表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/17

第5話:裏切り者対策が足りない……

前回のあらすじ


兵力を温存しながら勝利して魅せると啖呵を切る事で部将に復権したオラウでしたが、相変わらずアニマの小動物に関する魔法を使った情報収集と敵砦が放った木こりの抹殺ばかりで一向に敵砦を攻めないオラウに副将兼お目付け役の『ドウカァー』はイライラ。

一方、エイジオブ帝国王室側近軍師で物語の黒幕の『イナオリ・ネッジー』はムソーウ王国軍の資源収集用砦破壊速度の速さに多少驚きつつも「想定内……だが問題は無い」と余裕を保っていたが、オラウの資源収集用砦破壊速度の遅さを知った途端に想定外だと言って急に慌てふためき始めた……

その後も他の部隊が敵砦を次々と攻略する中、オラウは慌てる事無くただひたすら敵砦が放った木こりを皆殺しにする事に没頭。ドウカァーは遂にオラウに指揮官の資格が無い事をオラウに告げ、それを王都に報告しようとします。

それに対し、オラウはドウカァーをどうにか説得しようとしますが、その時脳裏に浮かんだのは産まれたばかりの秀頼の顔。

その直後にオラウが口にした言葉が、

「君、家族いる?」

残された遺族の悲しみや怒りをドウカァーに伝えたオラウは、ドウカァーに自分の部隊に所属する兵士の家族を絶対に悲しませないと誓う事でドウカァーをどうにか説得し、王都への怠慢報告を取り下げさせます。

とは言え、本当は友軍の連勝報告の連続に焦るオラウ。だがそれは功を焦っているからではなく、自分達が敵の手の平で踊らされているのではないのかと言う不安と恐怖からくるものでした……


へべく

昨日はどうにか私達の部隊の無謀な突撃を阻止する事が出来たが……

他の部隊はたった1週間で敵の砦を8ヵ所も落とすとは、1日に幾つのペースで敵の砦を落としておるんじゃ……

部隊を複数に別けて1度に複数の砦を襲撃しておるのか?

……いや、それでは単純に砦を攻める兵力が減るし、部隊を多数の小隊に別ける程の兵力を与えられた様子は……ありえなくもないか。率いているのがムソーウ王国の第一王子とマッホーウ法国の第一王女だし、もしもの為にかなりの兵力を与えて万が一の……

いやいや!

祖国(このくに)に関して言えば、身分や家柄が人事を左右するとは思えん!寧ろ、祖国(このくに)の人事は戦闘力と無謀さに左右されている……

……あれ?

これだと、かえって1週間で敵の砦を8ヵ所も落としたに信憑性が失われるぞ?

突撃一辺倒な馬鹿に、自分の部隊を複数に別ける程の知恵が有るのか?豊臣秀吉(わたし)的には有って欲しいとは思っておりますが。

まさかとは思うが、律義に全軍前進だけで敵の砦と戦っている?

まさか!

つまらない夢ですわ!子供っぽくって、豊臣秀吉(われ)ながら呆れてしまいますわ!

……あれ?

自分で言ってて……なんか物凄い不安を感じてるぞ!?

「でんれえぇーーーーーいぃーーーーー!」

何じゃ何じゃ!?

伝令兵のいきなりの涙声は!?

不安しか感じんぞ!

「どうした!何が遭った!?」

滝の様な涙を流しながらスライディング土下座する伝令兵を見れば、ドウカァーでなくとも、事情を問い詰めたくなるわな……

「カミカゼ・ダ・ムソーウ様ぁーーーーー!不可解な死を遂げられましたあぁーーーーー!」

え?……

死んだ?……

カミカゼって、祖国(このくに)の第一王子だよ!跡取りだよ!

その人が死んじゃったら、祖国(このくに)不味いでしょ!

と言うか、ドウカァーの奴、完全に黙っちゃったよ。

これこそが一騎当千の名将に指揮権を与える事のデメリット。

もしその一騎当千の名将が討死すれば、敵軍の士気が爆上がりし、自分達の士気が消滅するのは火を見るより明らか!

故に、一騎当千の名将の使いどころは意外と難しいのだが、祖国(このくに)はそんな事も考えずに一騎当千の猛将を惜しげも無く突撃させたがる。

寧ろ、「階級が部将以上の将校全員が一騎当千の猛将であれ!」とか抜かす狂った一面があるからのう……

……にしてはどうも引っ掛かる……

何故『討死した』と言わずに『不可解な死』と言ったのだ。

と言うか、

「カミカゼ兄上は、いったいどの様に亡くなられたのです?」

豊臣秀吉(わたし)の質問に対し、伝令兵は未だに滝の様な涙を流して涙声で告げる。

「解りません!」

え……

「解らない……とは?」

「エイジオブ帝国が勝手に設置した砦を23ヵ所も落とし、エイジオブ帝国の手に堕ちた植民地を見事に奪還なされたのですが―――」

「あー、もういい。今ので全て理解したから」

しまったなぁ!その手があったか!?

と言うか、そんなに急に敵国の領域を攻め落としたら、同行した一般兵が疲れ果てたり、再起不能な程の大怪我をしたり、戦死したりするだろ?

エイジオブ帝国はそれを見越し、疲れ果てている部下共に甘い邪な囁きを与えて裏切りを促す。

エイジオブ帝国にとっても損害が多い戦略ではあるが、上手く嵌れば手に余る強敵が勝手に自滅してくれる。

鎧袖一触と一騎当千を重んじる祖国(このくに)と戦う上で、これ以上的を射ている戦い方はあるまい!

「何だと!?何時の間にかカミカゼ殿下の頭が無くなっていただと!?何でそうなる!?」

「我々にも解りません!カミカゼ様は野営地でおやすみなされていただけなのに、朝起きてカミカゼ様を呼びに往ったら、何故かカミカゼ様の頭が消えて無くなっておりました!」

伝令兵とドウカァーはこの状況を不思議そうに首を傾げておるけど、豊臣秀吉(わたし)は最後まで聴かずとも事件の詳細が解る。

「カミカゼ兄上が率いる部隊に裏切り者がいて、その裏切り者が夜中の内にカミカゼ兄上を―――」

「ありえません!」

ドウカァーの奴、何を馬鹿正直に否定しておるのじゃ?

どっちにしろ、その寝静まった深夜に何かが遭ったのは確実だと言うのに。

「根拠は?」

「オラウ様!我々のムソーウ王国への忠誠心を疑って―――」

「その忠誠心や罪悪感を抜きに根拠を述べてみろ?カミカゼ兄上が率いる部隊に裏切り者が1人もいない理由を」

この点は徹底的に正さねばならん!

「ドウカァーが言う根拠無き楽観的な推測程、戦場にとってとてつもなく邪魔な物は無い!だからこそ!部隊を率いる指揮官は様々な事態を事前に予測し、敵軍が意表を突こうと卑劣なズルをしても即対応出来ねばならんのだ!それこそ!自分が率いる部隊を護る為の指揮官の責務だ!」


ん?

アニマの奴、どうも顔色が悪いぞ?

「どうしたのだアニマ?」

「……似てるんです」

アニマのこの言葉に、ドウカァーの馬鹿垂れは言ってる意味が解らないとばかりに首を傾げおった。

「似ている……何の事ですかな?」

すると、アニマが急に私に謝罪し始めおった。

「ごめんなさい!この事をもって早くに言えば良かったんだと思うけど、僕と一緒にこの国に逃げた人達から『祖国の恥を軽々しく口にするな』と釘を刺されていたから……言い訳だよね?そんなの」

何?そのふざけた釘は?

豊臣秀吉(わたし)にとっては、助け舟を出した者への恩を仇で返したとしか思えぬ愚行よ。

と言うか、敗北だけが愚者の証ではないぞ。

お陰でマッホーウ法国がどれだけ弱いのかがハッキリと解ったわ!

マッホーウ法国(こいつら)……強大な魔法に溺れ過ぎて反省の仕方を完全にド忘れしておるのじゃ!

だから、マッホーウ法国は何時まで経っても敗北者の逆が出来んのじゃ!

常敗無勝の愚者の証。

それは、何の反省もせずに同じ失敗を何度も繰り返す事じゃ!

で、アニマがやっと語ってくれたマッホーウ法国敗北の顛末は、ほとんど豊臣秀吉(わたし)の予想通りじゃた……

最初の内は鎧袖一触の一騎当千に相応しい常勝無敗の快進撃を続けていたが、2週間ぐらいから将校の不可解な突然死や行方不明が相次ぎ、とうとう法王自ら出陣せねばならぬ程将校不足に陥り、兵力をほとんど失ってマッホーウ法国と同様の鎧袖一触な一騎当千を誇るムソーウ王国に頼る以外の勝算を完全に失った……

これ……

「もっと早くに言って!」

だが!豊臣秀吉(わたし)のこの文句を聞いて、ドウカァーは何故か首を傾げおった!

「それを聴いてどうするのです?」

「アホかァーーーーー!」

自分達がそうならない様に対策を練る為だろうがぁー!

寧ろ、何も知らずに戦う方が恥じゃ!

と言うか、アニマがこんな大事な事をこの土壇場で言う理由に呆れたわ……

正に、ダメな大人に囲まれた子供の気の毒さの体現だな……

「ん?待てよ?」

「どうか致しましたか?」

「我々ムソーウ王国参戦前からあったカミカゼ兄上の裏切られての死の予兆、このムソーウ王国に逃げ込んだマッホーウ法国生き残りの中に気付いた者はおるか?アニマ以外で?」

……その後のアニマの説明を聴いた豊臣秀吉(わたし)は、その小さな体がゆっくりと傾いていき、傾いていき……

その後の私の記憶が無かった……


一方、ムソーウ王国撃破の為のある作戦を実行するべくムソーウ王国領土内に造った資源強奪用砦に駐屯しているヨツメは焦っていた。

「何いぃーーーーー!?他の部隊は既にカミカゼ・ダ・ムソーウ討伐を完遂しただとおぉーーーーー!?」

カミカゼ・ダ・ムソーウと言えばムソーウ王国第一王子であると同時にムソーウ王国有数の強豪将校である。

それが、同僚がエイジオブ帝国から賜った作戦を使って殺し、カミカゼが指揮している部隊もエイジオブ帝国から賜った作戦によってほぼ解散状態(・・・・)である。

それだけではない、他の同僚達もムソーウ王国自慢の将校達をエイジオブ帝国から賜った作戦を使って死地に追いやっているのだ。

それに引き換え、肝心のヨツメ隊はオラウ隊をエイジオブ帝国から賜った作戦に誘き寄せる(・・・・・)どころか……一戦も交えていないのだ……

それどころか、オラウ隊は他のムソーウ王国将校とは違って、ヨツメ隊の空腹を待っている様にしか視えないのだ。

「不味い不味い不味い!このままでは……」

とは言え、エイジオブ帝国から賜った作戦はムソーウ王国将校の様な無知蒙昧な特攻しかしてこないマヌケとの戦いを想定した物であり、決してオラウの様な敵の空腹を気長に待てるズルい卑怯者には効果が薄いのだ。

「敵がこの砦を襲うのを待ち、防戦するふりをしながら撤退し、敵に砦を落としたと勘違いさせて更に敵の冷静さを奪う。それを繰り返しながら敵の疲弊を待ち、その間にこちら側の聖職者が敵の下っ端を次々と言葉巧みに転向を促し……の……筈だったのだあぁーーーーー!」

そこへ更にヨツメにとっては凶報がこの砦に届いてしまう。

「イナオリ様、イェニチェリを率いてこちらに向かって来るとの事です!」

「何でだよ!?奴は、イナオリは王室側近軍師だろ!なら、あのまま帝都に籠ってただひたすら作戦を考え……」

ヨツメのこの言葉は、イナオリ如きに手柄を横取りされたくないと言う思いがあった故に言った陰口の様なモノだったが、言ってる内に自分の言い分にある種の矛盾がある事に気付いてしまう。

「待てよ……帝都に籠ってひたすら作戦を捻り出し続けたから気付けたのか……あいつらが俺達の空腹を待っている事に……だから、イオナリの奴があいつらを危険視した?」

しかも、マッホーウ法国を攻め滅ぼした時ですら1度も使用しなかった特殊部隊イェニチェリを自ら率いてだ。

だが、これを悪く言うと、マッホーウ法国はイェニチェリを引き摺り出す事すら出来ず、まんまとエイジオブ帝国の作戦に簡単に引っ掛かって惨敗したのだ。

「つまり、イナオリはイェニチェリを使ってあいつらを一気に滅ぼし、後顧の憂いを消し去る事で、自分が考えた作戦が失敗した事を揉み消す魂胆か?」

それはつまり、ヨツメ隊がオラウ隊をイナオリが考えた作戦に引き摺り込めなかった事を意味する。ヨツメにとっては屈辱だ。

「これは不味い!何とかせねば!」


だが、焦ったヨツメが出した答えは……

「出撃じゃぁ!」

先ずは自分達が突撃をしてオラウ隊の突撃欲を刺激し、そのままエイジオブ帝国から賜った作戦に引きずり込むと言う……戦術に明るい者なら「無策」と口にしそうな本末転倒な作戦であり、就き合わされる部下達は不満げである。

「大隊長」

「なんじゃ!」

「これでは、我々の被害も甚大なのですが」

だが、帝都からイナオリとイェニチェリを引き摺り出したオラウに翻弄された無能な司令官と烙印を押される事を過剰に嫌がるヨツメには届かなかった。

「じゃあどうしろと言うのだ!?このまま俺達が空腹になってイナオリに手柄を奪われろと言うのか!?」

「それで勝てるなら」

本当にエイジオブ帝国に忠誠を誓っている兵士にとってはどうでも良い話である。つまり、勝てはよかろうなのだ。

しかし、オラウが図らずも植え付けた屈辱に耐えられなくなったヨツメにとってはどうでもよくない事だった。

だが……


ついさっきまでオラウ隊の野営地があった筈の場所にいたのは……何も無かった……

「何で……奴らはどこじゃ!?」

ヨツメ隊はオラウの罠に嵌ったと思って円陣を組んで鉄砲を構える。

が……

1時間待っても、2時間待っても、4時間待っても、8時間待っても、16時間待っても……

「敵伏兵の奇襲は……ありませんでしたな?」

副官からの嫌味な報告に歯軋りするヨツメ。

「何でじゃあぁーーーーー!あいつら、どこまでこの俺達をおちょくれば気が済むのだあぁーーーーー!」

故に、ヨツメは何でオラウ隊がここから立ち去ったのか?その理由に気付く事は無かった。

オラウ隊がこの場を去った最大の原因が、エイジオブ帝国の作戦に何度もまんまと引っ掛かったムソーウ王国とマッホーウ法国の無知蒙昧で無茶無謀な戦術である事を。そして、オラウにその選択をさせたのがエイジオブ帝国がカミカゼ・ダ・ムソーウを謀殺した事だと。


この時の豊臣秀吉(わたし)は完全に焦っていた!

「急げぇー!大返しじゃぁー!」

豊臣秀吉(わたし)は自分達の部隊にアニマの姉であるヌードン・マッホーウを救助しようと野営地を払い、大急ぎで反転した。

ドウカァー共は豊臣秀吉(わたし)のこの行動の意味を全く理解しておらなんだが、機転を利かせてヌードンを裏切ろうとしている者に突撃すると言って説き伏せた!

と言うか、何でヌードンが窮地なのかが未だに解らん時点で、ムソーウ王国は色々と末期やもしれんな……

「このままでは、ムソーウ王国はエイジオブ帝国の魔の手からヌードン殿下を護りきれなかった敗北者として罵られてしまうぞぉー!必ず……必ず間に合わせるのじゃー!」


だが……

散々急いだその結果が……

「ヌードン様ぁー!何処にいらっしゃるのですかぁー!?」

「ヌードン様ぁー!出てきて下さぁーい!」

「ヌードン様ぁー!ヌードン様ぁー!」

肝心のヌードンが率いていた部隊が必死にヌードンを探している姿であった……これはつまり……

私は藁にも縋る思いで質問した……

「これはどう言う事じゃ?ヌードン殿下はどちらに?」

だが……兵士達の返答は豊臣秀吉(わたし)の予想通りであった。

「それが……一昨昨日の朝から行方不明なのです!」

その返答に、アニマは蒼褪めて倒れ、ドウカァーが慌てて受け止める。

「アニマ殿?アニマ殿!?」

これってつまり……アニマも私と同じ見解を示したって事か……

……遅かったかぁー……

……取り敢えず……点呼をとろう。

そうすれば、私の予想が当たっているか外れているかが解る筈……

ま……大体想像は付くがな……

その証拠に、点呼をとる前に不届き者がもう尻尾を出しおった!

「さて……私の後ろにいる者は、何をしているのかなぁー?」

背後から私を殺そうとしている裏切り者を簡単に返り討ちにした私は、やや棒読み気味に裏切り者に訊ねるが、ドウカァー達やヌードンの部下達にとっては予想外の展開の様で、

「オラウ様!貴女は味方に何をしておるのです!?」

「その者は我々マッホーウ法国の兵士!何故その者にその様な無礼を!?」

「事と次第によっては、我々にも考えがある!」

あー……

つまり、現行犯逮捕にも拘らずこいつに裏切られる事をまったく想定していないと言う訳だ。

これは困ったぞ……これ、豊臣秀吉(わたし)が居ようが居まいが、どの道ムソーウ王国はエイジオブ帝国に完敗するぞ!

と、私が思いかけたその時、

「この俺が、とっくに終わったマッホーウ法国に忠誠を誓う?この俺がそこまで現実を知らぬ馬鹿に視えるか……俺への侮辱もいい加減にしろよ!」

この裏切り者が馬鹿で良かった……

このままこいつが沈黙を守っていたら、私は乱心者として扱われて何も手出しが出来ない状態になってしまうところであった。

しかし、この馬鹿な裏切り者が頼んでもいないのに勝手に自白しおったわ。

「……お前……一体何を言っておるのじゃ……」

一方のドウカァー達は、まるでこの世に存在しない筈の物を見るかの様な感じで固まっておる。

……こりゃあ、本当の本気でムソーウ王国の戦術を根本から叩き治さなきゃならんなぁ……

「だが、賢い俺は違う。俺はちゃんとこの戦いがエイジオブ帝国の勝利で終わる事をちゃんと知っている。だから、ヌードンとか言う馬鹿女は生け捕りにしてエイジオブ帝国にくれてやったわ!」

……この裏切り者、本当に馬鹿だな!

本当に賢い奴は逆に自分の頭の悪さを目立たせるわ!能ある鷹は爪を隠すと言うしな!

それに、この場で自分の大将を敵に売ったって言うアホが何処の世界にいる!?あ、ここにいるか。

「何故だ……何故裏切った!?」

皆さん、さっきこの馬鹿過ぎる裏切り者が言いましたやん。

「どうせエイジオブ帝国が勝つから、エイジオブ帝国と組んだ方がましって考えていたでしょ?」

「そうだ!お前達の様な、マッホーウ法国の愚かさに気付いていないアホとは違ってな!」

それを私に組み伏せられている状態で言いますか?

豊臣秀吉(わたし)的には、今の裏切り者(あなた)の方がとんでもない馬鹿ですよ?

ま、とにかく……

豊臣秀吉(わたし)が予想していた最悪の事態は回避ならずと言う訳だ……ただ、ヌードンの生死を除いては。

「それはそうと、ヌードン殿下を生け捕ったと言ったな?それはつまり、まだ生きている事を意味するのだな?」

「ああ……あの馬鹿女を意味も無く殺せば、かえってこのアホ共の士気が上がっちゃって、エイジオブ帝国を敵に回す事がどれだけ自殺行為かが解んなくなっちゃうからな。俺って、優しいだろ?」

馬鹿はお前だよ。

「だ……黙れえぇーーーーー!」

その証拠に、我慢の限界に達したドウカァーがこの口が軽過ぎる裏切り者の頭をかち割ってしまった。


行きは大急ぎだったが……

私の今回の判断は完全に後手だった上に完全に無駄足じゃなぁ……

……完敗じゃ……完璧に……

「許せん!あの者はムソーウ王国の恥だ!」

ドウカァーさん、アンタの怒りは解りますが、所詮は人間ですよ。

欲深い人間程、自尊心や罪悪感より利益や損得を優先する。

その証拠に、かつての豊臣秀吉(わたし)は、そんな利益や損得で物事を考えて下剋上に走った馬鹿を沢山見聞きして来たし、豊臣秀吉(わたし)も出世の為に色々な物を利用して来た。清州城での信長様の跡取り決めで三法師を推薦したしね。

「それが人間だよドウカァー君。先程君に殺されたヴァカは、マッホーウ法国に就くよりエイジオブ帝国に就く方が得で正しいと思ったのだ。確かにドウカァー達が言うムソーウ王国への忠誠心は立派だよ。でもね、何を正しいと捉えるかは人々それぞれだし、損得勘定に溺れて損する正しいより得する誤りを選択するんだよ」

当然ドウカァーは豊臣秀吉(わたし)の言う正論に反対する。と言うか、そう言う自尊心や罪悪感を優先する馬鹿が居ないと私も寂しいし辛い。

「何ですかその得する誤りって!そんなの、ただの恥ではありませんか!?」

得する誤りは恥……か。

人間全員がそんな良い意味で馬鹿ばっかならどれだけ楽な事か……

「ドウカァー、お前の心は案外綺麗なのかもな」

「変な事を言ってごまかさないで下さい!」

「そうだな……と言いたいところだが!」

その後に続く言葉はちゃんと念を押さねばならん事だ!

戦争には得する誤りと損する誤りしかなく、戦争に正しいが入り込む余地は無いのだからな!

「得する誤りで利益を得て味を占めた愚か者には、他人からの軽蔑の視線や正論に言わされた悪口は通用しない!得する誤りで得た利益を捨てたくないし、得する誤りを辞めた事で被る損害を恐れているからな。それが人間が本来やるべき正しいを蝕む邪な欲だし、その究極体が戦争なんだよ」

ドウカァーは以外にも黙った。てっきり、「ムソーウ王国の正しいを否定する気か!」と言って私を叱りつけるかと思ったのだが。

それだけ……あのマッホーウ法国を裏切ってまでエイジオブ帝国に利用された馬鹿の裏切り行為が余程ショックだったと言う事か?

でも……

「本当に正しい事をしようと思うなら、不要な殺しは極力避ける筈だ!寧ろ、これが正しい事だと周囲や大衆や世論に言い聞かせながら不要な殺しを続ける者こそが邪悪な偽善だ!」

ドウカァーは未だに沈黙を守っていた。

……不気味な程に。

「それにな、今回のヌードンへの裏切り行為はヌードン自身の罪でもあるんだ」

「ヌードン様が!?……ヌードン様はエイジオブ帝国を蹴散らしてマッホーウ法国を奪還する事を望んでいた筈では?」

ドウカァーがようやく喋り始めたが、豊臣秀吉(わたし)がここまで言ってやって、未だにムソーウ王国やマッホーウ法国が誇る一騎当千の将校による突撃一辺倒な考えにまだ囚われておる様じゃな……

「ヌードンはその心算でエイジオブ帝国に無謀な突撃を繰り返したが、それに付き合わされる一般兵は別じゃ。ムソーウ王国やマッホーウ法国が掲げる無謀な突撃について行けず、戦いに虚しさを感じたり死の危険を感じ始めた一般兵もいた筈じゃ」

「つまり、あの愚者は死にたくないからエイジオブ帝国に寝返ると言う誤りを犯したと言うのですか?」

やっとか……

ここまで言わんと気付かんか?

「つまりそう言う事だ。だから、カミカゼ兄上やヌードンが1週間で敵の砦を8ヵ所も落としたと聞いた時は焦ったよ。今回の様な裏切り行為が何時か起こってしまうのではないかと」

ドウカァーは再び黙った。

そりゃそうだ。

ムソーウ王国やマッホーウ法国が正しいと信じて行って来た戦法を、裏切りと言う最悪な形で完全否定されたのだからな。

「それと、今回の話はアニマに言わないでくれ。アニマには辛過ぎる現実だし、私はまだまだアニマを失いたくないからな」

「……解りました」

ドウカァーの力無い返答に、私は改めて戦争の非情さを知った気がした……

ヨツメ


年齢:42歳

性別:男性

身長:165cm

体重:81.6㎏

職業:エイジオブ帝国軍大隊長

武器:レイピア、火縄式ピストル

趣味:ボードゲーム

好物:出世、勝利、名声

嫌物:敗北、汚名、屈辱

特技:変装、忍び足、逆恨み

苦手:逆恨みを中止する


エイジオブ帝国軍大隊長。出世欲旺盛で好戦的な性格で執念は誰にも負けない。

ムソーウ王国崩壊計画『クーデタードア』の実行の為にムソーウ王国領内に造られた資源強奪用砦の内の1つを任されたが、肝心のオラウが前世である豊臣秀吉の記憶と知識を頼りにムソーウ王国本来の戦い方とは真逆の戦術を繰り返したせいで、クーデタードアの為に動員された他の大隊長との戦果差が歴然となってしまい焦っている。が、再三にわたってオラウ隊を陥れようとするが、ことごとく失敗に終わって、その度に酷いしっぺ返しを食らってしまう。でも、いつもめげずに悪巧みを働かせるあたり、どこか憎めない人である。

イメージモデルは四井主馬【花の慶次 -雲のかなたに-】。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ