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十三ページ目 存在意義

「箱峰……何故あなたは軍と繋がっている? あなたの目的は一体なんだ?」

 神妙な面持ちで隣にいる黒鉛字が箱峰に話しかける。そうだ。こいつの目的は一体……?

「ん~~……。その質問に答える前に、私からも一つ、君達に質問をしよう」

「はあ……?」

「一つ、我々はアルティクロスというものを持っているが、その理由は何だね?」

 ……愚問だな。そんなの学園でイスを手に入れるために決まって────


「────ああ、()()()()()()()()()。イスよりも重要な事だ」

「……? イスよりも重要って……どういう意味だ?」

 ……イスよりも重要な事なんかない気がするが……? しいて言うなら、軍事力とかか?

「君なら知っているんじゃないかな? 黒鉛字尖斗」

「────()()()()()


「……ッ!?」

「はは! 素晴らしい! 大正解だ。そう。確かに軍事力を国のために上げることや、学園の椅子を狙う事。実にいい行動だ。しかし、我々はすでに実感しているはずだ。人類がアルティクロスを以って進化できる存在であることに」

「人類の進化だと……? 進化してどうだって言うんだ! 生活はそんなにかわらないじゃねえか!」

 アルティクロスを手にしたからと言って、生活水準が上がったとか、高い所に手が届く様になった、みたいな話はほとんど聞かない。【文心】だって、基本的には使い道に困る力だ。

「ふむ……。確かに生活する上で、今のところはその多くを無駄にしている。私もその一人だ。しかし、その力は本当にその人物に合っているのだろうか。私はそう考えたのだ」

 ……あの二人も元は違うアルティクロスを持っていたと言っていた。だが、合うかどうかなんて、手にしてみなきゃわからないし、それに後々身体に馴染んだりする場合もあるはずだ。

「あんたの目的はアルティクロスを回収して、相性がいい奴に渡したいってことか?」

「違う、違う! 私は進化したいのだよ。例えば────」


 箱峰がスっとあたしに指を向け、知るはずがない事実を平然と言った。

「君が青野準子のアルティクロスと、君自身のアルティクロスが()()()()()()、だ……ッ!」

「な……ッ!? 何でそれのことを……ッ!?」

 あたしが驚くも、箱峰は話を止めず、そのまま話し続ける。

「いやぁ~~実に興味深い。黒鉛字尖斗とは違い、自然に融合した超貴重なサンプルだ。私が与えたわけでもない。これだ。これこそが進化だ……ッ!」

「狂ってやがる……」

 思わず心の声が漏れたが、箱峰は気にしていない様子。よく言われるのだろう。


「それで……? 結局あんたの目的は自分を進化させたいってことでいいのか?」

「それもそうだが、それではあの方に申し訳ない。そのためにも我々【イレイサー】は彼女を一刻も早くあの方の元へ届けねばならない」

「彼女……? ていうか、さっきから言っているそのあの方って誰のことだ?」

「んん……? 君の横にいる男が知らないとして、君が知らないのか……!?」

「はああ!? 何であたしがあんたらの親玉を知っているんだよ。あった訳でもあるまいし……」

「なんと……ッ! そうか……ふむ。これはいい情報だ。今回はそれに免じて立ち去ってもらおう。鵺なら今頃教師たちが倒し終えている頃だろう。それにここはもう使えない。あとは頼んだ。黒消」

「御意」

「おい、待て……ッ!」


 どこからか現れた忍者の様な姿をした男が現れると、文心で窓を壊し、箱峰と共に飛び降りた。黒鉛字がすぐに駆け寄り下を覗いたが、首を振る。くそ! あの方って一体誰だ!

 ゴゴゴゴゴゴゴ────

『わあ……ッ!?』

 突然、建物全体が大きく揺れ始める。一刻も早くここから離れなければ……。

瓦礫で押しつぶされてはひとたまりもない。

「ダメです! こっちは開きません!」

「なに……ッ!?」

 黒鉛字が後ろの扉を開けようとしたが、ビクともしない。文心でドアは壊せるかも知れないが、大きく揺れる中で放つと、別の所に当たって、余計に危険な気がする。どうすれば……。


「要さん……ッ!」

「何だよ、こんな時に!」

 黒鉛字が視線を向けた先にあるのは、先ほど箱峰が飛び降りた大きな窓ガラスがあった場所。まさか……?

「僕が受け止めますから、合図したら飛んでください!」

「む、無茶言うな! ジェットコースターでも安全バーがあるぞ!? こんなの絶対死ぬだろ……ッ!」

「時間がありません! 早く!」

「けど…………」

 十五階建ての建物から飛び降りるなんて、人生で一度も味わいたくないアクションだ。流石に無理────


「僕を信じて下さい……ッ!」

「……あーもう! わかったよ……ッ!」

 意を決し、割れた窓から飛び降りる。直後、味わったことのない浮遊感と強い風が、身体に伝わる。数秒後、黒鉛字があたしの手を何とか掴もうと、空を泳ぐ。

なんとかあたしの手が黒鉛字に届いた頃にはもう、地面が見えていた。


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