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第18話 恋するユニコーン

夜会の騒ぎから数日。王宮の広大な庭園に、一頭の「聖獣」が運び込まれた。

白銀の毛並みに、螺旋を描く一本の角。

純潔な乙女しか背中に乗せないという伝説のユニコーンだ。


「……はぁ。ねえ、レオン様。なんで私が、王宮中の貴族が見守る中でこんなテストをされなきゃいけないわけ?」


「気にするな、ナオミ。貴様が『清らかな乙女』であることを証明し、外野の雑音を黙らせるだけのことだ」


隣でレオン様が、なぜか自信満々な顔でこっちを見ている。

ちょっと待ちなさいよ。その設定、今の私にはハードルが高すぎない?

もし……もし私が乗れなかったりしたら、レオン様との「あの夜(※カーテンフリル事件)」のこととか、いろいろ変な誤解を招くじゃない……っ!


周囲の貴族たちは「聖女だ、乙女だ」と期待の眼差しを送ってくるけれど、今の私、正体(エロい女な本性)がバレるのを恐れてビクビクしている【裸の王様】状態なんですけど!


(……いいわよ、やってやろうじゃない。もし拒絶されたら、その瞬間に正拳突きでこの馬を黙らせるまでよ)


私が腹を括り、ドレスの裾を翻してユニコーンの背に跨がった、その瞬間だった。


「…………っ!!? ヒヒ、ヒヒィィィィンッ!!!」

ユニコーンが、これまでに聞いたこともないような【官能的なまでの咆哮】を上げた。


周囲の貴族たちが「やはり拒絶されたか!」「あの野蛮な女、化けの皮が剥がれたぞ!」と、勝ち誇ったようにざわめき立つ。


……が、次の瞬間。ユニコーンは暴れるどころか、その場に崩れ落ちるように膝を折った。

その瞳は潤み、頬(?)をピンク色に染め、鼻息を荒くして私の足をスリスリと擦っている。


「……え? ちょっと、何この反応……?」


『……あぁ、これだ! これですよ、姐さん! ワタシが求めていたのはッ!!』


言葉は聞こえない。だが、その脳内に直接響いてくるような「魂の叫び」は、あまりにも変態的だった。


『ワタシ、今まで「エロスを恥じらう、まだエロスの悦びを知らない処女」ばかり乗せてきて、正直飽き飽きしてたんです! でも、姐さんは違う! こんなにオープンに、全身から【エロスのオーラ】をドバドバと全開にしている女性、はじめて見ました……っ! 感動しました、姐さん! 一生ついて行かせてくださいッ!!』


こいつ、私の「乙女度」を測定するのを秒で放棄して、私の「隠しきれないエロのオーラ」に完落ちしていやがる……!


「……おい。馬。貴様、今、ナオミに何をされた。なぜそんな『蕩けた顔』をしている」


背後から、凍てつくような、地獄の底から響く声が聞こえた。

見れば、レオン様が、今すぐ馬を馬刺しにする一歩手前の恐ろしい顔でユニコーンを睨みつけている。


「……ナオミ。やはりこの馬、刺身にするべきではないか? 俺しか知らないはずの貴様の『オーラ』を、たかだか馬ごときが先に理解するなど万死に値する」


「……王様、落ち着いてください! その馬、多分ただの『ナオミ教(エロス支部)』の信者ですから」


伝説の聖獣が、私の足元で「ヒヒィーン(エロス万歳!)」と熱烈なラブコールを送る横で、嫉妬に狂った獣の王が爪を研ぎ始める。


ナオミ姐さん、本日十一度目の大ピンチ。

「乙女の証明」どころか、「エロス開祖の証明」が完了してしまった庭園で、私は遠い目をして空を見上げた。


(つづく)


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