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和装の男

「二の型・閃光」


微かに聞こえた呟き。

刹那クロスの前髪がパラパラと数本空を舞う。


「ほう。これを避けるか。」


和装の男は感心したように、そして何故か嬉しそうに口角が上がる。


避ける?なにをこの男は言っている?

剣尖など一瞬たりともクロには見えていなかった。

体が勝手に動いた。ただそれだけだった。


「お前。何者だ?」


クロスからは先程までの戯れた様子は一瞬のうちに消え去っていた。


「ん?ただの老いぼれ傭兵じゃが?お主視力がちと悪いのかのう。」

和装の男はおどけるように答える。


「戯言はもういい。お前ほどの力を持つものがただの雇われなわけがないだろう。」

鋭い視線を和装の男に向ける。


「今の若い者は冗談も通じないのでは面白みが欠けるのう。あー嫌な世の中じゃ。」

そういうと和装の男は咲夜に顔を向け再度口を開く。


「なあ、そうは思わぬか輝夜?」


その何気ない一言。ただ、知り合いに同意を求めただけ。なんでもないただの他愛もない会話。しかし、そのたった一言に咲夜の目は見開き小刻みに震えていた。


「なぜその名を知っている・・・?お主まさか。いやそれはありえぬ。あやつは死んだはず。」

咲夜は何か喉に詰まらせているかの如く、うわ言のように声を絞り出す。


咲夜の異変に気付いたクロスは条件反射の如く気付いたときには和装の男に突進していた。

クロスはなぜ軽率にこのような行動をとったかなどわからなかった。

咲夜の表情を見た瞬間頭の中が沸騰するかのような感覚が押し寄せていた。

その時にはすでに身体が動いていた。


その動きは人間が出来うる動きの限界をゆうに超えていた。


本来人間の身体にはリミッターが掛けられている。厳密には脳がリミッターを掛けている。その為筋肉など全ての機関において2割程度しか使われないと言われている。

なぜリミッターが掛かっている?

それは簡単な話である。人間工学において10割の運動に対して筋肉等の回復が追いつかず崩壊してしまうからである。

しかし、クロスは咲夜能力もありリミッターが外れた状態でも活動ができてしまう。しかし、理性が著しく低下し思考能力が落ちてしまう難点が存在する。


今のクロスは偶発的であるが完全にリミッターが外れていた。

一瞬にして最高速度に到達する。相手に構える隙を与えないほどに。


シザーズ・クロー 

黒銃を振りぬき和装の男に向け連撃を放つ。


「今のは死ぬかと思ったぞ若造」

和装の男もこの強襲の連撃を言葉とは裏腹に余裕の笑みを浮べ刀で受けきる。


しかしそんなことはお構い無しとでも言うようにクロスの怒涛の攻撃は止まない。

斬撃・銃撃・打撃まるであらかじめ決められているダンスを踊るかのように繰り出していく。

相手に攻勢に出る隙など与えない。

それほど圧倒的なスピード・パワーで繰り出される攻撃に和装の男は防戦一方に陥る。

けれど男の顔には焦りの表情など全くなかった。


「第三の型 山嵐」


しかしその圧倒的な攻撃の一瞬の隙をつき、男の剣舞が舞った。

男は二刀流によってクロスの怒涛の攻撃を全て弾いて見せた。

そしてその直後男を中心にまるで竜巻を思わせる突風が吹き荒れた。

この剣舞によって攻勢一色だったクロスも一旦後ろに跳び引くしかなった。


「ちとおぬしやりすぎじゃぞ。老いぼれに対して手加減の一つもせんとは。」

和装の男は相変わらずして軽口をたたく。


「黙って死ね。老いぼれ。」

クロスはそれだけを言うと、再度特攻しようとしたそのときコートの裾を小さな手がぎゅっと握る感触が伝わる。

そこには先程まで動揺を隠しきれていなかった面影など全く無くなっている普段通りの咲夜の姿があった。


「クロよ・・・・・・・




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