャ、、、、
ヘクターの変化はすぐに始まった。
みるみる内に手首は再生し、そして瞳孔は異常に開き血走り筋肉が異常に発達していく。
まるで、狼男の様な風貌に一瞬にして変貌を遂げる。
そして塞ぎこむような態勢になっていたヘクターから突如として笑い声が漏れる。
クックククククッ、、、ハッハハー
「なんと気持ちがいいのでしょう。力を持つとはこういうことなのですね。身体の内から力が湧き出て来ます。癖になってしまいそうです。おやおや、こんな話をしている時間は無かったのでしたね。さて、行きますよ死神様とそのご息女?さま。」
ヘクターはニヤリと笑うとクロス目掛けて突っ込んで行きそれと同時になんともシンプルなパンチを一つ放つ。
そしてそのスピード否や先ほどのそれとは全く違うスピードであった。
「ちっ」
クロスは予想以上のスピードに思わず舌打ちを打つ。
流石のクロスでも交わしきれずに初撃をもらってしまう。
あまりにも重いその一撃でクロスは10メートル以上は離れていたであろう壁まで一瞬で吹き飛ばされ激突する。
その衝撃で土埃が舞い上がり壁はまるで車が激突した後の様なありさまだった。
「初めて死神様に触れることが出来ましたね。いやはやこの程度でまさかくたばっているわけではございましょう?」
土埃の中から首をポキポキと鳴らしながら歩いて来る人影が現れる。
そう死神クロスである。
「おい変態。誰に向かって言ってんだ?あっ?たかだか一撃で調子に乗るなよ」
「おやおやそうですか。ならばその余裕な顔を絶望に変えてあげましょう。」
その瞬間クロスとヘクターは同時に駆け出す。
そして、部屋のほぼ中央にて激突す。
クロスはいつの間にか武器に戻っていた咲夜を手に、一直線にダガーに変わった咲夜をヘクターの喉元に斬りつける。
しかしヘクターは皮一枚といったところで躱しそのまま膝を鳩尾に蹴り込む。
先程の巻き戻しの様な光景が蘇る。
またしても、クロスは吹き飛ばされ壁に衝突し土埃の奥底に沈んでしまう。
「おやおや。死神。2発連続ですが?これで私めも少しは調子に乗ってもよろしいですか??」
ヘクターは今の力があれば死神さえ凌駕できると確信していた。
カチッ
「あっ?なんか言ったか変態?」
ヘクターの後頭部から伝わる金属音。
いつの間にかにクロスは背後を取りヘクターの頭に愛銃となった咲夜を突き付けそのまま引き金を引いた。
ドサッ
ヘクターはそのまま前面に膝から倒れた。
「何をしようが変態は変態だ。この変態野郎。」
クロスは咲夜同様ゴミを見るかの様な目で死体を見下しそのまま踵を返し着物を着た男を見る。
それに気づいたかの様に今まで目を瞑っていた男の目が開く。
そして口が開く。
「まだ終わって居らぬぞ小僧。」
その言葉を聞いたクロスは頭だけ動かし後方を確認する。
そこには何事も無かった様にヘクターが立っていた。
「おやおや。その様な攻撃で今の私が死ぬとでも?」
to becontinued