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〇〇したい女の子たち  作者: 車男
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夏っぽくいたい夏奈ちゃん

 「はー、めんどくさいいい…」

7月末の平日、朝早く起きた私は、眠たい目のまま制服に着替えていた。部活に行くわけでもなく、行事でもない。夏課外だった。

「おはよー」

「おはよう。いつまでだっけ、課外?」

階下へ降りると、お母さんが朝ご飯にコーヒーを準備して待っていた。

「あと3日だってー。やだよー」

「カナがすごい点とってくるからでしょ?がんばって成績あげてね?」

「ううう…」

朝ご飯を食べるうちに、登校時間が近づいてきた。残りをわたわたかき込んで、カバンのある自分の部屋へ戻る。そこで気づく。制服を着てはいるんだけれど、まだ靴下を履いていなかった。昨日一昨日はお休みで、夏だし靴下を履いていなかったから、その流れで今朝も履いていなかった。

「靴下、どうしょっかな…」

たしか、課外に来るのは全員ではなく、期末テストの成績で呼び出された人だけだ。校則にうるさい生徒指導の先生もいないはずだし、3時間の授業を受けるだけだから…。

「暑いし、履かなくていいかな…!」

そう結論付けた私。制服に、裸足のまま、カバンを持って玄関へ。

「いってきます!」

「行ってらっしゃい!お昼までには帰ってきてね」

「はーい!」

そして、素足のままローファーを履いて外へ出る。学校までは自転車で10分ほど。夏だけれどまだ朝早い時間なので、空気はそれほど暑くない。ただ、日差しはもうすでにきつくなっていた。

「う…あつ…」

早く校舎内に入ろう。教室に行くと、きっと冷房もついているはず…!私は素足で履いたローファーで、ぐぐっとペダルをこぎ出した。

 学校の自転車置き場に着くころには、日差しのせいで全身にじんわりと汗をかいていた。それは素足の足元もおんなじで、ローファーというのは通気性が悪いのか、自転車を降りたころには、ローファーの中は汗でぬるぬるするようになっていた。靴下を履いていない分、いつもと比べて中に隙間があって、歩くたびに、ぬる、ぬる、とした感触を足の裏に感じる。わあ、足、蒸れてるなあ。昇降口について、靴箱の扉を開ける。そしてなかから上履きを取り出して床にパコン、とおいた。ローファーをぬるっと脱ぐと、朝の空気がその足をなでて、けっこう気持ちいい。その足を上履きに入れてみると、ローファーまではいかないものの、またムレ感に包まれてしまう。うう、気持ち悪いな…。それに加えて、自分の上履きではあるものの、長らく持って帰っていないので、改めてみると汚れがすごい…。これを素足で履きたく、ないかな…。

「…今日は裸足でいっか」

私はそうつぶやくと、いったん置いた上履きをまた靴箱にもどして、ついでにローファーも一緒に入れた。手で中を触ってみると、じんわり、ぬるぬるとした感触があった。

 というわけで、生まれて初めて、裸足のまま高校の中に入る。昇降口付近はコンクリートの床で、外からの砂がたまっているのかざらざら感がすごい。足の裏は汚れてしまうかもしれないけれど、最後に洗うか拭くかすればいいし、あの上履きをずっと履いておくよりはいいかな!中に入ると固いタイルの床で、ひんやり、とても気持ちよかった。じんわりと足の裏に書いていた汗が、どんどん飛んでいく。ただ、誰もいないので、私のペシ、ペシ、という足音がやけに大きく響いて聞こえた。

 課外があるのは2階の大きめの教室。普段は入ったことがないけれど、高校3年生の受験生などの授業で使うらしい。階段を上ってその教室を探す。廊下の端っこにあった。ドアを開けると、そこには同じクラスの子や知らない子など、10人がすでに来ていた。けっこういるな…。黒板には前からつめてすわるように、と書いてあったので、私は10人目の子の隣の席に座った。床はここもタイルで、ひんやりしてはいるけれど、廊下よりホコリっぽく感じた。ざらざら、というより、湿ってドロドロ、という表現のほうが近い、かな。足はあまり見られないように、とりあえず椅子の下で組んでおく。いまさらながら、裸足なのは私だけなので少し恥ずかしくなってきた。隣は別のクラスの知らない男子で、何をするでもなくぼーっと座っていた。カバンを横に置いて、中から道具を取り出すときにちらっと彼の姿が目に入る。さっきまでどこを見ているかわからなかったけれど、何となく今はこちらを向いているような気がした。ふと横を見ると、男子はぱっと向こうを向いてしまった。ん、なんだろう、見られてた…?まあいっか。

 私が来たのは最後の方だったようで、あと2人加わって、授業は13人で始まった。課外授業は毎日3時間。普段より短くていいけれど、休みなのに授業があるというのが何とも心に響く。ああ、あと何点かとっておけば…!くう!知り合いもいないし!2時間目の授業が終わると、一度トイレに立つ。裸足のままペタペタと歩き、一番近くのトイレへ。掃除のときに使う、トイレ専用のスリッパがあるのでそれを履く。少し心配だったけれど、それがないと裸足のままで入ることになって、さすがにそれは…!無事用を足して、手を洗う。ふと気になって、誰もいない様子だったので、壁に手をついて足の裏を確認する。

「うわ、汚っ…」

予想はしていたけれど、やはり裸足のままずっと歩いていたために、足の裏にはホコリや砂がくっついて、灰色に汚れてしまっていた。汗をかいていたのが、よりくっつきやすくなっていたみたい。帰るときにちゃんと洗わなきゃな…。また教室に戻って、残りひとつ授業を受けて、その日はおしまい。いつもと違って半分だから、なんかすごく早く感じた!

 ホームルームなんてものもないので、授業が終わったらそのまま帰宅。部活もない私は、お母さんの伝言通り、お昼前に帰ることにした。昇降口までたどり着くと、靴を取り出してまた足の裏を確認する。さっきと同じように、ホコリで汚れた足の裏。裸足で過ごすのは初めてだったから、初めはびっくりしたけれど、慣れてくるとそんなに嫌でもない。むしろ、暑い中靴も靴下も履かなくていいのは気持ちいい!現に、今日は授業で3人の先生と会ったけれど、みんな何も言わなかったし!靴を手に持って、裸足のまま昇降口横の足洗い場へ。日に照らされたアスファルトはとっても熱くってびっくりしたけれど、蛇口から出てくる水は冷たくって、また気持ちいい!念入りに、真っ黒になった足の裏を手でごしごし洗うと、タオルで拭きふき、その足をローファーに入れる。とたんにまた蒸れ蒸れを感じて、非常に気持ち悪い。早く、脱ぎたい…!自転車置き場まで来ると、周りに誰もいないことを確認して、私はローファーを脱いで、前のかごに入れた。生暖かい風が、一瞬で蒸れた足をなでていく。私はその足で、ペダルを踏んだ。ちょっと痛いけれど、十分行ける!制服に、裸足というアンバランスな格好のまま、私は学校を後にした。明日は、サンダルで来ようかな。誰も文句言わないでしょ!


つづく

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