死景
とある町のとある男が病に臥せって死にかけている。
この男、親戚は多いので皆彼を慕っている訳ではないもののぽつぽつと見舞いの客が来ていた。
3ヶ月ほどたったある日から男はこう言い出した。
「なぁ、シケイを見たいんだが。」
男は何度も同じ言葉を繰り返したが誰もそのシケイとやらがなんであるかさっぱり分からない。
ある者は死刑が見たいたんだと言ったが、男
は長年漁師として働いており、町の中でも人一番正義感が強い人物だったのでそんなことはないだろうとすぐに掻き消えた。
ある者は市警が見たいんだと言ったが、今の時分にはないので見せることは出来ないとなったため却下されてしまった。
日が経っても同じように繰り返す男にある日遠い親戚の子供は尋ねてみた。
「ねぇおじちゃん、シケーってなんなの?」
しゃがれた声がゆっくりと言葉を紡ぐ。
「あーシケイというのはね、ワタシが昔聞いたたすごく綺麗な景色なんだよ。」
「どこにあるの?」
「あぁ、遠い遠い所にあるんだってさ。もうすぐで見れる気がするよ。」
程なくして男は死んだ、死因は毒殺であった。
妻がこっそりと毒を盛り男を衰弱させていったのだ。
しかし最新の科学技術と毒の購入履歴が確認できた事により妻は逮捕された。
男の妻が捕まって程なくしたある日、子供は自分の父親に男の話をした。
「ねぇ、おとうさん。おじさんねシケーが見れたんだってさ。」
「そうなんだね、良かったね。どんなものだったんだい?」
「ふりょーのけしきなんだってさ」
「そいつは時化だね、おじさんは最後まで漁師だったって訳か。」
お後がよろしいようで