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〇〇したい女の子たち  作者: 車男
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とってあげたい美登里ちゃん

 「どうしたの?まいご?」

休日、家の近くを図書館へ向かって歩いていると、公園の木の下で小さな女の子がうずくまっていた。同じくらいの妹がいる私。放ってはおけないと思って声をかけた。まだ中学生の私なら、最近はやりの”事案”にはならないだろう。

「ぐす、すん、ふうせんが、とんでいっちゃった」

「風船?」

目を赤くした女の子が指さす先を見ると、あおあお茂った木の中に、赤い風船が引っかかっているのが見えた。かなり高いところ…。

「おお、高いね…」

「もらったばかりなの!うううう」

近くをきょろきょろすると、道の向こうのパン屋さんに、同じ風船が大量に置いてあった。開店セールで配っているらしい。

「じゃあ、もう一個もらってこようか!」

「やだ!あれがいいの!あれがちーちゃんのなの!」

幼い子に特有の、同じものでも一度手にしたものがいい、というヤツだ。私も妹と接していてそれには慣れているけれど、どうにもこれをとるのは…。間違いなく、木に登らないと取れない高さだ。

「わかったよー、まってて、お姉ちゃんがとってくるから!」

「ほ、ほんと…!」

私の言葉に、ちーちゃんは顔を上げてうれしそうな表情を見せた。木登りは小学生のころやっていて、グラウンドにある上りぼうも一番上まで行けた。中学生になってしばらくはやってなかったけれど、まだあの感覚は残っているはず…!

 私は履いていたサンダルのストラップを外し、裸足になって地面に足をつけた。木登りするような展開になるなんて思ってもみなかったから、おしゃれなサンダルを履いていたけれど、これは脱ぐしかない。柔らかく、ひんやりとした土の感触。小学生のころを思い出す。あの頃は、昼休みになると裸足のままグラウンドに出ていってたっけ。裸足教育の小学校だったから、春から秋の終わりまでは、一日中裸足で過ごしていたっけ。

「お姉ちゃん、がんばって!」

「よし…!」

私は少し背伸びをして、近いところにある木の枝に手をかける。足を木の幹にかけて、反動をつけて一気に体を持ち上げた。

「すごい…!」

下から女の子の声が聞こえてくる。木の皮が足や手のひらにガサガサしてちょっと痛い。小学生の時と比べて、足の裏が弱くなっているみたい。裸足でグラウンドを走っても、ぜんぜん痛くなかったんだけどな。そのまま、ちょうどいい木の枝に手をかけて、足をかけて、進んでいくと、ようやく風船が絡みついた部分に届いた。

「やった!お姉ちゃん、すごい!」

女の子の声がして、下を見ると結構な高さがある。そしてまた気づく。私、今日、ワンピースだった…!裾がはらはらしてて、下から見たら丸見えだ…!そう思うと途端に恥ずかしくなって、片手で風船のひもを持ち、片手でスカートのすそを抑える。足は木の枝にのせた状態。でもこのままでは降りられないので、私は手首に風船のひもを結びつけると、スカートの中はあきらめて、元と同じように降りていった。最後は裸足の足で土の上にジャンプ。もふっとした感触が気持ちいい。

「お姉ちゃん、ありがとう!」

「もう飛ばしちゃだめだよー」

「うん!」

女の子はまたぺこりとお辞儀をして、タタっと走っていった。私は額に書いた汗をぬぐうと、頭の上から葉っぱが何枚か落ちてきた。くっついていたみたい。そしておいていた荷物とサンダルを手に取る。土で汚れちゃったから、足をどこかで洗おうか。キョロキョロすると、公園の水飲み場が見つかった。幸い、足が洗える蛇口もある。そちらへ裸足のまま、歩を進める。木の下は土だったけれど、ほかは芝生になっていて、太陽はギラギラだけどそれほど地面は暑くなかった。裸足のままでも全然平気で、芝生のもさもさが気持ちいい。足を洗って、またサンダルを履く。ちょっと惜しいなと思ったけれど、今日は勉強しなきゃ。また別の日に、誰かと遊びに行きたいな。その時はまた裸足になって遊ぶんだ。

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