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〇〇したい女の子たち  作者: 車男
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ケーキを売りたい桂木さん

 「お疲れさま!はい、これ持って帰ってよ」

「え、いいんですか?ありがとうございます!」

ケーキ屋さんの控室、外の冷たい空気で冷やされた体を暖房で温めながら、ミニスカサンタさんの衣装に身を包んだままの私は、店長さんからクリスマスケーキを受け取っていた。外はとっても寒くって、でも衣装は衣装なので、上半身は長袖に包まれているけれど、下半身はミニスカートに、ひざ下あたりまでのブーツを履いて頑張った。タイツかストッキングを履いてもよかったんだろうけれど、あいにく忘れてしまってそのままだ。

「寒かったでしょ?早く着替えて、家でゆっくりしてね」

「はい、お疲れ様でした!」

店長さんがいなくなると、私は控室に鍵をかけて私服に着替える。サンタさんの衣装を脱ぐと、ロッカーから私服を取り出す。シャツを着て、セーターを着て、パンツを履こうとしてブーツを履いたままだったのに気付く。このままだと履けないな。私は近くの椅子に腰かけると、ブーツの横についたファスナーを下ろしていく。ちなみに、このブーツは私物だ。ふくらはぎが完全に隠れるくらいの、黒いブーツ。とある有名なアパレルショップで買って、この冬ずっと履いてるもの。大学生なので、大学の授業にも履いていった。

「く、あれ、くっついてる…」

ファスナーを下ろしていくと、ブーツの中にひんやりとした空気が流れ込むのを感じた。外は寒かったはずなのに、ほぼ密閉空間のブーツの中はかなり蒸れていたらしい。足とブーツの生地がくっついて、なかなか足が外に出てこない。

「よいしょ、と」

ようやく右足のブーツを脱ぐことができた。そこから現れたのは、何も履いていない、素足だった。

「うわあ、くさ…」

そんなに顔と足を近づけていなかったものの、朝から夜までほとんどずっと履いたままだったせいか、私の素足は香ばしい香りを発しているのだった。足の裏なんかは、真っ赤になっている。

実は、ストッキングや靴下を履いていないのは忘れたわけではなかった。自分からそうしたくって、わざと持ってこなかった。家から、素足にこのブーツを履いてきていたのだ。

「あ、いけない、はやく着替えないと…」

自分の足(の香り)に心酔しているのも束の間、私は心を取り戻す。早く出ないと、変に思われてしまうかもしれない。私は両足のブーツを脱いだまま、ペタシ、ペタシと控室を歩いて、パンツを履いた。汗をかいているせいで、床にに素足がくっついて、またはがれる感触を歩くたびに受けた。そしてまた素足のまま、ブーツに足を入れる。それまで蒸れていた足が乾いたものの、履いた途端にまたポカポカ、ムレムレを感じるようになった。

 「店長、先に、失礼します!」

「お疲れさま!桂木さん、また機会があったら、よろしくね!」

「はい、お願いします!」

私はコートを着てまた外に出た。暖まっていた体に冷たい風が痛いくらいだ。早く家に帰ろう。そしてお風呂に入るんだ。あ、その前に、もう一度自分の足で…。


つづく

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