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第7話:適度な恐怖心が足りない……

前回のあらすじ


結局、エイジオブ帝国に寝返った裏切り者の魔の手からヌードンを護りきれなかったオラウ隊は、意気消沈しながら自分達が攻撃中の砦に戻る事になりました……

しかし、ヌードンの弟アニマの一喝によって自分達が同胞の死を悲しんでいる場合じゃない事に気付かされ、再び奮起します。

一方、オラウ隊と戦うヨツメ隊は、エイジオブ帝国の十八番であるクーデタードアがまったく通用しないオラウ・タ・ムソーウに対してイナオリが率いるイェニチェリをもって一気に駆逐する事が決定されたと聞き、功を焦って野戦に方向転換します。

この展開に、兵糧攻めを始めからやり直しを覚悟していたオラウは大喜び!

上手い事ヨツメ隊の背後に回り込み、後ろから奇襲してヨツメの顔に消えない傷をつけて大勝利!

しかも、砦も無傷でゲット!

踏んだり蹴ったりなヨツメ大隊は、兵力を10人未満に減らしてしまってもなお、オラウへの復讐を固く誓うのでした。


へべく!

イナオリ・ネッジー。

この少年は強運の男だった。

事の発端は、故郷の村の近くの洞窟に興味本位で入って、そこで手に入れた粉を持ち帰った事だった。

この粉は火を点けるとポンと破裂する事から『炭酸粉』と名付けた。

最初の内は少量の炭酸粉を破裂させて驚かす程度の悪戯を繰り返していたが、ある日、炭酸粉が破裂した衝撃で小石が勢いよく飛んだのを観て、とんでもない事を思いついてしまった。

炭酸粉(これ)を使ったら、大きい投石器をもっと小さく出来るんカモ?」

そう思ったが吉日とばかりに炭酸粉を使った石飛ばし実権を繰り返し、その結果、投石器の小型化に成功。豊臣秀吉がかつて居た世界で言うところの『鉄砲』や『大筒』を完成させた。

だが、直ぐには売れなかった……

その原因は二大強大大国、ムソーウ王国とマッホーウ法国が強大過ぎて一騎当千による突撃が最強の戦術と言う常識が根付いてしまったからである。

故に、遠くから石や鉄を飛ばすだけの鉄砲や大筒の有効性を伝える新たなる戦術を提示する必要が有った。

その時、行商達がクマに襲われる事件が多発した。

被害者である行商達にとっては凶災だが、イナオリにとっては吉兆だった。

先ずは、逃げ切った行商と死亡した行商の差を分析した。

すると、逃げ切った行商には荷物の奪還を早々に諦めたと言う共通点がある事を発見し、この分析が『執着心を逆撫ですれば敵を誘き寄せられる』と言う結論をイナオリに与え、これが後に接待戦法『クーデタードア』へと発展する。

次に、加害熊との戦いで鉄砲や大筒のを立証し、後にエイジオブ帝国となる弱小小国の目に留まり、多くの行商達を襲った熊との戦いで得た戦術をふんだんに発揮した。

鉄砲や大筒を使って遠くから安全に攻撃出来る事と、敵の闘争心と執着心を利用して冷静さを奪う戦法が的を射た事で、イオナリはトントン拍子に出世し遂には王室側近軍師に就任した。

そんなイナオリを雇ったエイジオブ帝国もまた、当時の世界の常識にとっては異彩過ぎる戦術が功を奏してトントン拍子に勝利を重ね、遂には二大強大大国の一角であるマッホーウ法国にすら勝利した。

だが、そんなイナオリの強運はある日を契機に終焉を迎えた。

豊臣秀吉の生まれ変わりであるオラウ・タ・ムソーウが、もう一角の強大強国であるムソーウ王国の第三王女として生を受けたのが原因であった。

つまり、オラウにはクーデタードアがまったく通用しなかった……

それどころか、指揮している部隊をほぼ無傷でヨツメ大隊が担当する砦の第一次をほぼ無傷で占拠してしまったのだ。

「で……砦を占拠しているオラウ・タ・ムソーウは?」

「まったく動きません」

イオナリはその報告を聴いて頭を抱えながら天を仰いだ。

「……そこら辺の馬鹿な将校とは違うと言う事か……早急に討たねばとんでもない禍根になるな……」

そこへ、

「ヨツメ大隊長の救助と送迎、たった今完了しました」

「……どこにいた?」

「ムソーウ王国の野営地です。既に無人でしたが」

イオナリは溜息を吐きながら顔を青くする。

「何をやっているんだ?エイジオブ帝国の将校がクーデタードアに引っ掛かってどうするんだ?」

呆れたイオナリはヨツメを呼ぶが、

「お呼びかな?軍師殿?」

「ヨツメ隊長、君は……」

ここでイオナリが口を閉じる。

そうでもしないと……場違いな大笑いをしてしまいそうだからだ。

ヨツメの口はオラウの斬撃のせいで両耳元まで裂けてしまい、そしていつも笑っている様な顔になってしまったのだ。

「うんぐっ!……こ、怖がっても……良いのか?」

笑いを堪えながら質問するイオナリにムカつきながらも、ヨツメは大人の余裕を魅せる様に冷静に答えた。

「それで軍師殿の気が晴れるのであれば……」

その途端、イオナリは笑いを堪えながらわざとらしく怖がった。

「うわぁー、怖ぁーい。そんな大口で迫れたらー、食べられちゃうぅー」

完全に棒読みである。

「何を言っているのですか軍師殿ぉー。私は人食いなどと悪趣味、しませんよぉー」

口ではそう言っているが、ヨツメは心の中でオラウを食い殺す勢いで恨み狂っていた。

(おのれオラウ・タ・ムソーウめ!必ずや『全裸で地下牢生活』を堪能させてくれるわ!)

大人の余裕とか……全然無かった!


さて……

敵の指揮官が功を焦ってくれたお陰で、思ったより早く1つ目の砦を落とす事が出来たが、その敵指揮官が焦った理由についてちょっと困った事になってもうた。

「『いぇにちぇり』……とは何ぞ?」

アニマの動物を操る魔法で敵の焦りの理由を調べたら、いぇにちぇりと言う何者かが到着する前に決着を付けようとしていた様だが、肝心のいぇにちぇりの正体が解らぬのでは意味が無い!

マッホーウ法国の残党に訊ねようにも、どいつもこいつもエイジオブ帝国の接待戦法に完全に翻弄されていぇにちぇりを引き摺り出す事が出来ない体たらく……

実際にエイジオブ帝国と戦った連中ですらいぇにちぇりについて知ってる事はこの程度でしかないので、致命的に忍者(くさ)が不足しているムソーウ王国がいぇにちぇりの正体をまったく知らないのも無理は無い。

ここに来て、未知の敵の正体が解らぬ状態で戦うとは……頭が痛いのう。

そうやって豊臣秀吉(わたし)がいぇにちぇりについて悩んでいると、ドウカァーが慌てた様子で進言しに来た。

「オラウ様、急ぎ次の砦を落とす必要性が出てきました」

ムソーウ王国王室(わたしたち)は人の味を知り過ぎた熊か?」

「熊?それはどう言う意味です?」

「執着心に溺れて恐怖心を失った熊ほど厄介な存在はいないと言う事だ。そうなってしまった熊は警戒心が無いから逃げると言う選択肢が無い。ただ真っ直ぐ己の欲望に向かって進むのみ。例えそこに罠や待ち伏せが遭ってもな」

過剰に敵を恐れ過ぎて好機を逃す臆病者も馬鹿だが、警戒心が欠如した勇猛果敢のみの愚者も馬鹿じゃ。恐怖心や警戒心を完全に失った味方は敵よりも怖い。何時味方の足を引っ張るか解らぬからのう。

が、ドウカァーは完全に困り果てている。どう言う事じゃ?

「ですが、今の我々に寄り道をしている余裕はありません」

「ん?何でじゃ?」

「国王陛下がもう直ぐこの砦にお越しになるとの事です」

「ぶーーーーー!」

豊臣秀吉(わたし)いま、口から大量のお茶を噴射しなかった!?

いやいや!それどころじゃない!

私の父上が来る!?ここに!?

「なんでも、我々だけが敵砦を壊すスピードが異常に遅い事を陛下が前々から気になっていた様で―――」

「父上は!カミカゼ兄上の不審死や客将ヌードンが裏切り者拉致された事を何も聴いていないと申すか!?」

「いえ!寧ろ、エイジオブ帝国に寝返らんとする不届き者に一喝するべく、エイジオブ帝国の砦を壊す速度を数段階引き上げろとのお達しが―――」

「ああ、もう!この忙しい時に人の味を知り過ぎた熊を味方に回す羽目になるとは!」

豊臣秀吉(わたし)は頭を抱えながら天を仰いだ……

勇猛果敢な突撃至上主義を掲げる国のトップがここに来る……これってつまり、突撃以外の選択肢を完全に失う事を意味するからだ!

人の味を知り過ぎて人を恐れなくなった熊は、例え鉄砲を構えた猟師達が待ち構えても恐れず前へ進むからねぇ!ムソーウ王国がエイジオブ帝国の接待戦法に完全に翻弄されている戦況で来て欲しくなかったのよ!

ムソーウ王国には獰猛な熊がおってさ♪ 

それをエイジオブ帝国が大筒で撃ってさ♪

煮てさ♪

焼いてさ♪

食ってさ♪

危険ワードがモリモリではありませんか!

そんな中、ドウカァーが恐る恐る私に訊ねる。

「で、如何いたしましょうか?」

「私は父上には遭わんぞ」

「……どうやって?」


そして、ムソーウ王国国王が率いる大部隊が私達が落とした砦を訪問した。

だが、国王は豊臣秀吉(わたし)に会う事は無かった。

「誰もおらぬだと?」

「はい!オラウ様はこの砦を拠点にエイジオブ帝国に奪われた国土を取り戻さんと思案していたのですが―――」

「何故直ぐに動かなんだ?何を迷う事がある?さっさと敵を叩き潰せば済む話に迷う理由が有るか?」

「……ございません!」

「ならば行くぞ。わしからカミカゼとオラウを奪った不届きな連中を捌きに」

……

……

……

あ……あっぶねぇー!

本当に敵の木こり共を皆殺しにしておいて、本当に良かったぁー!

お陰で、父上の目から私達を全て隠す事が出来たのだから。

それと、『裁き』の漢字が微妙に間違ってない?捌き(それ)だと肉や魚を料理するって意味になっちゃいますけど!

正に恐れを知らぬ熊!

あんなのの部下になったら……命が無尽蔵に有っても足りぬぞ!

そこへ、ドウカァーが予想通りの質問をする。

「やはり直接直談判すべきでは?」

……ドウカァーの言い分はよく解る!豊臣秀吉(わたし)だってそれで済めばそうしたい!

でも……

「それだと、私はおろか、ドウカァーさんまで降格してしまいますわ」

「私が!?何で!?」

「この豊臣秀吉(わたし)の突撃嫌いと慎重思考を矯正出来なかったからですわ。そうなれば『ドウカァー、お前がついていながらなんて様だ』と仰る筈ですわ」

「うっ……」

ドウカァーは反論出来なかった。

確かに、ドウカァーが豊臣秀吉(わたし)の慎重思考とズルを矯正出来なかった。寧ろ、ヌードンを拉致した裏切り者との戦いによって突撃思考が萎えてしまった時期さえあった体たらくだ。

その様なドウカァーの姿を、人の味を知り過ぎた熊の様な父上が見たら何と言うか……

……本当に……説得だけで事が済めばどれだけ楽か……

だが、悲しかな人の味を知り恐れを忘れた熊に、人の都合や言い分は通用しない。

一方通行のままどちらかが敗北して終わり……後に残るは陰惨な血だまりのみ……

悲しくてかなわんなぁ!

つまり……こうなってしまった時点で、お互い遭わない事こそが両者の幸せであり最良な行動なのだ。

……ん?

「如何なさいました?オラウ様?」

「最後尾のあの白い服を着た連中は何だ?どうも戦いに不向きな様に見えるが?」

「いや……その様な話は聴いておりません」

「何だと!?」

ドウカァーの返答を聴いた途端、あの謎の白服軍団が熊を殺そうとしている狡猾な猟師に見えたぞ!

だとすると……これはヤバいな!


一方、伝令からの報告を聴いたイナオリが勝ち誇ったかの様に邪な笑みを浮かべた。

「……そうか……そぉうかぁ」

どう言う訳か笑っているイナオリを観て不気味がるヨツメ。

「な!?……何が起こってるんだよ……」

イナオリが子供の様に大喜びする。

「やはりムソーウ王国は調査通りの単純馬鹿だったんだよ!」

本当なら「何言ってんだお前!」と言いたかったが、階級はイナオリの方が圧倒的に上なので何も言えないヨツメ。

「……どう言う意味です?」

「僕達は遂にムソーウ王国の国王を引っ張り出したんだよ!」

ムソーウ王国の大物中の大物の名を聞いて仰天するヨツメ。

「何ぃー!?国王ぅー!」

「しかもだ、君をあんな顔にしたオラウとは違って、国王は他のムソーウ王国軍将校と同じだよ」

「お……同じ!?」

ヨツメが不都合な報告に驚き蒼褪める中、イオナリがどんどん芝居の様な動きをする。

「しかもだ!その国王様がこっちに攻めて来るんだとぉー♪」

「なんだとぉー!?」

つまりだ、ムソーウ王国国王が突撃至上主義特有の失敗をイナオリの目の前で犯したのだ。

このままでは、敵国王の討伐の功績がイナオリの物になってしまうのだ。

それに引き換え、ヨツメはムソーウ王国国王より討伐価値の低いオラウ・タ・ムソーウに文字通り口が裂ける程の深手を負わされたのだ。

(これは不味い!このままでは俺はただの無能者だ!くそぉー!何で俺だけぇー!)

運悪くオラウと対峙したヨツメは、ズルズルとギャグ担当へと堕ちる状況に悶え苦しむのであった……

(ちくしょぉー!降格コースだぁー!)


そんなヨツメを尻目に、ムソーウ王国将校がエイジオブ帝国のクーデタードアに嵌って、次々と殺害または捕縛された。

「ぐっ!放せ!お前達、何をやっているのか判っているのか!?」

「勿論ですとも。ムソーウ王国第二王女をエイジオブ帝国を差し出したんです。あぁー、もう直ぐ祖国がムソーウ王国を滅ぼすから、『元ムソーウ王国』が正解でしたなぁ」

ムソーウ王国一般兵の無礼千万な台詞に怒り狂うムソーウ王国第二王女だが、既にを両手両足を縛られている為、何も出来なかった。

「何が『祖国がムソーウ王国を滅ぼす』だ!お前達はそれでも誇り高きムソーウ王国の戦士か!?」

それに対し、エイジオブ帝国将校が、やれやれポーズで体をクネクネさせながら第二王女に近付いて来た。

「いけませんねぇ。場違いな誇りなんて、延命になぁーんも役にも立ちませんよ」

非常にウザい敵将校の態度に激怒する第二王女。

「ふざけるな!何で誇り高きムソーウ王国の戦士達が、こんな無礼者に従う!目を覚ませ!」

「やーれやれ、皇帝陛下(あのかた)の賢く正しい戦術を理解してくれないとは……悲しいですなぁ」

体をクネクネさせながらわざとらしく悲しがる敵将校に、悔しそうに歯軋りする第二王女。

その時、無数の鳥が一斉に飛び掛かり、第二王女を裏切った一般兵達を混乱させた。

「うわ!」

「なんだこれは!?」

第二王女はこの隙に逃走を計ろうとするが、エイジオブ帝国将校がそれを発見する。

「あ!?逃げる!」

だが、無数の鳥が煙幕代わりとなって第二王女を庇い、その代わりに今度は無数の蜂が裏切り者達を襲った。

「ぐわぁー!追え!追えぇー!」

「駄目です!蜂が邪魔で先に進めません!」

どうにか逃げ切った第二王女は、無数の鳥に導かれる様にある者の許に向かう……鳥や蜂を操っていたアニマの許へ!

イナオリ・ネッジー


年齢:13歳

性別:男性

身長:160cm

体重:50㎏

職業:軍師

趣味:炭酸粉(火薬)を使った悪戯、悪巧み

好物:自分を理解してくれる人、マヌケな敵

嫌物:未知の強敵、マヌケな味方

特技:炭酸粉(火薬)取り扱い、悪知恵


エイジオブ帝国王室側近軍師。常に着けている舞踏マスクはただのカッコつけで深い意味は無い。寧ろ、ギャグマンガの様に喜怒哀楽が激しい性格。

偶然炭酸粉(火薬)採掘に適した洞窟を発見した事で人生が好転。最初は炭酸粉を使った悪戯をして遊んでいたが、その内、炭酸粉を使えば投石器を劇的に小型化出来る事に気付き、後にエイジオブ帝国となる地方自治体に拾われ、炭酸粉を使った投石器を用いて熊を退治した事を機に接待戦法『クーデタードア』を開発してトントン拍子に逆転勝利を重ねてきたが……

イメージモデルはネジル・ネジール【ヘボット!】。

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