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五平餅と少女

 月曜は、休園日であるため、バイトはなく、その間サトシは、宝玉についてネットや図書館で調べた。

 当然、そんなものについての記載はなく、サトシの休日は徒労に終わった。


 そして、翌日の火曜日、サトシは意気揚々と手伏区生物園(てふせくせいぶつえん)へ向かった。

 今日は、グンディの初披露の日である。SNSでの投稿も、順調に閲覧数が増えており、手ごたえは十分であった。


(きょうは何人、来てくれるだろうか……)

 この生物園では、平日の来園者数は大体平均三百人前後、多い日は五百人を超えることもある。

 これをどれほど更新することができるか、サトシは不思議とワクワクしていた。


 そう思いながら、従業員専用の出入り口へ向かうと、出口から見慣れない軽自動車が出ていった。

 『雨井製菓』と書かれた車の横を、訝しげに横切ったサトシは、エレベータで四階の従業員スペースへ向かう。そして、ロッカーへ向かおうと園長室を横切ろうとした時、中から卯月(うづき)の怒りに満ちた声が聞こえてきた。


『何を考えているの!あなたは!』

『落ち着けって、おタエさん』

『何が落ち着け、なの!あんなにたくさんの食べ物、どうやって捌けっていうの!』

 なだめるような園長の声は、却って怒りに油を注いだようだった。


『いやあ、でも結果オーライってことで――』

『結果なんて、まだ出てもいないでしょ!大体、どうして私に相談なしに、あんなに発注したの!本当にあなたは!』

『いいだろう、売れ残ったら俺が買うからさぁ』

『そんな問題じゃないでしょう!何が問題か、本当にわかっているの!?』


「あっ、丑前(うしまえ)くん、おはよう」

 ヒートアップし続ける卯月の威勢に、思わず身を縮こませたサトシに、通りがかったサナエが小声で声をかけた。


「何があったんですか……」

 サナエは休憩スペースのほうへ目配せした。サトシはうなずき、爆心地から遠ざかるように、そちらへと移動した。


「園長がね、グンディ関連のグッズを勝手に発注したらしいの」

 休憩スペースに着くと、サナエが困ったように言った。


「……また独断ですか」

「卯月さんへの根回しが全然できてなかったみたいで」

「それで、何を仕入れたのですか?」


 卯月があそこまで怒るのだから、相当まずいものを頼んだはずだ。サトシは最悪のケースを想像しようとした。


五平餅(ごへいもち)

「………………五平餅?」

「そう、五平餅」

 予想の斜め下の答えに、サトシは絶句した。


「………………どうして」

「園長曰く、グンディの写真を見たら五平餅にそっくりだった、と」

 サトシは脳内に五平餅を想像する。味噌や醤油を塗ってきつね色に焼けた五平餅は、確かに平たく伸びたグンディに似ていなくもない。


「まあ……似ていない、とも言えないですね」

「どうかなあ。きな粉飴にすればよかったのに」

「それはおいしそうですね」

「でしょ。日持ちするし、お土産にもなるし」

「で、何個入荷したんですか?」

「五十個」

「………………五十個?」

「そう。五十個」

 サトシは商品管理に詳しいわけではないが、密閉していない食べ物の賞味期限は大体一週間、(なま)ものや手作り品の場合は二、三日のこともある。

 つまり、長くても二日、できれば一日で五十個捌かなくてはいけないが、専門のお店ならともかく、ここは動物園である。毎日毎日、そんなに買う人が多いとは思えない。


 しばらくの沈黙の末、サトシが言葉をひねり出した。

「………………どうして」

「それは私に聞かないで。しかも、毎週入荷するらしいよ。どうするんだろうね?」

「……頑張って売ります」

「ごめんごめん、丑前くんに何か言いたいわけじゃないよ!私も一個くらい買おうかなー?」


 あわててサナエがおどけた時、休憩スペースに卯月がやってきた。

 その顔には、まだ怒りが残っているようであった。


「いた。箱音(はこね)さん、ちょっと良いかしら?」

「はい、卯月さん。どうしました?」

「あなた、イラストが上手だったわよね?申し訳ないけど、グンディのイラストを書いてもらえるかしら?」

「それは良いですが。どうしてですか?」

 不思議そうに首をかしげるサナエに、卯月が言った。


「あの人が買った五平餅に、イラストをつけておきましょう。そうすれば少しは売れるでしょう」

「でも、台紙とかはどうしますか」

「前の子ども会で使ったシール用紙があるでしょう?そこに印刷して頂戴」

 生物園では、定期的に近くの子供を招待して、動物に触れあってもらうことがあり、それを子ども会と呼んでいる。

 前回は、好きな動物の絵を描いてもらい、それをステッカーに写して記念とする催しをやったのだ。


「開園まで……いいえ今日中までにお願いできるかしら?」

「ええっと、前に描いたイラストでもいいですか?」

「いいわよ」

「それなら、お昼までには用意できると思います。ただ、動物の世話ですが……」

「私から、立実(たつみ)さんへ代わってもらうようお願いするわ。だからやってもらえるかしら?」


 そういって、卯月はサナエの顔を見た。サナエは少しだけ考えた後に、コクリとうなずいた。

「ありがとう、箱音さん。今回のこと、改めて報酬は支払うわ。だから、お願いね」

 そう言うと、今度はサトシのほうを見て、卯月が言った。

「そうしたら、丑前さん、悪いけど、立実さんの手伝いをしてもらえないかしら?」

「わかりました」


 サトシに断る理由はない。サトシは卯月に従って、従業員スペースから出ていった。


***


「悪いねー、丑前くん。助かるよ!」

 立実の手伝いのため、サトシはケヅメリクガメの展示ルームの清掃を行っていた。

 床やケージに散らばる糞や食べかすを立実が回収している間に、サトシは空になった餌の袋をたたんだり、ガラスの汚れを磨いていた。


 リクガメは、六十キロある体躯を揺らし、悠然とケースの中を歩いている。

 その、カメらしからぬ活発さで、子供たちに人気のある生き物だ。


「よし、ケヅメリクガメの区画も終わったし、最後はいよいよグンディのお世話だね」

「はい、わかりました」

 二人はケヅメリクガメのケースの裏にある、グンディの展示ケースへと向かう。

 すでに、展示室にいるほかの生き物──主に魚類と昆虫類である──の清掃や餌やりは終わっているのか、飼育員はサトシたち以外いない。

 ケースの中でグンディたちは、思い思いの擬岩(ぎがん)の上で、五平餅のように平たく(とろ)けていた。


「じゃあ、僕が中に入って清掃をするから、丑前くんはまたガラスの清掃をしてもらえるかな?」

 そういって、立実は持っている鍵束をケースの前でガシャガシャと鳴らす。


 これは、サナエが提案した、グンディたちを余計に驚かせないための合図であった。


『グンディは耳が良いから、展示ケースに入る前にこうやって合図をしてください』

 サナエは、研修で行った動物園で学んだという、この方法を飼育員に周知したらしい。

『こうすれば、グンディに余計なストレスをかけることなく中に入ることができます』

 鍵の音が聞こえたのか、それまでのんびりとしていたグンディたちは、蜘蛛の子を散らすように巣箱や隠れ家へと逃げていった。


 そうして、立実が展示ケースへと入っている間、サトシはガラスを外側から磨きはじめる。


『下僕、あの忌々しい音を鳴らさないように進言せよ!』

 サトシの頭に、王様グンディの怒りの声が響くが、サトシは平然と構えることにした。

『しょうがないですよ。それに、こうすれば、王様たちすぐわかるじゃないですか』

『何を言う!妃たちもおびえてしまったではないか!』


『なんかきた……』、『くわばら、くわばら』などと、確かにサトシの頭に、メスグンディ達の怯える声が聞こえる。


『わかりましたよ。箱音さんに交渉します。ただ、あまり期待しないでくださいね』

『よろしい。早ういうのだぞ!それと!』

『それと?』

『あの恐ろし気にこっちを見る猫どもを何とかせよ!』


 猫とは、この生物園で飼っている保護猫である。

 諸事情あり三匹ほど引き取っており、グンディのいる展示ケースとはエントランスを挟んで反対の方向の区画に住んでいる。

 王様グンディにとって、猫がこちらを覗いているように見えるのが気に食わないらしい。


『あの無礼者ども、常にこちらを監視しているのだ!』

『気のせいじゃないですか?ほら、誰も見てないじゃないですか』

『このたわけが!あれはきっと原初の猫の手先に違いない!』

『へえ、原初の猫ってそんなにすごいものなんですか?』

 以前も王様を襲ったのが『原初の猫』であると言っていた。だが、サトシにはそれが何だか見当もつかない。


『原初の猫も知らぬか。この没分暁漢(ぼつぶんぎょうかん)め』

『ぼ……ぼつ……?』

 とうとう、意味の欠片すらわからない、謎の言葉を浴びせかけられた。


『その古臭い言葉、何とかしません?罵られたかどうかすらわかりませんよ』

『何っ!?この程度の言葉もわからぬとは!貴様の脳みそは(のみ)以下(しらみ)以下であるか!』

 だんだんと、ついていけなくなったサトシが、一応神妙そうにすると、王様が仕方なさそうに言った。


『もうよいわ!原初の猫は、余の眷属(けんぞく)をはるか古代より付け狙う生き物の祖先のことよ』

 突然出てきたスケールの大きな話に、サトシのガラスを拭く手が止まった。

『はるか古代?祖先?ってことは、もう死んでいるのでは?』

『余も、そう思っておったが、この前襲撃を受けて分かったわ。あれは余の杖に執着しており、その魂を現世にとどめているのだろう』

 一介の大学生であるサトシには、何の話だか全く分からない。生憎、ファンタジーやら異世界転生といったジャンルもそれほど読んでいないので、チンプンカンプンである。


『つまり、どういうことですか?』

『原初の猫は、眷属である猫の種族を、自在に操ることができたと聞く。あの猫共も、その命を受けておるのであろう』

 そんな恐ろしいはずの猫だが、彼らは眠たそうに猫用ベッドでまどろんでいる。

 サトシには、あの猫たちがグンディを監視しているとは思えないが、王様はそう思っていないらしい。


『わかりました。なんか、カーテンか覆いで目隠しできるか聞いてみますね』

『こちらも早うするのだ。あやつらが妃たちを襲わないとも限らないからな』

 そんなグンディのワガママを適当に聞き流していると、立実がケースから出てきた。


「ありがとう、丑前くん!もう、大丈夫だから、売店に戻っていいよ!」

「承知しました」

 そう言うと、サトシは雑巾を片付けるため、備品置き場へと向かう。

 その背中を、ようやく隠れ家から出てきた王様グンディが、じいっ、と眺めていた。


***


 売店で、レジ番を始めて二時間が経った。

 来園者が来ることを意気揚々と待っていたサトシの気持ちとは裏腹に、二階の売店は人がまばらであった。


「SNSでさんざん告知した日なのに、人、来ませんね」

 サトシは、横にいる卯月につぶやいた。

 先ほどまでいた幼稚園生のグループも去り、売店には閑古鳥が鳴いていた。


「仕方ないわよ。そんなにすぐ、結果は出ないわよ」

 卯月が慰めるように言った。

 レジの横の五平餅の入った袋には、サナエが超特急で作ったグンディのイラストが貼っていた。

 黄色いグンディが、平たく伸びているイラストは、先ほど見たリラックスしている姿そっくりであった。


「まあ、でもさっきの子たちが結構買ってくれてよかったですね」

 先ほど来た子どもたちのおやつにするのか、引率の先生が五平餅を五つ買ってくれた。

『かわいいイラストですね!』その嬉しそうな先生の声が、せめてもの慰めである。


「そうしたら、丑前くん、お昼を食べてきていいわ」

「はい、わかりました」

 そう言うと、サトシはレジから出て、着替えのため従業員用のロッカーへ向かった。


 着替え終わり、一階の従業員用の出入り口へ向かうとき、チラリとグンディの展示室を見た。

 そこには、先ほどのグループの幼稚園生をはじめとした十数人が、展示スペースのガラスをのぞき込んでいた。


(やっぱり、人自体は来ているんだな……)

 サトシはそう思いながら、外へ出た。


 生物園のある公園の向かいには、ちょっとした大きさのスーパーがある。

 そこのお弁当は、値段の割に量もあり、サトシのお気に入りであった。

 鮭弁当を買ったサトシが、公園で食べるため戻ると、池のそばのベンチに座るサナエを見かけた。


「箱音さん!お疲れ様です」

 その声に、ベンチに座っていたサナエが振り向き微笑んだ。

 サナエは、制服の上から薄いベージュのウールコートを着ている。その姿は、公園に散歩しに来た地元の人のようであった。


「お疲れ、丑前くん!丑前くんもご飯かな?」

「はい。あっ、もしよければ一緒に食べてよいですか?」

「いいよ!もちろん!」

 そう言うと、サナエは、ベンチの横に置いていた弁当の風呂敷と水筒をずらした。

 サトシは軽く一礼すると、サナエの横に座った。


「丑前くんは、ユウマのお弁当なんだ」

 ユウマとは、スーパーの名前である。

「ここのお弁当が、結構好きなんです」

「へー。確かに、ボリュームあっておいしいよね」

「ですよね!僕、ここの弁当をコンプリートしようと思っているんですよ」

「コンプリート!?面白い表現だね!」


 フフッと少し笑ったサトシは、ふとサナエのお弁当を見た。

 彼女の弁当箱には、可愛らしい猫のイラストがプリントされていた。


「このお弁当箱、可愛いですね!いつも箱音さんが作っているんですか?」

「そうだよ。私、一人暮らしだから自分で作るんだよ」

「すごい、上手ですね」


 お弁当には、野菜の胡麻和えに唐揚げ、俵型に結ばれ、それぞれに異なるふりかけがかかったご飯などが整然と詰められていた。

 栄養バランスなども考えられていそうな華やかなお弁当をほめると、サナエは照れくさそうに言った。


「あははー。うれしいな。でも、これ昨日の残りを入れただけだから」

「そんなふうには見えないですよ!すごいです」

「ありがとうね、丑前くん!じゃあ、冷めないうちにいただこうか!」


 しばらく二人は、静かにお弁当を食べた。

 目の前の池は、釣りをしてもよいので、この時間は暇な太公望(たいこうぼう)たちが竿を垂らしているのが見て取れる。

 そんな、ほのぼのとした光景を見ながら、サトシは瞬く間にご飯を食べ終わった。


「丑前くん、ご飯食べるの早ッ!?ちゃんと噛んで食べている?」

 空になった弁当箱を見たサナエが、驚くように言った。

「はい。みんなから言われますけど、大丈夫です」

「今は若いから良いけど、早食いは太るらしいよ」

「気を付けます」

 サトシが頭を下げたのを見たサナエは、クスリと笑った。


「ねえ、丑前くん。今日、グンディを見に来た人って、どのくらいいた?」

 箸を動かしながら、サナエが池のほうへ目を向けて言った。


「午前中は、思ったよりは少なかったですね。十数人くらいですかね」

「うーん、そうだよね。私もそんな感じかなって思ってた」

 サナエは少しだけ口元を曲げた。がっかりしているというより、何かを考えているような顔だった。


「でも、午後は増えると思いますよ。SNSの反応は悪くないですし」

「そうだといいんだけどね」

 そう言いながら、サナエはおかずを一口食べた。少し間があいて、彼女はぽつりと続けた。


「私ね、この仕事に就くって言った時、親にすごく反対されたんだよ」

「え、そうなんですか?」

「うん。動物の世話って、体も大変だし、お給料もそんなに良くないから。もっと安定した仕事にしなさいって」

 サトシは黙って聞いた。

「でも、どうしても諦められなかったんだよね」

「どうしても、ですか?」

 サナエは少しためらうように一呼吸置くと、口を開けた。


「小さい頃に、近所の野良猫を拾ったことがあってね。足を怪我していたんだけど、親に頼み込んで家で看病したの」

「治ったんですか?」

「うん。一週間くらいかかったけど、元気になってくれてね。その子が回復してごはんをパクパク食べるようになった時、すごく嬉しかったんだよ」

 そう言って、サナエは少し遠くを見るように池のほうへ目を向けた。

 その横顔は、今まで見たことないほど柔和であった。


(猫か……)

 サトシはぼんやりと思った。

 確かに、サナエには猫を思わせるところがある気がした。闊達で意外な芸術肌、頼れる姉貴分であるがこうして一人でいることも好む。

 かつてテレビで見た、紳士的な巨人猫(メインクーン)がサトシの脳裏によぎった。


「だから、グンディたちにも、ちゃんと元気でいてほしいんだよね。来てくれた人に、この子たちの面白さが伝わればそれでいいって、本当はそう思ってる」

「三十万人は、どうでもいいんですか?」

 思わずそう聞いてしまったサトシに、サナエは吹き出した。

「あははっ。それは林王(りんのう)さんの夢だから!でも、まあ、たくさん来てくれたら嬉しいのは本当だよ」

 笑いながら水筒のお茶を一口飲んだサナエが、ふと思い出したように言った。


「丑前くんは、この仕事、続けてみようとか思わない?飼育のほう」

「え……」

 予想していなかった問いに、サトシは少し戸惑った。

「向いていると思うよ、私は。グンディたちも懐いているし、業者さんとのやり取りも上手だったし」

「いや、それは……箱音さんが丁寧に教えてくれたからだと思いますよ」

「そうかな」

 サナエはそれ以上は言わず、弁当箱の蓋を閉めた。


 サトシは、池に浮かぶ鴨を見ながら、少しだけその言葉を頭の中で転がした。

 向いている、と言われたのはいつぶりだろうか。思い返しても、すぐには出てこなかった。


「そろそろ戻ろうか。午後のお客さん、来てくれているといいね」

 立ち上がったサナエが、コートの裾を軽く払いながら言った。

「そうですね」


 サトシも弁当箱を袋に片付け、ベンチから腰を上げた。

 二人は並んで、生物園へと続く道を歩いた。

 冬の終わりの風が、池の面を渡って頬をかすめていく。

 サトシは、なんとなく足取りが軽くなっているような気がした。


***


 生物園に入ると、サナエはモルモットのふれあいコーナーのほうへ手伝いのため向かって行った。

 サトシは、売店へ戻る途中に、グンディの展示ケースを見ようと展示室へと入った。


 昼時だからか、すでに多くの見物客は去っており、一人の少女がいるのみであった。

 十歳くらいだろうか、少女はしゃがみ込んでジッとグンディたちのほうを見ていた。


 グンディはというと、メスのグンディたちは一番保温電球に近い岩の上で重なっていた。

 その横で、王様グンディがその少女を見返すように見つめている。


 何やら、会話しているような微笑ましい光景に、思わずSNS用の写真を撮ろうとスマートフォンを向けた。

 その少女が写らないように気を付けながら写真を何枚か撮り、シャッター音が鳴る。


 だが、少女は気づいていないかのようにグンディのほうを向いたままであった。


(よっぽど集中しているのかな?)

 サトシが少し疑問に思いながら、売店のほうへ向かおうとした時、王様グンディの嬉しそうな声が響いた。


『下僕、喜べ!新たな下僕候補がさっそくはせ参じたぞ!』

 そして、少女がやっとサトシに気付いたように、彼のほうを向くと、彼女は、きゃあ、と叫んだ。


「あの、どうして、お兄さん、ネズミさんの顔なんですか……?」

次の投稿は、来週の週末となる予定です。

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