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二十浪目の君へ
「おめでとう、しんちゃん」
「ありがとう」
遂にこの日が訪れた。この時のために一体どれだけの時間を費やしただろう。どれだけの涙を流しただろう。どれだけの・・・
だが、今ではそれらの思い出すら愛おしい。今のこの感情の為に僕は今まで生きてきたといっても過言ではないのだから。
今までの日々を思い出すと当然目から大粒の涙が零れ落ちてきた。
おかしい、嬉しいはずなのに。泣けてくる、泣けてくる・・・。涙で目の前を見ることすら困難だ。
しだいに視界がぼやけていく・・・
「はっ」
ここはどこだ。
視界に広がっていたのは、満開の桜の花と一面の青空だけだった。
またここで昼寝をしてしまっていたか。目をこすり、彼は静かに立ち上がった。
それと同時に突然の春突風が吹きつけ、大量の桜の花びらが舞い、静かに地面に落ちていった。
「二十年目か」
虚ろな目つきで、彼はつぶやいた。