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〇〇したい女の子たち  作者: 車男
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尽くしたいつくしちゃんその6

 「隣、いい?」

「はい!」

5時間目の授業前、裸足の足元をなるべく見られないようにイスの下に小さく組んでいた私のもとへ流星くんが来てくれました。5,6時間目は数学と英語。流星くんと同じ教室になります。

「どうかな、裸足にはけっこう慣れた?」

「いえ、まだ、恥ずかしいというか…」

裸足で歩くのはもう大丈夫なのですが、廊下ですれ違う人や、今教室に入ってきている人たちに足元を見られているような気がして、どうしても恥ずかしいなという思いは消えませんでした。流星くんも、私とお話をしながら、ちらちらと足元に視線が行くのがわかります。それを意識してしまうと、またドキドキしてきます…!やがて、流星くんは体を後ろにそらせて、何か私のイスの下を確認するような仕草をしました。視線を追うと、私の足の裏を見ているんだなと気づいて、あわてて足を机の前の棒に移します。そうでした、イスの下で組んでいたら、後ろから見ると私の汚れた足の裏は丸見えです。すでに流星くんには見られてしまったかもですが…。机の棒は金属製なのでひんやりしていて、妙に気持ちよく感じます。丸いので、足の裏を前後に動かすと、その感触がまた刺激になって気持ちいいのです。コシコシ、コシコシ…。はっ。いけません、なんかみんながいる教室なのに、一人で気持ちよくなるところでした。あぶない、あぶない…!

「でもやっぱり、つくしちゃんは裸足が似合うよね、すごく、かわいい」

周りに人が増えてきたせいか、流星くんは私の方に体を近づけて、耳元で小さくそうささやきました。

「ふえ…!え、えへへ、そう、ですか…?」

また、かわいいって言われて、私はすぐに嬉しくなってしまいます。カーディガンの裾をもじもじしながら、流星くんの方をちらちら見てしまいます。さっきまで恥ずかしかった気持ちが、どこかへ飛んでいってしまうようでした。

 やがて先生が入ってきて、数学の授業が始まります。いつもの通り、数学の先生は基本的に生徒には当てずに授業を進めていきます。ただ板書の量がすごいので、私は必死にノートににメモを取っていました。授業の途中、少し休憩のような話が入っていったん流星くんの方を見ると、こちらを向いていた流星くんとばっちり目があってしまいました。目があった瞬間、にっこりして私に手を振る流星くん。もしかして、ずっと私のことを見ていたのでしょうか…?いいえ、きっと私と一緒で、たまたま目が合っただけですよね、たぶん…!ノートをとっている間はそんなに気にしていなかったのですが、気づくと私は足を再びイスの下に組んでいるのでした。無意識のうちに移動させてしまったのでしょうか、全く覚えていません。流星くんのことを意識して、再び机の前に足を伸ばします。授業の間は、こうしていてもおそらくそんなに目立たないはず、です…!机の横にはカバンをかけているので、そんなに足は見えないはずなのです。授業は後半に入り、もう少しで終わり。棒に乗せた足をわずかに前後に動かしたり、棒を足の指で挟んだりしながら、ノートをとっていると、やがてチャイムが鳴りました。次の授業で、今日はおしまいです。長く長く感じました…!

「お疲れさま、つくしちゃん」

「はい、流星くんも、おつかれさまです!」

「次で、最後だね」

「そう、ですね…」

「俺、ちょっとトイレいきたくなっちゃった。つくしちゃんも、いく?」

実を言うと、5時間目の前から私もその気はあったのですが、流星くんが隣に来てくれた嬉しさからすっかり忘れていました。

「あ、私も、いきます!」

「じゃあ、一緒に行こうか!」

「は、はい!」

時計を見ると、休み時間はあと半分ほど。急げば、スリッパのあった渡り廊下のあのトイレも間に合いそうです。私の教室から出て廊下を少し進んだところにもトイレはあるのですが、そこは廊下から個室まで段差などはなく、手洗い場も個室も、すべて上履きのまま入ることができます。そのため、専用のスリッパなどはありません。もし私がそこに入ったら、裸足のまま用を足さないといけなくなっちゃいます。さすがにそこまではできません…!裸足でトイレというのは抵抗がありますし、なにより、他の人の目が…!

「じゃあ、またあとでね、この前で待っとくから!」

「え、あ、え…」

けれどそんな考えは流星くんに届かず、流星くんは教室から近い、スリッパのないトイレにすすすっと入っていってしまいました。一人残された私。今からあのトイレまで走って、また戻ってくるとなると、流星くんをかなり待たせてしまうことになります。流星くんはやさしいので、たとえ教室から近いこのトイレでも、私が出てくるのを待っていてくれるのです。けれど、以前一緒にお出掛けをしたときにかなり待たせてしまうときがあって、申し訳なさそうに出ていったのですが、流星くんはその後しばらく不機嫌になってしまったのでした。私の大好きな流星くんの機嫌を、私のせいで損ねたくはありません。私にとっては重要な選択です。それに何より、私もけっこう我慢していたせいで、この機会を逃すと次の授業はまずいことになりそうです。時間のない中、私はトイレのわきに立って猛スピードで考えます。裸足のままこのトイレに入るか、流星くんの機嫌が悪くなってしまうのを承知で、スリッパのある遠くのトイレへ向かうか…。何人かトイレから出てくる子たちが私の足を見て驚いた表情を見せる中、私はとうとう前者を選択しました。なにより、なんだかいろいろかなりヤバくなってきているのです…!(語彙力)私はひとつ小さく息を履くと、誰もいませんように…!と願いながら、目の前のトイレに裸足の足を踏み入れました。今日一番、心臓がドキドキしているのを感じます。抵抗感からか、あまり意識はしていないのですが、ついついつま先立ちになってしまいます。中へ入ると、幸い誰もいないようでした。人の気配はありません。まずは手洗い場のあるところ。光の加減で濡れているところはわかるので、つま先立ちのままなるべくそこは避けて通ります。そしていよいよ、個室のエリア。小さな期待をしていたのですが、やはりスリッパはありません。そこでふと立ち止まって、いちばん手前にある、掃除用具入れの扉を開けてみました。

「あ…」

そこにあったのは、黒い長靴。おそらく、掃除の際に上履きのままだと心配な生徒のためのものでしょう。しかし、今の私にとっては、ただの黒い長靴が、とても光輝いて見えていました。これを履けば、裸足のまま用を足さずに済むのです!私ははやる気持ちを抑えて、掃除用具入れから長靴を取り出しました。念のためひっくり返して中を確認しましたが、何も入っていない様子。裸足のままで、いろいろな人が履いたであろう長靴を履くのは少々抵抗がありますが、何も履かないまま個室に入ることと天秤にかけたら、長靴着用の方がまだましだという思考に行きつきます。もう時間がありません。いろいろな選択をしていたおかげで、おそらくもう流星くんは用を足してトイレの前で待っている頃でしょう。手早く済ませないと。

 私は右足の素足を長靴に突っ込みました。中敷きのごわごわと、スンゴいムレムレを感じます。左足も同じように突っ込みました。人より小さい私の足では、長靴はけっこうぶかぶかです。いちばん手前の個室へガッポガッポと歩を進めます。考えてみれば、今日、校内で初めて履く靴です。それまで外気に触れ続けていた素足が、ムレムレの世界に入り込みました。用を足しながら(私の学校のトイレは洋式の方が多いです)、足元の感覚を気持ち悪くも、逆に気持ちよくも感じていました。ムレムレなのが気持ちいいとは、自分でもよく分からなくなっています。個室から出て手を洗うと、私はずっとこのまま履いていたい気もする長靴を脱ぎにかかります。履くときはするすると足が入っていった長靴ですが、いざ脱ごうとすると、汗をかいて引っかかるのか、なかなか脱ぐことができません。片方の手を壁について、足をまげて、ぐいぐいともう片方の手で無理矢理長靴を引き離します。ほかの人が見ていたらきっとお行儀の悪いポーズだったと思います。誰も来なくて本当によかったです…!

 右足を脱いで、左足を…と思っていたその時でした。入り口から誰かが入ってくる気配がします。冷汗をいっぱいいっぱいかいてきました。その人が入ってくるのと、私が顔を上げるのとが、ほぼ同時でした。ついでに、次の授業が始まるチャイムも、同時に鳴り始めたのでした。

「…つくしちゃん、だいじょうぶ…?」

「あ、流星くん…」

「つくしちゃん、それ…」

「あ、あの、その…」

心配してくれたのでしょうか、女子トイレなのにも関わらず、流星くんは中まで入ってきてくれました。けれどそれは私が、左足の長靴を脱いでいる最中。流星くんとの約束、「今日一日を裸足で過ごす」を破った瞬間を目撃されてしまったのです。私のその現場を見た流星くんは、一瞬顔がこわばったように見えました。いや、残念そうな表情だったかもしれません。とにかく、いろいろな心情が混ざったような顔でした。

「…まあ、いいや!チャイムなっちゃったし、はやくいこ!無事でよかった!」

「…は、はい!」

けれど流星くんは、何事もなかったかのようにニッコリ笑顔になると、ぱっとまたトイレを出ていきました。私は残ったもう片方の長靴をぐいぐいと脱がせると、再び裸足になって廊下へペタペタと飛び出します。油断していたせいで、手洗い場の床に落ちていた水を踏んでしまったようで、ぴちゃぴちゃした感触を足の裏に感じます。きれいな水なんでしょうけれど、嫌な感じには違いありません…。教室に入るとすでに授業は始まっていて、私は後ろからこっそり、足音を殺して入りましたが、ちょうどプリントを配っていた先生には気づかれることなく一番後ろの席に着くことができました。あまり存在感のない体でよかったです。先に席に着いていた流星くんは、こっそりと私の方へ顔を寄せて、

「よかったね、先生、気づいてないみたい」

「はい、ドキドキしました」

いつもの優しそうな流星くん。その表情を見て、私もホッとします。約束事には厳しい流星くん。けれどさすがに、裸足のままトイレに入ることは容赦してくれたみたいです。よかった…!

 英語の時間ははじめ小テストでした。前の授業で告知があったので、家でしっかり復習していたおかげか、授業前にいろいろありましたが、そこそこの点数は取れそうでした。流星くんの方を見ると、きれいな文字ですべての解答欄を埋めているようでした。さすがです、流星くん…!

 コンコン、コンコン…。小テストが終わって、授業が始まってすぐ、流星くんの方から音がしました。横を見ると、流星くんがなにか小さく折りたたんだ紙を持っています。先生に見つからないようにそっと受け取り、その紙を開きます。するとそこには、流星くんの文字で、

『英語が終わるまで、イスの上に正座してほしいな。足のウラはかくさないように』

と書いてあります。それを読んだ途端にまたドキドキして、流星くんの方を向きます。お願い!と言いたげに、ウインクして見せる流星くん。さっきのこともあったし、なにより流星くんのお願いなので、私は応えることにしました。一度持っていたペンを置き、床に下していた足を右足、左足と固いイスの上に乗せます。ふつうはスカートで足の裏は隠すのですが、それはNG。おしりと太ももの間でスカートを挟んで、足の裏をあらわにさせます。きっと真っ黒になった足の裏。自分でそれを見る勇気はありませんでした。少し座高の高くなった私。ドキドキで、ほっぺたが熱くなるのを感じます。ふと横を見ると、流星くんは嬉しそうに私の方を見てくれていました。その様子が見られただけで、やってよかったと思います。心臓はドキドキ、ドキドキしっぱなしでしたが…。それからも流星くんの方を時折見てみましたが、やっぱり私の足の裏に視線が行っていて、恥ずかしくなって足の指をぎゅっと丸めてみたりしていました。どうやっても隠せはしないんですけれど…。

「…はい、今日はここまでにしようか。号令」

「きりつ!」

がたがた、唐突に終わって、また唐突にかかる号令。20分ほどずっと正座しっぱなしだった私はその流れに乗れるはずもなく、右足をイスから下しただけであいさつをしていました。左足の裏が、イスの上でばっちり露わになっています。ゆっくりと、左足も下して床につけますが、足全体がじんじんして動けそうにありません。両足の足先だけを床につけて、じんじんがおさまるまでじっとしていると、流星くんは道具を持って立ち上がりました。

「つくしちゃん、じゃあ今日の放課後はまた、あの空き教室で!」

「あ、は、はい!」

それだけ言って、流星くんはクラスメイトと一緒に教室へ戻っていきました。帰る準備をしながらじんじんが収まってきたなあっと思っていると、先程まで隣の教室にいた夏目さんが戻ってきました。

「おつかれー、つくしちゃん、どうかした?大丈夫?」

やけに姿勢のいい私を不思議に思ったのか、不思議そうに尋ねる夏目さん。

「あ、いえ、ちょっと足がしびれてて…」

「え、どして…?正座してたの?」

「は、はい、ちょっと正座を…」

「あんまり足、汚したくないもんねー」

うんうん、とうなづきながら、夏目さんのそれ以上の追及はありませんでした。ほっとして片づけを進めます。担任の先生が来週から体育祭の練習が始まることを伝えて、その日のホームルームは終了。私は一人、裸足のままペタペタと空き教室へ向かいます。廊下は人が多く、裸足のまま歩くのはかなり恥ずかしかったですが、今日の初めほどのドキドキはありませんでした。やはり一日中裸足で過ごすことで、慣れてきたのでしょうか。あまり慣れたくはないのですが…。

 空き教室へ着くと、まだ流星くんはいないようでした。ほっとしたような、少し寂しいような気がして、いつもと同じ席へ裸足の足を進めます。相変わらずこの教室は掃除の手が入っていないようで、廊下よりもずとざらざら感がすごいです。近くの机を手で撫でてみると、手の指にホコリが付いて灰色になっていました。足の裏はきっともっとすごいことになっているのでしょうね、見るのが怖いです…。

「ごめんごめん、ホームルームが長引いちゃって!」

席に座って足をぶらぶらさせながら待っていると、少し息を切らした流星くんが入ってきました。誰もいないことを確認して扉を閉める流星くん。外から見えないよう、電気は点いていません。

「…どうだった?一日、裸足で過ごしてみて」

隣の席に座る流星くん。ふわっといい香りが私を包みます。

「はい、朝はすごく恥ずかしくってドキドキしてたんですけれど、だんだんそれもなくなってきました。全くってことはないんですけれど…。あと、足の裏がすっごく汚れちゃって…」

「そっかそっか、まだ、恥ずかしい?嫌な感じ、する?」

「イヤってことは、ない、かな、涼しくて気持ちいいですし…。でもやっぱり、恥ずかしい、ですね」

「なるほど…。でも、昨日言った通り、裸足で生活すると健康になれるらしいからさ、つくしちゃんには今日一日、がんばってもらえてよかったよ」

「は、はい…!」

よかったです、これで無事に、上履きが返ってくるはず…!

「まあとりあえず、足の裏をきれいにしちゃおっか。つくしちゃん、自分の足の裏、見てみた?」

上履き、まだかな、と思いましたが、とりあえずここは流星くんのペースに合わせます。急ぎすぎて機嫌を損ねるわけにはいきません。大事な場面です。 

「いえ、怖くって、見てない、です…」

「さっきちょっと撮っちゃったんだけどさ。こんな感じだったよ」

「え!?」

そう言って流星くんが見せてくれたのは、先程私が教室で授業を受けているところの写真でした。足を前にして座っているところ、イスの下で組んでいるところ、そして正座しているところ。いつのまに…!

「つくしちゃん、すっごく集中してて、全く気付かなかったみたいだね。スマホで撮ってたんだけど」

「そ、そうだったんですか…!」

流星くんのスマホに私の写真があるのはうれしいことこの上ないのですが、特に正座している写真、足の裏の黒さが目立ちます…。足の指や、足の腹など、床についていたところはもれなく真っ黒です。土踏まずは綺麗なので、その対比が際立っていました。

「ほら、こんなに、真っ黒だよ。がんばったね!」

流星くんはそんな私の足の裏をアップした写真も撮っていました。恥ずかしいから消してほしいのですが…!

「は、恥ずかしいですね…。こんなに真っ黒なんて…」

「俺がお願いしたことだからね、俺にきれいにさせてくれないかな」

「は、はい、わかりました…」

これはいつもの流れです。恥ずかしいですが、断る理由はありません。自分で完璧にキレイにできる自信もありませんから。

「じゃあ、こっちの机に座ってよ。そしたら拭きやすいから」

「机ですね」

流星くんの指した机に腰かけます。足は完全に床から離れて、流星くんはそんな私の前に膝まづく姿勢になりました。手にはまだスマホが…。

「お願いなんだけど…、この状態でもう一枚、とってもいい?いまばっちり、足の裏見えてていい感じなんだ」

「え、この状態で、ですか…。わかりました」

キラキラした目の流星くん。断るととたんにがっかりさせてしまいそうで、私は承諾するしかありませんでした。流星くんは嬉しそうに、何枚もパシャパシャと足の裏を写真に収めていました。真っ黒な足の裏なんて撮って、どうするのでしょうか…?まあ、私の写真を撮ってくれるのはうれしいのですけれど…。もっと、なんだろう、ツーショットとかも撮りたいな、なんて。

「ありがとう、つくしちゃん。じゃあ、キレイにしていくねー」

流星くんはスマホをいったんポケットにしまうと、どこかで濡らしてきたタオルを取り出しました。それを左足の裏に押し付けます。ピト。ヒヤヤ。

「ひゃん!」

「我慢しててねー」

ごしごし、ごしごし。

「くふふ、ふふふ…!」

我慢しようと思うのですが、ついつい声が出てしまいます。そんな絶妙な拭き方でした。くすぐってるわけではないのに、くすぐったいのです。けれど強すぎることもなく、痛さは感じません。ごしごし、ごしごし…。なんとか耐えようとして、足の指がもにもにと動いてしまいます。

「…よし、こっちはおしまい!じゃあ右も行くよー」

「お、お願いします!」

すでに全身にじんわり汗をかいていて、足の裏もじっとりしているはず。けれど流星くんは嫌な顔一つせず、むしろキラキラした顔で、足の裏をきれいにしてくれていました。ごしごし、ごしごし、ぐいぐい…。私はそんな足の裏の刺激に体をぴくぴくさせながら我慢していました。やがて終わったのか、タオルが足の裏から離されます。

「…よし、こっちもきれいになったよ!確認してみる?」

「ありがとうございます!そう、ですね!」

「よっしゃ」

確認って、どうやって?と思っていましたが、流星くんはすばやくスマホを取り出すと、机に腰かけたままの私の足の裏を再びパシャリ。そして見せてくれます。

「ほら、元通りになったよ、キレイな足の裏だね」

「ホントですね…」

そこには元通り、やや赤くなった私の足の裏が写されていました。今日一日、教室や廊下、化学室や美術室などを歩いてきた足。何とかケガなく終えることができました。そして明日からは上履きも戻ってくるはず…。

「あら、もうこんな時間か、そろそろ帰らなきゃね」

「あ、ほんとですね」

スマホの時計を見ていた流星くん、部活もないのに遅くまで残っているのはあまりよくありません。カバンを持って、そのまま教室を出ようとする流星くん。そんな彼の背中に私は慌てて声をかけます。

「あ、あの、流星くん!」

「ん?」

「あの、その、私の、上履きは…?」

おそるおそる尋ねると、流星くんはニコッと笑って、

「ちょっと考えたんだけどさ、一日だけ裸足でも、効果は出ないんじゃないかな?」

「え…」

私の背中を、冷汗が伝いました。足の指をぎゅっと丸めて、私は流星くんの次の言葉を待ちます。

「だからもうしばらく、一日中裸足で過ごすのを頑張ってほしいな。ほら、ちょうど体育祭も近づいてきたし」

「え、そ、そんな…」

泣きそうになった私のもとへ戻ってくる流星くん。ぎゅっと私を包んで、今日一優しい声で語り掛けます。

「だって、そのほうが健康になれるんだよ?俺、つくしちゃんにはずっと健康でいてほしいんだ、本当に」

「りゅ、流星くん…」

流星くんのいい香りのする腕の中、私はドッキドキしながらどうしようかと考えていました。けれど、答えはひとつしかありません。これだけしてくれた流星くんのお願いを断るということは、それはもう、流星くんとの関係を解消するようなものと同じです。そのほうが、私は嫌です。それなら、流星くんの理想の女の子を目指したいと思います。流星くんが強く願う、健康な女の子になりたいと思います。

「わかり、ました…。もう少しだけ、がんばってみます…」

「ありがとう!」

またぎゅっと私を抱きしめる流星くん。その“もう少し”がいつまで続くかわかりませんが(1週間、1か月、それ以上かもしれません…)、大好きな、大好きな流星くんのためです。頑張りたいと思います!!


つづく

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