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帰郷~エピローグと言うな名のプロローグ~①

かなり放置していたものをもう一度書き直してます。読んでもらえたら幸いです。

帰郷~エピローグと言うな名のプロローグ~


 無駄に高く豪奢な天井。柄埜崎えのさき 奈津芭なつはは天井に描かれたフレスコ画をボーッと眺めていた。全身包帯まみれのマミー状態でベットに寝転がって。そこに描かれているのはこの世界の歩みとも言える戦いの歴史。一様の決着を見た今だからこそわかるこのクソッタレな画の意味。聖剣の担い手が率いる宝珠の守護者と呼ばれる奈津芭達八人と混沌との闘争(出来レース)。


「はた迷惑な話よね」


 独りごちる奈津芭。そこに新たな声が加わる。


「お目覚めですか?」


 重厚な扉を開けて入ってきたのはメイド服を纏った少女だった。エリス・ラングレー。 艶やかな黒髪のショートカット。すらっとのびたしなやかな体つきの涼しげな美少女である。彼女は奈津芭をこのはた迷惑な騒動に巻き込んだバカ王子の側近兼護衛兼側仕えという苦労人であり。奈津芭と同じ宝珠の守護者の一人でもある。


「ああ…っ…私、どれ位寝ていた?」


 身体を起こすと身体の節々から激痛が走る。


「丸三日です。そういう私も昨日の夜に目が覚めたのですが」


見るとエリスも奈津芭同様全身に治療の跡が見られた。激闘の末の決着。守護者は全員生還したが手酷い傷を負うこととなった。特に奈津芭は重傷で、普通の人間――などという言葉は今更意味を持たないが、そうであるならば百回死んでお釣りが来る位のダメージを負っていて。こうして身を起こして話している事自体が異常だった。


「他のみんなは?」

「皆さん目覚めてますよ。ミランダ様とキアナ様は神殿に帰られましたが他の方々は中庭におられます。案内しましょうか?」

「そうね。お願い」

 

 奈津芭は現在いるのは、バカ王子ことエンディー・ウル・バリスランの居城でもあるバリスラン城。遅ればせながら説明すると柄埜崎 奈津芭は日本の地方都市に住む、占いが得意という特技以外は気か少し強いというだけの普通の高校一年生の少女だった。一月半前。今居るこの異世界に召喚された。此所に来るに至った経緯は実はよく覚えていない。 この世界に召喚された当初奈津芭は記憶を失っていた。柄埜崎 奈津芭としての記憶が完全戻ったのは二週間前の事である。今現在もこの世界に来た前後の事の記憶はすっぽりと抜け落ちている。 


「優雅なものね」


 通された中庭は色とりどりの花が咲き乱れる花園に囲まれ、中央にあつらえられた大きなラウンドテーブルをかこんで談笑してる四人の姿が見えた。

 

「奈津芭。目が覚めたんだね。よかった。君を待ってったんだよ」


 テーブルに座る四人の内の唯一の男性である少年が奈津芭の姿を見て嬉しそうに話しかけてきた。

 彼こそがこの国の第一王子、エンディー・ウル・バリスラン。

 守護者統括。聖剣の担い手である。

 黒髪に灰色の瞳。王子という肩書きが間違っているのでは?と思うほどに自然体な少年だった。気取った所が無い。かといって卑屈なわけども無い。興味を持った事はとことん。それこそ度を超して追求する悪癖がなければ好青年と言って差し支えないのだがと奈津芭などは思う。その悪癖がいかんともし難い訳ではある。知識欲の化け物であり十六才という年齢でありながらこの、世界の事を誰よりも識っている男でもある。


「あれだけの負傷を受け手もう動けるなんて流石は奈津芭だね」


「本当に呆れるほどに頑丈ですねあなたは…」


 エンディーの隣に座る少女が呆れた顔で奈津芭にボソリと漏らした。守護者の一人であり隣国、エルダートの王女のシオン・エルダート。金髪碧眼に人形のように整った顔立ち。喋らなければまさに、憂国のお姫様といった出で立ちである。が、如何せん真面目で几帳面過ぎる性格をしている為、直感で動く所の奈津芭とは相性が悪く事あるごとに言い争いをしている。今も、奈津芭とシオンは顔を合わせるなりお互いに顔を顰める位の関係ではある。


「いやはや。やはり主は興味深いの。どうじゃ。やはり故郷に帰るのは止めにして我の元にこんか?」


 次は、シオンの隣にすわる十歳位の少女が奈津芭に話しかけてきた。ヴィーラ・ヴリル。煌びやかな銀髪に愛らしい容姿とは裏腹のトンデモない腹黒少女である。純真無垢に見える微笑みの裏にはいつも打算と悪巧み。本人は悪戯好きのか弱い少女と言い張るが狸な尻尾は隠せてない。その正体は機界国家ブルワーノの宰相の愛娘であり裏で国を動かしている影の宰相。

 魔導機理論の分野ではエンディーを凌駕する知識を持ち、最初は私達の敵として立ちはだかったが、今は利害が一致しているということで協力関係に落ち着いている。

 なんにしろ油断のならない子ではあるが、奈津芭としては仲間内で一番ウマが合う相手でもある。


「ははっ。アンタの悪巧みは派手で楽しそうだから心引かれるけど。まぁ、それはまたの機会にしておくわ」

「そうか。それは残念じゃの」


 奈津芭はヴィーラと独特の挨拶を交わすと、その左隣の席に腰を下ろした。

 奈津芭の座った席の左隣の席に四人目の少女が座っていた。奈津芭の顔を見ると小さく会釈をしてきた。


「おお、直ったんだ」


 奈津芭の言葉に少女は首を振った。


「いいえ、外装を取り付けただけで、現状、半分の機能が沈黙しています」


 少女はヴィーラと年格好は同じ位だがその印象は正反対の落ち着いた雰囲気をしている。彼女の名はグランシア。守護者の一人でもある機械少女。外見年齢とは裏腹に守護者の中では一番の古株でもある。


「そうなんだ。ヴィーラとエンディーなら治せそうなもんだけど?」

「グランシアは特殊でね。この世界無い理論体系だから…興味深いよ」

「然り。全く持って興味深い」


 学者肌のエンディーとヴィーラはギラついた目でグランシアを見る。そんな二人を奈津芭は呆れた顔をする。


「ってか、この子が目覚めた時、二人してこの子の事を治してたじゃない」

「あの時は基幹部品自体には損傷が無かったし、結局はオーバーホールしただけだからね」

「そうじゃの。異界には我の識らぬ技術がまだまだ山ほどあると思い知らされた。のぉ奈津芭」

「えっ、グラシアちゃんってこっちで創られたんじゃないの」

「なんでお主が知らんのじゃ?」


 訝しげな表情を浮かべるヴィーラ。エンディーがその後に続ける。


「グランシアは君のご先祖様である柊司がこっちに連れてきたんだよ」

「嘘でしょ?」


 奈津芭は衝撃受ける。奈津芭のご先祖がこの地に降り立ったのは約三百年前と聞いている。つまり三百年前。日本でいえば江戸時代に人間と見紛う機械少女を創る技術があったと言うことだ。薄々感ずいてはいたが、改めて思う。世界は知らない事だらけだと。


「まぁ、その事で君に相談があるんだけどね」

「相談って、また厄介事を押しつける気?」

「何、簡単な話だよ。グランシアも君の世界に一緒に連れて行って欲しいんだ」

「は?」


 エンディーの言葉に、奈津芭は間の抜けた声を上げた。

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