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第4話:遺族への配慮が足りない……

前回のあらすじ


せっかく勝利したオラウ隊でしたが、褒められるどころか敗走するふりをしながら敵を死地に追いやる戦法が卑怯過ぎると叱責されてオラウは降格。

そんな真っ直ぐで幼稚過ぎて現実離れしたムソーウ王国の戦術に改めて頭を抱えるオラウ。

更に、せっかく配下にしたアニマとも離れ離れとなり、それがアニマと姉との仲違いを更に悪化させる結果になってしまいました。切ない……

その後、ムソーウ王国屈指の闘将の副将として正しい戦い方を学べと命じられたオラウは、ムソーウ王国の今後にますます不安を感じます。

で、今回の戦闘のターゲットはこのおじいちゃん(エイジオブ帝国現場監督官)。

このおじいちゃん、見た目に反して本隊を囮に別動隊を敵軍の右脇に配置して挟み撃ちにするちょっと小狡いお方。

結局、この程度の伏兵攻撃すら予想出来なかった真っ直ぐ過ぎる闘将はあっけなく死亡。

一般兵をかなぁーり失いながらターゲットを辛くも撃破して帰還したオラウは、言葉選びを注意しながら自分の復権を懇願。無事に部将に返り咲く事が出来たのでした。


へべく!

オラウに中隊長を2人も殺されたエイジオブ帝国であったが、エイジオブ帝国には微々たるダメージであり、寧ろ、2度の斥候射撃だけでムソーウ王国が誇る名将である豪腕将のトッシンを討ち斃した事もあってか士気が高かった。

「ほほう……これは幸先が良いですな……」

部下の報告を聴いて邪な笑みを浮かべるマスカレードアイマスクを着た少年は『イナオリ・ネッジー』。エイジオブ帝国王室側近軍師を務める重要人物である。

「それと、例の砦を予定通りの数建築しておきました」

「順調だな」

イナオリにそう言われた斥候兵はニヤリと笑った。

「はっ」

「して……」

「既にその命令は各部隊長にお伝えしております」

イオナリが満足気に頷いた。

「上出来だな?」

「ありがたき御言葉です」


さて……

やって来ましたエイジオブ帝国が領土内に建築した砦前に。

砦を囲む石壁の四隅に大筒を備えた櫓を備え、石壁の内にも複数の櫓が点在。兵舎と倉庫を備えて鉄砲隊が常に砦内を警備している。

この前のトッシンの様な無謀な突撃の様な無策な力押しでは落ちはせん。

幸い、豊臣秀吉(わたし)の隣に動物を操る魔法を使えるアニマがいるから、この敵砦の本当の目的が解るのだ。

それは、敵地に眠る資源の横取り。

あの敵砦から出てきた者達は明らかに兵士ではなかったので、気になってアニマが操る動物に尾行させてその意味を調べさせた。

その効果は絶大だった。

あの敵砦から出て来た連中は、祖国(このくに)にある森を無許可で切り倒して木を敵砦に持ち帰ろうとしていたのだ。

ならば簡単だ!

祖国(このくに)から木材を強奪しようとしている木こりを皆殺しにし、その上であの敵砦を干殺す!

そうすれば、こちら側の一般兵の被害は最小限に抑えられる……筈だったんだけどなぁー……

「オラウ様!貴女様はこの近くにいる木こりの皆殺しを厳命するばかりで、本来行うべき敵城への突撃を怠るとは!本当にこの様な怠惰のままで良いと思っておられるのですか!?」

私の馬鹿親父が、豊臣秀吉(わたし)の許に馬鹿なお目付け役を送り付けおった……

恐らく……豊臣秀吉(わたし)を野放しにすればトッシンの様な無謀な突撃をサボると読んでの対策なのだろうが……

寧ろ迷惑だ!

あんなのに突撃すれば、例え落とせてもこちら側の被害も大きいし、寧ろこちら側が敗ける可能性の方が大きい。

城攻めする時は、敵の3倍の数をもって挑むべし!

それくらい解って欲しいモノだが、そんな戦術の常識を祖国(このくに)に浸透させるのを阻んでいるのは、やはりあの豊富な一騎当千の戦技だ。

恐らくだが、私の光刃を使えばあの大筒を備えた櫓を一撃で破壊出来るだろう。

しかし、本当にそんな事をしたら私達の戦術は遠大な干殺しから短絡的な突撃に移行してしまう。それは避けたい!

「確かに、私の戦技を使えばあの様な小砦を落とすのは容易い!」

我ながら随分見当違いな事を言っておるなぁ私。

「なら―――」

「だが、今はその時期ではない。しばし待て」

「何を言っておられるのです!我々は既に大分待ちました!寧ろ、我々の攻撃が遅過ぎて敵に……嗤われておりますぞ!」

……こいつは確かドウカァーとか言ったか?

この程度待たされるくらいで敵が私達の動きの遅さを嘲笑うって、この豊臣秀吉(わたし)に徳川殿が三方原で犯した失策をやらせて味方を全滅させる心算なのか?

でも、ドウカァーは悪い人間じゃないし悪人に向いている性格とは言い難い。

そんな彼を間違った方向に向かわせたのは、ムソーウ王国が誇る一騎当千の戦技が蔓延させてしまった突撃至上主義と言う名の悪しき同調圧力。

こればかりはドウカァーだけが悪い訳ではない。寧ろ、致命的な間違いが蔓延している惨状に対して何の対策もしてこなかった王族に責任がある!だからこそ、そんな無責任な王族の1人である豊臣秀吉(わたし)が蔓延した悪習を払拭する戦術を率先して行わなければならんのだ!

……なのになぁ……

ちょっと突撃を躊躇したくらいで直ぐ無能扱いするのを辞めて欲しいんだけどなぁ……


一方、オラウ大隊に包囲されているエイジオブ帝国の大隊長の『ヨツメ』は困っていた。

エイジオブ帝国の思惑とは程遠いオラウの動きに。

「あいつらぁ……何時になったらこの砦を攻めてくれるんだよ!?」

そう。

エイジオブ帝国の今回の作戦は、ムソーウ王国の無知蒙昧な突撃至上主義を想定しての事だからだ。

だが、肝心のオラウ大隊は突撃至上とは程遠い慎重路線。

しかも、

「それどころか、木を切る人がいっこうにこの砦に戻って来ません」

「戻ってこないだと!?1人もか!?」

「……はい」

部下の報告を聞いて愕然とするヨツメ。

「俺達はムソーウ王国をなめてたと言うのか?」

「と……申しますと?」

「あいつら、俺達の空腹を待っていると言うのか?」

そんなヨツメの嫌な予感を部下は否定する。

「ですが、あのムソーウ王国がその様な時間が掛かる作戦を行うとは思えません」

だが、ヨツメはそんな事前報告に惑わされている部下を叱りつける。

「じゃあ何でこの砦を出発した木を切る人が何時まで経っても帰ってこねぇ?あいつらが木を切る人のみを狙って攻撃してるとしか思えねぇだろ!?」

今回オラウが行っているのは、正にヨツメの予想通りである。


……だが。

オラウの様な慎重な戦いを行うムソーウ王国将校は、オラウだけであった。

その証拠に、戦況報告を受けたイナオリはムソーウ王国のエイジオブ帝国側の砦の落城数に驚愕しつつしてやったりな邪な笑みを浮かべていた。

(想定内ぃ……だが問題は無い!ムソーウ王国侵略計画に必要なのはムソーウ王国一般兵達の疲労とそれに伴う不安だ。ムソーウ王国軍が無茶すれば無茶するほど僕達が用意した毒は力を増す。浴びれば終わり……)

そう!ムソーウ王国は自信過剰な慢心による突撃一辺倒が祟ってイナオリの手の平で踊らされているのだ!

しかも、マッホーウ法国と同じ轍を踏んでいるのだ!マッホーウ法国の亡命を許可しておきながら。

やはり、オラウの言う通りにマッホーウ法国から敗因を訊き出すべきだったのだ。だが、ムソーウ王国もマッホーウ法国も自分達の一騎当千ぶりを過信してそれを怠ってしまったのだ。

故に……

「伝令!」

伝令兵が慌てて駆け込んで、片膝をつくのもめんどくさげに慌てていた。

「ん?どうした?」

「ヨツメ隊、未だに敵部隊と交戦せず!」

さっきまで機嫌が良かったイオナリの顔がみるみる青くなる。

「交戦せずだと!?それは本当か!?」

イオナリは必死に祈りつつ伝令兵の報告を聴くが、伝令兵の報告はイオナリの都合の悪い物ばかりであった。

「はい!1度も……しかも!それ以来、木を切る人がヨツメ隊が警備する(フリをしている)砦に戻って来なくなりました!」

「戻ってこないだと!?1人もか!」

伝令兵は沈黙した。これは、消極的な肯定でもあった。

それがイオナリにある嫌な予感を抱かせた。

「まさか……その敵部隊はヨツメ隊の空腹を待っているのか?」

奇しくも、ヨツメとイオナリの見解は一致したのだが、イオナリと一緒に伝令兵の報告を聴いた者はそれを否定した。

「それは無いと思いますよ」

そんな楽観的な意見に対してイオナリは激怒した。

「根拠は!?」

「いや……ですが、それだとムソーウ王国らしさとは明らかに違います」

「それくらい解っとるわ!だが現実を視よ」

楽観的な意見を言った部下を一喝すると、伝令兵に質問した。

「で、そのヨツメ隊と戦う気が無い部隊の名は?」

「オラウ・タ・ムソーウ……ムソーウ王国第三王女との事です」

そう、オラウはムソーウ王国恒例の単純過ぎる戦い方とは真逆過ぎる慎重でズルい戦術に拘り過ぎて、エイジオブ帝国最強の駒の警戒心を買ってしまったのだ。

「オラウ……」


さて……

あの砦と対峙してからまだ1週間。この程度ではあいつらはまだ参らんだろうな。

それに、今まで戦ってきたエイジオブ帝国の将校のあの賢さから考えて、そろそろ自分達が兵糧攻めを受けている事に気付いておるだろう。

……ん?

ドウカァー達が並んで私の前に立っている?

まさかと思うが……嫌な予感しかせんのう……

「オラウ様!」

うん……嫌な予感が更に増したのう……

「兄君であるカミカゼ様やマッホーウ法国から亡命なされたヌードン様は、既にエイジオブ帝国の砦を8つ以上も落としております!」

1週間で砦8個おぉーーーーー!?

これって、エイジオブ帝国が弱過ぎるだのって感じじゃないぞ!

まさか無人の砦……いや、流石に無いか。

無人の砦とは言え、砦は砦。落とせればそれだけこちら側の士気が上がる。

なら、やはりエイジオブ帝国が弱過ぎるからか……いや、前回の戦いから考えてそれも考えにくい。

では、ムソーウ王国やマッホーウ法国が強過ぎるからか……それではエイジオブ帝国に敗れたマッホーウ法国の生き残りがムソーウ王国に亡命した話と矛盾する。

ドウカァー共が今からやろうとしている馬鹿げた事とは、別の意味で嫌な予感がする。

「それに引き換え!我々は未だに砦を1つも落としておりません!」

おいおい。敵の砦を落とす速度と落とした数しか観ておらんのか?

たった1週間で砦を8つは流石に敵が弱過ぎると不思議に思わんのか?

数々の城を落として来たこの豊臣秀吉(わたし)の勘が、ムソーウ王国が死地に足を踏み入れかけていると必死に訴えていると言うのに!

「ですので!我々にも敵砦への突撃命令を、お願いします!」

ドウカァーがそう言うと……私の配下の一般兵全員が深々と立礼しおった。

これが非常に困った。

かつての豊臣秀吉(わたし)なら速攻で却下するのだが、私のオラウとしての初陣が却下してはいけないと訴えておる……

そう!

こやつらはこうやって私の将校としての技量を試しておるのだ!

これはつまり、こやつらに突撃を下知する程の度量が有るかを計っておるのじゃ!

だが!豊臣秀吉(わたし)の様なズルを主体とする卑怯な智将にとっては愚の骨頂!迷惑の極み!

かと言って、こやつらの説得に失敗すればムソーウ王国は豊臣秀吉(わたし)に司令官不向きの烙印を再び容赦無く押すだろう。

さて……

どうしたものか―――

その時、豊臣秀吉(わたし)は何故か菊子(淀君)と拾(秀頼)の事を思い出してしまった。

何故このタイミングで?……

そうか!豊臣秀吉(わたし)が突撃至上主義のムソーウ王国第三王女として再び生を受けたにも拘らず、未だにズルい戦術を繰り返したがるのはそう言う事か!?

拾(秀頼)よ!私は初めてお前に命を救われたぞ!


「君達、家族いる?」

私の予想外の言葉にこやつらがキョトンとしておる。それだけ私の第一声は予想外過ぎたのだろう。

「何故です?なぜこのタイミングで家族の話を?」

「この私がお前達の家族の恨みを買いたくないからだ」

……こやつら……私が言ってる意味が理解出来ずに首を傾げておる……

「何故です?オラウ様が我々に突撃命令を出したくらいで我々の息子達がオラウ様を恨むのです?寧ろ、オラウ様が突撃命令を出すのを躊躇して我々の名誉を傷つけた事の方が、我々の息子達の恨みを買う可能性が非常に高いのでは?」

……こやつら……本当に馬鹿過ぎる!

こんな簡単な事すら豊臣秀吉(わたし)が丁寧に教えないと解らぬとは!

こやつらの家族は堪ったもんじゃないのおぉ!

「違うな!愛する者を失った遺族の恨みの前では、その様な戦い一辺倒の綺麗事は効かぬ!」

その途端、突撃命令を得るべく私に頭を下げた連中の中から不満の声が次々と叫ばれる。

「では何か!?俺の妻はこの戦いの重要性を理解出来ないくらい馬鹿だと罵るか!?」

「俺の親父が聞いたら!必ず怒り狂うぞ!」

「我が娘が何の戦果も揚げず逃げ帰った我を見て喜ぶと本気で思っておるのか!」

「やはり貴様は、私や私の息子に恥を掻かせるだけの汚物じゃ!」

本当にこやつらの家族は堪ったもんじゃないのおぉ!待たされる側の身にもなれ!

「そんなの!お前達の勝手な想像だろ!いや、綺麗事だろ!」

この舌戦、絶対に負けられぬな!この馬鹿共の帰りを待つ家族の為にも!

「突撃大好きなお前達の言う『戦死』と愛する者の帰りを待つ者の言う『戦死』とでは、重さが違い過ぎるんだよおぉーーーーー!」

「何を言っておる!?名誉の討死を愚弄するか!?」

「愛する者を失った遺族にその様な言い訳が効くか!遺族共は愛する者を失ったんだぞ!」

ここで、豊臣秀吉(わたし)は一気に畳み掛ける!

「遺族にとって、無知蒙昧で無謀愚策に突撃命令を出して愛する者であるお前達を無駄死にさせた私は、愛する者を殺した敵なのだ!そして、遺族達はお前達を犬死させた愚かで馬鹿な私に向かってこう言うだろう……『こいつさえいなければ私の夫は死なずに済んだのに!』、『俺の父が死んだのに何で貴様がのうのうと生きている!?』、『俺の恋人を返せ!この馬鹿女が!』、『貴様を殺してわしも死ぬぅー!』などとな!」

豊臣秀吉(わたし)の熱弁にキョトンとするドウカァー達。

まあそうだろう。

お前達の家族がお前達の言う名誉の戦死を完全否定したと言っておるのだからな。

「……では……オラウ様は我々に……どうしろと言うのです……」

豊臣秀吉(わたし)はハッキリと言ってやった。

「そんなの決まっている。お前らが死なずに敵に勝利すれば良いだけの事じゃ」

ま、豊臣秀吉(わたし)は本当にその様な事が出来るとは思っておらんがな。

戦場に進んで立つ事は死に急ぐと同義じゃ。

だが!だからと言って味方の損害を最小限に抑える努力を怠って良い理由とも思っておらん!

味方の損害を最小限に抑えながら敵に最大限の損害を与える!豊臣秀吉(わたし)のズルはその為にあるのだ!

「だからお前達に今この場で誓おう」

そう言いながら私の首に豊臣秀吉(わたし)の刃を突き付ける。

「私のこの命に賭けて!お前達の家族に愛する者を失う苦痛を絶対に与えないと!」

そんな豊臣秀吉(わたし)のズルいワガママにとっては、『兵を損なわずに敵を皆殺しにする方法など、決して存在しない』と言う残酷な現実など知った事か!

私は豊臣秀吉(わたし)の戦い方で戦う!ムソーウ王国やマッホーウ法国の戦いの流儀と言う名の無謀に素直に付き従う義理は無い!

味方の損害を最小限に抑える為に!

ドウカァー


年齢:50歳

性別:男性

身長:181cm

体重:70.5㎏

職業:オラウ大隊中隊長

武器:ロングソード、ショートスピアー

趣味:演武、模擬戦

好物:突撃、勝利、勇猛

嫌物:臆病、卑怯、遅延

特技:突撃

苦手:高等戦術、慎重、腹芸、深読み


ムソーウ王国百人隊長。ムソーウ王国らしさが不足しているオラウのお目付け役としてオラウ隊に配置された。

最初の内は一騎当千と鎧袖一触に慣れ過ぎたムソーウ王国に所属する兵士特有の突撃至上主義に完全に染まっており、オラウの慎重で遠回りな戦術に不満を抱く事も多かったが、オラウの真意を知って以降は少しずつだがオラウに心酔する様になっていく。

イメージモデルはドゥーガ【王様戦隊キングオージャー】。

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