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第10話:外交と罠

前回のあらすじ


エイジオブ帝国自慢の作戦『クーデタードア』。オラウへの恨みからその意味を履き違い始めたヨツメをアニマ達に任せ、オラウはサカシラ・ガ・ムソーウを迎えにチュウオウ学国にある巨大学園都市、ガッケン学園を訪れます。

しかし、ガッケン学園の規格外の大きさにオラウが驚く中、当のサカシラはと言うと、

「父上に直接そう言われたのだ。武勇無き者に国王の資格無しと」

と言われて王位継承を拒否されます。

相変わらずのムソーウ王国国王への怒りを抑えつつ(全然抑えていない)、知恵と胆力の必要性を訴え、サカシラから「国王に成りたくないから武勇を捨てた」との白状を得ます。

その後もオラウの説得は続き、サカシラは遂に折れてムソーウ王国の新たなる国王になる事を決意してくれたのでした。


へべく!

サカシラ兄上と共にムソーウ王国に帰って来たのは良いが……

「お帰りなさいませ、オラウ様!」

ドウカァーの出迎えを見て、王都はまだ無事だと確信した。

「どうやら護り切れた様だな?」

「は。ただ、革命を誘発する者の逮捕に奔走させられましたが」

やはりそう来たか……

「で、その革命をさせられた国民達はどうなっている?」

「は。ギョクサイ様が軽く捻るだけであっさり逃亡しました。1人も殺しておりません」

アニマ……本当に頑張ったな!

「どうやら……本当にガッケン学園に引き篭もっている場合じゃないらしいな」

「サカシラ様!?オラウ様、貴女様はやはり」

そこで驚くか?

ドウカァー、お前もしや、サカシラ兄上の顔を忘れたな?

「と言う訳なのです。なので」

豊臣秀吉(わたし)はサカシラ兄上の方を向き、改めて片膝をついた。

「サカシラ兄上、ガッケン学園にて蓄えたその知恵、この国の為に御使用して頂きたいのです」

そう言いながらサカシラ兄上を視ると、その顔はいくさ人の様に凛々しくなっていた。

「解った。早速問題点の洗い出しにかかろう!」


で、実際にエイジオブ帝国との戦争を始めてから今日までの状況変化を改めて確認してみると……

「こうして客観的に視ると……父上が提唱していた戦い方は随分穴だらけだったんだな?」

でしょ!そうでしょ!

やっぱ視る人が視ると、ムソーウ王国の戦術がどれだけ馬鹿か直ぐ見抜けるんだよねぇ。

「追えば逃げ、追い過ぎれば待ち伏せに遭うか……オラウ、この罠を破る為に知恵が必要だと?」

「……ええ……頭が痛い話ですよ」

「せめて敵が何処で待ち伏せしているかが判れば、それを避けて突撃出来るのだが」

「それを誰が調べるかですが、父上は敵の罠を事前に知る術を怠っておりましたから」

心なしか……サカシラ兄上の顔が引き摺った様な気がする。

「オラウ、ギョクサイ、お前達はそんなんでよくこの王都を護り抜いてきたな?」

「……ええ……耳が痛い話ですよ」

ですよねぇ!

豊臣秀吉(わたし)もそう思います!


「オラウ!」

サカシラ兄上と共に今後のムソーウ王国の戦術について話し合ってる場にギョクサイ姉上がやって来てしまった。

「どうしましたか?ギョクサイ姉上」

「ベネット男国から会食のお誘いが届いたぞ」

ベネット男国。

その名の通りベネット男爵家が統治する国だそうだが、男爵が爵位の中でも低い方と聞かされているせいか、どうも男国と言う単語が言い辛い。

だが、本当に突っ込むべきは、

「何故?このタイミングなんだ?」

こっちはエイジオブ帝国との戦いで忙しいって時に―――

「行きたくなさそうだな?」

は!

解るの!?顔に出てた!?

「エイジオブ帝国とベネット男国が裏で繋がっていると?」

同感ですサカシラ兄上。

「それだと矛盾があるだろ?ベネットが我々と仲良くしている姿を観て、エイジオブ帝国が良い顔をするか?」

ギョクサイ姉上は甘いです。

「それに、隣国に冷たい態度を示し過ぎれば、他国の信頼は地に堕ちるぞ」

そこなんですよねぇ。今回の罠の痛いところは。

「結局のところ……往くしかないと言う訳か。ベネット男国からの会食の誘いを」

あ。結局行くんだ?

罠だと解っていながら……

「問題は……誰に行かせるかと言う訳ですか?」

「……俺が行こう」

はい!?

サカシラ兄上はこの国の王ですよ!サカシラ兄上を失った時のダメージを考えての事ですよねぇー!

「何故ですサカシラ兄上!?」

「確かに罠の可能性は高いし、ベネットがエイジオブ帝国に寝返る可能性も高い」

そこまで解っているなら何故!?

「だが、下手に隣国を失えば、ただでさえ連敗によって信頼を失墜している我が国は……」

退くに退けない状況って訳ですか……本当にあのアーバンベアめ!かつての豊臣秀吉(わたし)なら、もうとっくに殺してるぞ!?

「それに、俺は実績が無い。そう言う意味では、今回の会食はある意味願ったり叶ったりだよ」

「ならば!この豊臣秀吉(わたし)とドウカァーの同行をお許しください!」

「この私が、サカシラ様の護衛をせよと?」

「そうだ。今はまだ、サカシラ兄上を失う訳にはいかん!」

「解った。では、俺とオラウ、それとドウカァーの3人でベネット男国の会食に応じる。それで良いな?」

ここでギョクサイ姉上は漸く折れてくれた。

「妥当だな。解りました。皆さんがベネット男国との交渉を終えるまで、この王都を護り抜いて魅せましょう。アニマと共に」

ん?

アニマと共に?

「アニマ?その者は一体?」

「マッホーウ法国から亡命した王子です。戦力としては心許無いですが、相手の動きを事前に知ると言う意味では心強き者です」

良かったなぁアニマ。

ちゃんとお前の本当の価値に気付いて貰えて。


さて……

やって来ましたベネット男国。

「いやぁー、よくぞお越しくださいましたぁー。誇り高きムソーウ王国の屈強な英傑の皆様方!」

領主自らお出迎えとは……

……ますます怪しいな。

「会食の前に幾つかお伝えしたい事が幾つか有るのですが―――」

「その様な難しい話は明日にしましょう!それより!我が国が誇るコックが腕によりをかけて作り用意した豪勢な料理が待っております!ささ、冷めない内に!」

何?そのあからさまに怪しい急かし方は?

かえって食欲を無くすんですけど……

で、強引に会食の場に連れてこられた私達ですが……

こいつら……豊臣秀吉(わたし)を上座に据えようとしただろ?

つまり、こいつらはサカシラ兄上の話を聴く気が無いと言う事か……

やはり罠だな!この会食は!

サカシラ兄上もこいつらの解りやすい罠を察してか、目で合図して豊臣秀吉(わたし)を上座に座らせようとしている。

もう……自分がムソーウ王国の新しい国王になった事をベネット男国に教える気は無さそうだなサカシラ兄上。

そして、いちいちドウカァーの様子を視ながら出されたコース料理を食べるサカシラ兄上。

……許せドウカァー。

恨むなら、お前が毒味役を買って出なければならない程ムソーウ王国を窮地に追いやった、あの人の味を知り過ぎた熊の様な無戦術な旧国王を恨め。

ん?

なんだこの視線は?

敵意や殺気とは……ちょっと違う……

……なんだあの槍兵……なんて悲しそうな顔をするんだ……


で、

無事に出されたコース料理を完食する私達ですが、正直言って、味の感想を訊かれても困る!

緊張感のせいで舌の感覚が完全に麻痺していたんで!

サカシラ兄上も似た様なモノらしいのか、会食が終わった途端に疲労感満載の溜息を吐きおった!

ただ……ドウカァーだけは満足気だった……

前言撤回!

貴様を毒味役に決定じゃ!今日決めたぁー!

幸い、出されたコース料理に毒は入っていなかったが、今度は風呂に誘われた。

何を狙ってるんだか……

と言うか……随分豪勢な風呂だなぁー……

この風呂場を造る際に支払った金額は……豊臣秀吉(わたし)がかつて造った黄金の茶室の金額とどっちが高いんだろうぅ……

と言うか……

満足感が減って疲労感が増す入浴なんて、生まれて初めてだぞ!


ここでふとあの男の事を思い出した豊臣秀吉(わたし)

あれは……豊臣秀吉(わたし)がまだ関白だった頃か?

前田慶次。

こやつがある日この豊臣秀吉(わたし)に謁見したのだが、その際、豊臣秀吉(わたし)に平伏しながら顔を右隣にいる前田利家の方を向いて、利家の目玉を危うく飛ばしかけたよな?

しかも、豊臣秀吉(わたし)の目の前で猿ダンス。既にあっちの世界の住人ではなくなった今なら兎も角、関白の時にそれをやるか!?

あの時、豊臣秀吉(わたし)は不満げな表情を浮かべていたが、白状するとね、あの時笑いを堪えるのに必死だったんだぞ!

おまけに利家が滝の様な冷や汗を掻くと言うダブルパンチだったからな……「あの場でよく笑わずに不機嫌な表情を保ったな!」と当時の豊臣秀吉(わたし)を褒めたいくらいだわ!

だからなのか……慶次に向かってこう言っちゃったんだよな……

「気に入った。今後、どこでもその意地を立て通せ。余が許す」

て。

懐かしいな……

……あの男が今回のベネット男国のこの罠を観たら、何と言うであろうか……


で、結局夕飯までご馳走になって……用意された客室で就寝……

……出来る訳ねぇだろ!

「ドウカァー、起きとるか?」

「はい?」

はい?って……こいつ本当に大丈夫か?

「気が変わった。ベネット卿を殺せ」

「え?」

何故そこで驚く?もしかして、気付いていない?

「何故その様な事を?ベネット男国との関係が拗れますぞ?」

……やはり気付いていなかったんだ……

本当にアニマの動物を操る魔法に感謝だな!

「理由なら……豊臣秀吉(わたし)よりベネット卿の方が詳しくのではなくて……出てきなよ!」

すると、案の定……

「本当に解り易い罠だったなベネット!お陰で、気が休まる暇が無かったわ!」

「ふ!今さら言っても遅いわ!貴様等は既に我々の手の平よ!」

こいつ、本気で言ってるのか?

あんな見抜き易い罠で本当にこの豊臣秀吉(わたし)を騙させるとでも?

とは言え……こんなに敵兵に囲まれたら、そう言いたくなる気持ちも解るがな……

「やはり……既に寝返っていたのか!?」

サカシラ兄上もやはり怪しいと思っていたんですね?

とは言え……当面の問題はこの大量の敵兵をどうするかだな?

ってあれ?

あの会食(?)の時の槍兵のあの寂しそうな顔は?

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