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エッセイまとめ

老人ホームの、日常の一コマ

作者: 田尾風香

 老人ホームで仕事中の、ちょっとした一コマ。


 主役はショートステイご利用中のご老人、高校野球を見たいAさん(仮)。場所はAさんの部屋。個室です。


 会話はAさんから始まります。


「今日、どこも高校野球やってないんだよ」


 実はAさんに聞かれる前にも、他の人に同じ事を言われていました。なので、Eテレにテロップがあるのは確認済み。迷うことなく答えます。


「雨で中止みたいですよ」


 これでこの話は終わる。疑う余地もなくそう信じていたのですが、反応は想定外でした。


「そんなはずないだろう」

「……………」


 雨天中止と答えているのに、「そんなはずない」とはこれ如何に。いえいえ、言葉を変えてもう一度。


「甲子園のほうは、雨がひどいんじゃないんですか?」

「そんなはずないよ」


 だ か ら っ!!


 ちょっとというかかなり頑固ですけど、年相応の物忘れくらいで、認知症はないはずだけど、どこかで甲子園が晴れ渡っている幻覚でも見たんでしょうか……。


 とりあえず会話でAさんに理解してもらうのは諦めて、部屋のテレビをEテレに回します。まだちゃんとテロップがあったことに安心しながら、そこを指さします。


「ここ。雨で中止しますって書いてありますよ」

「……………」


 Aさんは新聞も読めるような人なので、見えないことはないはず、と思いながら、様子を窺います。

 テレビを凝視すること、数秒。


「なんだ、雨で中止なのか」


 分かってくれて何よりです。最初からそう言ってるんですけどね。

 ……とは言えず、曖昧に笑いました。


 なんでも、知り合いが野球部の監督として甲子園に出場していて、雨じゃなければ試合予定だったらしいです。


 楽しみにしていたんでしょう。それは分かります。でも頼むから、人の話をちゃんと聞いてくれ!


 という、たいしたことじゃないけど、ちょっと面倒だった一コマでした。


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― 新着の感想 ―
[一言]  疑うなら、聞かずに自分で調べてくれって、ありますね(苦笑)  なんとか、信じてくれてよかったです。
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