表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇〇したい女の子たち  作者: 車男
4/45

尽くしたいつくしちゃんその3

 「うーん、どれだろう…。これと、これ…?むむむ…」

金曜日の夜。私は自室の鏡の前で、私服を取り換え取り換え、頭を悩ませていました。考えているのは、明日着ていく服。実は、流星くんにデートに誘われちゃったのです!

『つくしちゃん、いま、ヒマかな?』

お部屋の中を服まみれにしているとき、ラインの通知が来てふとスマホを見てみると、流星くんからでした。

『はい!どうしたんですか?』

実際は、明日の服決めでとっても忙しいんですけれど、流星くんとお話できるのはとてもうれしいので、一旦そっちに切り替えることにします。

『明日だけど、10時に駅前でいいかな?』

『はい、大丈夫です!』

明日行くのは、駅の近くにあるショッピングモール。いろいろなショップと、レストラン、映画館などもそろっているとても大きい施設です。なかなかひとりでは行けないので、行くのは久しぶりです。

『それと、明日は靴下なしのファッションで来てほしいな』

『わかりました!』

明日も気温は高くて、私は7分袖のファッションを中心に選んでいました。学校の制服もカーディガンを着ている私なので、私服も半そではあまり持っていません。スカートやパンツも丈が長めのものが多いです。私服のお話を流星くんとしている時にそのことを伝えると、私服は自由に選んでいいよ、けれど足元は俺に決めさせてね、と言われたので、あまり露出の多くないものを、と考えています。そして結局、7分袖の水色のシャツに、白いロングスカート、そして素足に、デッキシューズを履いていくことにしました。デッキシューズは去年の夏に買ったもので、まだあまり履いていないので綺麗なまま残っていました。これなら、素足のまま履いてもそんなに違和感はないと思います。足を出すのが苦手な私なので、サンダルなどの足指が出る靴は一切持っていませんでした。流星くんと出会う前は、外出時は必ず靴下類を履いていたからです。それに合わせて履く靴といえば、たいていはスニーカーかブーツといったものでしょうか。とにかく明日が楽しみで、お風呂に入ってベッドに入って、眠れるかな、寝なきゃな、と思っていると、いつのまにか眠りに落ちてしまいました。

 翌日、少しだけ早起きをした私は、予定通りの服装に着替えると、流星くんのお願い通り、靴下の類は履かず、素足のままデッキシューズに足を入れます。考えてみると、素足のまま外出するのは学校以外では初めてではないでしょうか。小さい頃から靴下を好んだ私は、裸足になるのも好きではなかったように思います。けれど、夏服になるのに合わせて、流星くんのお願いで、素足で外出するようになってから、ちょっとだけ素足もいいなっと思うようになりました。靴下を履いているよりも、もちろん涼しいですし、足元がきゅっとなる感じもなくて、幾分か過ごしやすいように感じます。まだまだ恥ずかしさは変わらないですけれど…。

「いってきます!」

「はーい!たのしんでおいでね!」

実は両親には、オトコノコとお付き合いをしていることはまだ内緒にしています。心の準備ができていないといいますか、なんだか恥ずかしくって、まだ言い出せていないのです。その時期が来たら、いつか言わなきゃなと思っています。なので今日のお出かけも、学校のお友達と遊びに行く、ということにしています。私の家から駅までは距離があるため、バスで向かいます。家からすぐのバス停で待っていると、バスは時間通りにやってきました。乗り込むと席はガラガラです。私は何となく、後ろの方の2人掛けの席に一人座りました。車内はエアコンがわずかに入っていますが、ちょっとだけ暑く感じます。きちんとそろえた足元のデッキシューズの中は、家からバス停までの徒歩で汗をかいているのか、足の指を靴の中でくねくねすると、汗をかいていて、ぬるぬる、とした感触がありました。幸いなことに周りにお客さんがいなかったため、私はデッキシューズを脱ぐと、その上に素足をのせました。あまりお行儀の良いことではないですが、誰も見ていないのでちょっとだけ許してくださいねっ。汗でぬるぬるする足の指をくねくねと動かして汗を飛ばします。バスの壁や床を素足で触れると、ひんやりしていい気持ちです。私はデッキシューズを横に置いて、素足をぺたりと床につけました。ひんやり。ひやひや。駅まではバスで30分ほどで着きます。昨日はなんだかんだでしっかり寝たのですが、足裏から感じる心地よさと、バスのエンジン音や振動で、眠気を感じてきました。少しだけ、眠ってもいいでしょうか。おやすみなさい…。

 気が付くと、バスは止まっていました。駅に着いたのかなと思ってあわててあたりをきょろきょろ。見たところ、駅の一つ前のバス停に止まっているようでした。前のドアからお客さんが降りていきます。そしていつの間にか車内はけっこう混んでいて、私の隣にも、おばあさんが座っていました。はっと気づいて、私は慌てて、素足をデッキシューズにさっと入れます。バスの中で靴を脱いでたところを見られてしまいました。ああ、恥ずかしい…。これが流星くんだったらと思うと、ドキドキしてしまいます。

 バスは予定通りに駅について、私はバスを降りて待ち合わせ場所に向かいます。約束の時間まではあと10分ほどです。流星くんはどこかな、もう来てるかなと探していると、ラインの電話が鳴りました。出てみると、5分くらい遅れるから待っていてほしいという内容。丁寧に電話で伝えてくれるなんて、さすが流星くん。配慮がすごくうれしいです。待ち合わせの場所は駅の入り口。地元のターミナル駅で、ショッピングモールも入っているので、結構な人通りがあります。私はじゃまにならないように入り口の端っこに立って、スマホで映画の情報やどんなレストランが入っているのかなどを見て時間をつぶします。立っているとまた足元がもわもわしてきて、片足ずつ、かかとを靴から浮かせていました。完全に脱ぐのは、人の目も合って憚られました…。

「ごめんね、おそくなっちゃって」

約束の時間から5分後ぴったりに流星くんは来ました。私服はラフな感じで、とても似合っています!

「いえ!ぜんぜん、大丈夫です!」

「暑かったでしょ?中に入ろうか」

「はい!」

中に入ると、外と比べてかなり涼しく感じました。じんわりと全身にかいていた汗が一気に引いていきます。

「じゃあさっそく、映画でも行こうか。確か観たいのがあるんだよね?」

「は、はい、昨日公開された…はわわ!」

びっくりしたのは、流星くんが急に私の手を取ったからです。流星くんとお手てつなぎ…!ドキドキしちゃいます!普段映画は外で見るよりもレンタルやは動画配信サイトで見る派なのですが、流星くんと観に行けるとあって、かなり楽しみです。見るのは金曜日に公開されたばかりの、ラブコメ映画。優秀な高校生の男の子と女の子が、お互いに好きなんだけれど、自分から告白するんじゃなくて、告白させるために様々な攻防をする…、といった内容です。漫画が原作なんですけれど、今とても人気らしいのです。土曜日で席はあるかと少し心配でしたが、流星くんが昨日のうちに予約をしてくれていたらしくって、スムーズにチケット発券ができました。さすが流星くんです!

「何か飲む?」

「あ、はい!」

ポップコーンが定番ですが、このあとランチを食べるのでそれはおいておいて、オレンジジュースを買って、私と流星くんは館内に入ります。席は後方の真ん中。スクリーンが真正面にあって、距離感もちょうどいい席でした。どこからかいつの間にかとってきてくれたブランケットをおひざにかけて、ジュースを飲み飲み、予告を観ながら静かに待ちます。館内は冷房が程よく効いていて、私は暗くなるのと同時にこっそりとデッキシューズを脱いでしまいました。通気性はあまり良くないみたいで、ここまで歩き回っていたせいでまたシューズの中はもわもわ、ムレムレとしていたのでした。素足になるとデッキシューズの上に置いて、足をくねくねと動かします。ふと思い立って、私はそっとシューズの上から素足を話して、映画館の床に素足を付けます。絨毯でひんやり感はありません。さわさわっとした感触が、家のカーペットを思い起こさせます。少し足を伸ばして、前の席にピトっと足裏をくっつけます。ここはひんやり。自分の座席の金属部分もひんやり。映画は最高に楽しくって、足元もひんやりと気持ちよくって、しかも隣には大好きな流星くんがいます。最高の時間を過ごしていました。頭がポーっとしちゃいます。

 「この作品は初めて見たけれど、面白かったね」

「はい!主人公の男の子がかっこよかったですね」

まるで流星くんみたいな、とはちょっと恥ずかしくって言えません…。映画を観た後は、時間的にもおなかが空いてきたので、レストラン街に行ってランチにします。私と流星くんはまた手をつないで、レストランの並ぶフロアへ。いろいろ見て回って、私の好きな和食レストランに入ることにしました。どのレストランも待ち時間が発生していましたが、ここは他と比べて短い待ち時間で入ることができました。今人気の韓国料理屋さんは1時間待ちだそうです…!

「いらっしゃいませ。お座敷になりますが、よろしいですか?」

「はい、大丈夫です」

流星くんが返事をしてくれて、レストランの奥にあるお座敷の席へ。流星くんは大丈夫です、とは言っていましたが、私はドキドキしていました。おざしき、ということは、靴を脱ぐんですよね、素足で履いている靴を流星くんの前で脱ぐのって、ちょっとドキドキ…。学校で毎日見られてはいるんですけれど(お昼休みや放課後などです)、外では初めてなので緊張します。

「さ、先に、いいよ」

「え、あ、は、はい、ありがとうございます」

案内された席へ行くと、流星くんは先に私を上げてくれるようです。ごそごそとデッキシューズを脱ぎ、素足をお座敷にのせます。脱いだ瞬間、冷房がほわほわした足をひんやりと包んでいい気持ち。まだ新品のようにきれいな畳の柔らかさを感じながら、シューズをそろえて席に着きます。掘りごたつ式のようで、足はテーブルの下におろしておけました。

「ふう、やっと入れたね。おなかすいたな」

「そ、そうですね、私もです」

素足をちょっと伸ばすと、流星くんの足がそこに。初めての状況に、とてもドキドキしてきました。けれど同時におなかも空いているので、和食の中でも大好きな、てんぷらそばにしました。デザートは、抹茶アイスです。

「…足、つかれてない?」

料理を待つ間、流星くんが心配して尋ねます。

「はい、まだまだ大丈夫です!」

「そっか。昨日話した通り、靴下はなしで来てくれて、うれしいよ」

「いえ、流星くんのお願いですから!」

「でも、あの靴だとちょっと暑いんじゃない?」

確かに、履いてみて感じていましたが、素足で履いているとすぐにムレムレになっちゃうので、通気性がやはり悪いのでしょうか。かすかに私の足のニオイもするような…。流星くんまで届いてないですよね…。

「そう、ですね…。歩いてると暑くなってきますね…」

私の足のついてのお話。慣れて履きましたが、やっぱり少しだけ恥ずかしくってドキドキしています。気づくと、テーブルの下で足指をくねくねさせながら話しています。

「そうだ。せっかく一緒に来たんだし、今日はサンダルを選んであげるよ」

「え、サンダル、ですか?」

先程もお話した通り、私は外出時、必ず靴下を履く子だったので、いままでサンダルというものを履いたことはありませんでした。両親も積極的にサンダルを履かせてこなかったため、サンダルはお庭を歩くようなものしか持っていません。

「うん。つくしちゃんにぴったりなのを選びたいな。そしてプレゼントするね」

「わあ、ありがとうございます!」

流星くんからサンダルのプレゼント。とてもうれしいです。いまからワクワクしてきました!早く選んでもらいたいものですが、その前に、運ばれてきたてんぷらそばを食べることにします。いただきます!

 「…ふう、おいしかったね」

「はい!」

「あ、そうだ、デザートだよね。すみません!」

料理を食べ終わったころ、タイミングを見計らって流星くんがデザートをお願いしてくれます。私は抹茶アイス、流星くんはわらびもち。デザートを待つ間、お靴屋さんをいろいろ見ています。すると、女の子の靴専門のお店があるようで、そこに行くことになりました。

「じゃあ、ここですね…ひゃわ!」

「あ、ごめんね、さわっちゃった?」

「い、いえ、大丈夫です!」

どうやらテーブルの下で、流星くんの靴下を履いた足が、私の足の裏に触れたようで、急なことだったので敏感に感じてしまいました。実は、掘りごたつがけっこう深くって、座ると私の足は足先しか床に届かないのです。なのでご飯を食べている時はテーブルの下で見えないようにぶらぶらさせたり、足指をくねくねさせたりしているのでした。

「…けっこう足、くすぐったいのかな、つくしちゃん」

「そう、なのかも、…です、ひゃう!」

またしても、さわわっと私の足に流星くんの足が触れます。

「も、もう、流星くんっ」

「あはは、ごめんごめん、なんか面白くって」

思ったよりも大きな声が出てしまって、私は顔を赤くしておこります。ぷんぷん。

 ランチを終えて(流星くんが払ってくれました、うれしい!)、またデッキシューズを履くと、先程調べていた靴屋さんへ。ちょうどセールをしているようで、様々なタイプのサンダルがたくさん並べられていました。どれがいいのでしょう…。履いたことがないので、自分の足にどれが合うのかわかりません。

「初めてでしたら、こちらのヒールの低いタイプがよさそうですね」

店員さんに聞いてみると、かかとの低いタイプがいいとのこと。流星くんも好みのようで、私よりも熱心に選んでいます。

「これなんて、どうかな」

「あ、かわいいですね」

そうして選ばれたのは、ピンク色のサンダルです。かかとをベルトで留めるタイプ。

「履いてみてよ、どんな感じか見たいな」

「はい!」

私も、サンダルってどんな感じなんだろうと思っていたので、店内のイスに腰かけて、試着してみる事にします。デッキシューズを脱いで、脱いで…。

「…流星くん、そ、そんな近くで見なくても…」

「いいのいいの、気にしないで」

というのも、流星くんはイスに座った私の横に膝をついて、私を見上げるように待機しているのです。私の足が、流星くんのすぐそこにあります。気にしないでと言われても、その、ニオイとか大丈夫かな…。こうなったら流星くんを動かすのは難しいので、私はおそるおそるデッキシューズを脱ぎ、サンダルに足を通します。汗をかいていて、ひっかかりひっかかり、無事に両足ともサンダルを履き、ベルトでかかとを固定します。少しだけ、ぶかぶかのようです。

「…すこし、大きいですね」

「どれどれ…」

確認のためか、さらに私の足に顔を近づける流星くん。ち、ちかい…!

その後、ピンクのサンダルのもう一つ小さいサイズをはじめ、いくつかのサンダルを試着していきました。そてようやく、納得のいく(主に流星くんが)サンダルに出会いました。

「うんこれがすごく似合ってると思うよ」

「はい、私も、履きやすくていいと思います!」

鏡の前に立ってサンダルを履いた自分の姿を確認します。小さな私の足にもピッタリあう、かかとのそれほど高くないサンダル。いろはクリーム色になりました。かかとの固定はありませんが、足先から甲にかけてしっかり包んでくれるので脱げる心配はなさそうです。むしろ、かかとのベルトがあると靴擦れを起こしそうで、流星くんがないタイプを選び出してくれました。

「じゃあこれにしようか。どうしよう、履いて帰る?」

「そう、ですね、せっかくなので!」

というわけで、今まで履いていたデッキシューズは袋に入れてもらい、買ったばかりのサンダルを履いてお店を後にします。歩いていても、通気性のよさに驚きます。サンダルで歩くって、こんな感じなんですね!足の指が見えているのはまだ恥ずかしいですが、きっと慣れていくことでしょう。

「どうかな?足、痛くない?」

「はい、とても歩きやすいです!ありがとうございます!」

その後、他のアクセサリーショップや本屋さんによって、駅ビルの屋上までやってきました。

「こうなっているんですね、屋上」

「うん、俺も初めてきた」

初めて来た屋上。芝生の広場が整備されていて、真ん中には噴水もありました。夏場は涼しくてよさそうですね!ほかには町を見渡せる展望デッキや、イスとテーブルの置かれた休憩スペースもあります。まずは展望デッキから町を眺めて、芝生広場へ足を入れます。穴場スポットのようで、休日でもそんなに人はいません。私と流星くんも、この屋上広場の小さな看板をたまたま見つけてやってきたのでした。小さな女の子が2人、裸足になって芝生の上で駆け回って遊んでいました。

「あ、あの子、裸足になってるね」

「そう、ですね」

うずうず、うずうず。…私も、ちょっとだけ。

「…私も、裸足になってみても、いいですか?」

「うん、もちろん。せっかくサンダルなんだし!」

流星くんの返しはものすごく早くって。目がキラキラしていました。私は流星くんの肩を借りてサンダルを右足、左足と脱いで、素足を芝生に乗せます。さわわ。ちくちく。ざらざら。もちろん、裸足で芝生を歩くなんて初めてなので、そんな感触に楽しくなってきました。てくてくと、裸足のまま芝の上を歩き回ります。とっても、いい気持ちです。走り出してしまいそうですが、子供たちの目もあるのでそれは抑えて。歩き回るだけにしておきます。

「どう?気持ちいい?」

「はい、すっごく、いい気持ちです!芝生って、こんな感じなんですね!」

足でさわわっと芝生をなでます。ひんやりとして、どこかくすぐったくて。クセになってしまいそうです。

「あ、ママ―、あのおねーちゃんもはだしだよー、ボクも!」

「こら、大声でいわないの!」

私のサンダルを左手に持った流星くんの見守る中、裸足でただただ歩いていると、やってきた男の子が私を見て言いました。お母さんは申し訳なさそうにペコペコしていて、私も急なご指摘に恥ずかしくなってぺっこぺこしてしまいました。ちょっと開放しすぎちゃった、かな?えへへ…。

「そ、そろそろいきましょうか!」

「ん、もういいの?」

流星くんは少し残念そうでしたが、もう十分芝生を堪能したので、またの機会にということで。流星くんが地面に置いたサンダルに、足を入れます。その直前、足の裏を確認しましたが、砂粒がくっついていただけでそれほど汚れてはいませんでした。ほっとして軽く足裏をはたいてから、サンダルを履きなおします。

「…よし、すみません、付き合ってもらっちゃって」

「ううん、いいよ。すごく楽しそうだったから、俺もうれしい」

「そう、ですか?えへへ」

「また来ようね、ここ」

「はい!」

その時はまたサンダルで、と思いながら、私と流星くんは下に降りることにします。もう時刻は夕方で、そろそろ休日も終わりです。

「今日はありがとうございました!サンダルも買ってもらっちゃって…」

帰りのバス停の前。流星くんが私を見送ってくれます。まだ、手はつないだままです。

「ううん、俺こそ。つくしちゃんが楽しそうで嬉しかった。また来ようね」

「はい!」

駅前始発なので、バスは時間通りに入ってきました。お仕事帰りのお父さんや、大学生っぽい人などが乗り込んでいきます。

「さ、早く乗らないと、座れなくなっちゃうよ」

「そう、ですね…」

まだ手をつないだまま、もじ、もじ。なにか流星くんにお礼したいな。お礼…。

「…!」

「今日はほんとうにありがとうございました!また学校で!」

私は流星くんの頬にキスをすると、パッと手をはなして、そのままサンダルの足音を鳴らしてバスに乗り込みます。ドキドキ、ドキドキしながら、バスの窓から外を見ます。心なしか、顔が赤くなった流星くんが私に向かって手を振ってくれます。私も、ドキドキする気持ちを何とか抑えながら、小さく手を振り返しました。

「またね…」

ちいさくつぶやくと、バスは静かに発車しました。足元に視線を向けると、流星くんの買ってくれたクリーム色のサンダル。足の指をくねくねと動かすと、それが隙間から見えます。生まれて初めての、サンダルでのお出かけ。その機会をくれた流星くんが、ますます好きになっていたのでした。



つづく


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ