第五話
「見えてきたよ。あそこがアジトだ」
アルフィが窓の外に向かって指をさす。
「あれは...神社ですか?」
「そう、あそこの地下にアジトがあるんだ」
想像していたものとは違い、正直驚いた。
俺たちは車を降りて、アジトへ向かった。
「どこから地下へおりるんですか?」
「こっちさ」
アルフィに案内され、本殿の裏に回る。そこには閑散とした社務所のような建物があった。
アルフィは社務所の扉に手のひらを合わせる。
扉全体が青く光り、二秒ほどしてから扉が開いた。
「さあ、入ってくれ」
俺たちが入り、扉が閉まると静寂が訪れる。
俺は思い出したように一つ質問をする。
「あの、母さんもこのアジトにいるんですか?」
「いや、アスカさんはここにはいない。あの人はああ見えて結構なお偉いさんだからねー。たぶん保守派の本拠地であるクリスのアジトに向かったよ」
意外だ。母さんはあんな風で地位は高かったのか。
そうこうしているうちに地下に着いた。
アルフィに案内され、まず個室に向かった。そこで荷物を置き、すぐさまのこのアジトのリーダーである支部長のところへアルフィと共に向かった。
その道中、白以外の髪の色をした人とすれ違う。
「アルフィさん、ここには『悪魔」じゃない、普通の人間もいるんですか?」
「ああ。『悪魔』の数自体が少ないからね。白髪以外の髪色をしたものは普通の人間とみていい。君みたいに黒い髪なのに『悪魔』ってのは稀だからね」
車の中で気付いたことだが、俺の髪色は黒に戻っていた。
どうやらあの白髪は一時的なものらしい。
「このアジトの中でも普通の人間は50人近くいるだろう。
主に諜報員や『悪魔』のサポートをしてくれている」
意外だ。そんなにいるもんなのか。
しかし、彼らは「悪魔」のことをどう思っているのだろうか。
そんなことを考えているうちに...
「着いたよ」
もっと厳かな感じかと思ったが意外と普通だ。
アルフィが木でできた、両開きのドアを大胆に開け、俺たちは中に入っていく。
「来たか。随分と早かったな、アルフィ」
白髪に眼帯というやばそうな男がアルフィの声をかける。おそらくこの人がこのアジトのリーダーだろう。
「支部長に早くお披露目したかったので」
アルフィに促され、俺は一歩前に出る。
「ほう。黒髪。彼が連絡にあったアスカの息子か。
ようこそ、四区デニス支部へ。私は支部長のジェットだ」
「カズヤ=ドゥ=イニアレスです。よろしくお願いします」
「早速で悪いが――――」
―――――SOS発生、SOS発生―――――
支部長の声を遮るように、アナウンスが響き渡った。
「うーん。どうしたものか。
そうだ、アルフィ。カズヤを連れて、現場に向かってくれ。
そうすればいろいろと説明も省ける」
「そうですね。わかりました」
「それではよろしく頼む」
俺は何が何だかわからないまま、アルフィと共に現場に向かった。
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