97 びっくりさせてごめんね
怜奈が目覚めると…。
加筆修整しました(05.8.21)
「起きた?」
ポニーテールをゆらゆらさせながらしーちゃんがにかっと笑う。
「『……びっくりして起きた』」
私は目をぱちぱちさせて周りを見回した。部屋の中は窓から入る陽射しですっかり明るくなっている。
「あははっ。れーちゃんお寝坊だ」
すでにばっちり用意の出来ているしーちゃんが、どや顔でふふんと胸を張る。
── え? 今何時?
枕元のデジタル時計は七時四十五分。八時には起きて用意をするように言われていたのでギリギリセーフだ。ベッドから飛び起きようとして、
── ……あれ?
そのままぽすんと頭を枕の上に戻してしまった。天井がぐるぐると回っている。何これ? ぎゅうっと目を閉じて気持ちを落ち着けようとしたら、しーちゃんが、
「ちょっと! れーちゃん大丈夫?」
と言いながら腕を取り、ぐらぐらと揺さぶってきたので余計気持ち悪くなってしまった。
── しーちゃん、やめて!
強く想ったら、しーちゃんが私の腕をつかんだままぴたりと静止する。それでも私の身体のぐらぐらは止まらない。まだ揺れている感じがする。どうして? とりあえず、落ち着こう。目を閉じたまま、ゆっくりと深呼吸してみた。すーはー。
……あれ? すー。はー。
もう一度深呼吸してみて気が付いた。体が動いていない。それに、体は揺れてもいない。
なのに、私はぐらぐらと揺れている。起きた時よりはましになっているけれど、何だか身体がふわふわしている感じがする。……これ、どうなってるの? するとしーちゃんが、
「れーちゃん、落ち着いて聞いてね。何でそうなってるかはわかんないけど、今動いてるのはれーちゃんの思念体だと思う。れーちゃんの体は動いてない。でもれーちゃんの中に別のれーちゃんがいて、それがぐらぐら動いてる感じがする。わかる?」
しーちゃんありがとう。そっか、思念体だけが動いてるのか……だったら、やることはわかる。
『しーちゃんお願い、腕を離して』
しーちゃんがぱっと腕を離す。よし。もしもしーちゃんが思念体の操作の仕方を覚えてしまったら危険すぎる。でもしーちゃんのおかげで、何となく自分がどうなっているのかはわかった。体から思念体が離れているなら戻せばいい。
── 戻りたいっ!
強く念じると、どすんと体の重みを感じた。私の体、重っ! ゆっくりと深呼吸してみる。
「すーはー」
……よし。今度は体ごと動いている。試しに指を動かしてみる。ゆっくりとなら動かせるけれど、なんだか重みがある。だけど、この症状の解消のしかたならもう知っている。
私のお腹の上にはちゃんとまだ御守り袋がある。中にある受容体を意識して、そこから体に向けてエネルギーを流す。少しずつ、少しずつ。体の重みが消えるまで何度か繰り返した。
違和感がなくなったところでゆっくりと目を開ける。……うん、大丈夫。視界が揺れる感じもなくなった。ほっとしてゆっくり体を起こした。
今度は普通に動ける。ゆっくりとベッドから足を降ろして座る。ほう、と息をついていると、
「れーちゃん、大丈夫?」
しーちゃんが心配そうに私を呼ぶ。何でもないふりをして笑顔で言った。
「しーちゃんありがとう、もう大丈夫。だけど、」
良かったーと安心した声を出すしーちゃんを強く見つめると言った。
「しーちゃんに命令します。私がいないところでは絶対に思念体にならないでください」
するとしーちゃんは一度ぱちりと瞬きをして、
「わかった。れーちゃんがいないところでは思念体にならない」
と答えた。よしっ、とりあえずこれで大丈夫だろう。
次の瞬間、しーちゃんががばっと動いたかと思うとぎゅうっと抱きついてきた。
「ちょ、しーちゃん。苦し……」
「良かったー。もうびっくりしたよ! れーちゃんが思念体になってどっか行っちゃうかと思った!」
びっくりしたのは私の方だ。しーちゃんが涙を浮かべている。ずいぶん心配してくれたみたいだ……そっか。しーちゃんは思念体になった時の記憶と、どうして思念体になろうと思ったのかという記憶もなくしている。だから私がさっきの状態になっちゃった理由もわからないんだ。
私はそっとしーちゃんの背中に手を回すと、とんとんと軽くたたきながら声をかけた。
「大丈夫だよ、しーちゃん。あのね、思念体で行動すると体にも負担がかかるんだって。長い時間体を留守にすると命の危険もあるらしいんだ。だから私は思念体になったりしないよ。心配しないで?」
するとしーちゃんが、がばっと身体を起こして私を睨みつける。……え? しーちゃん、怒ってる?
「れーちゃん! 何呑気なこと言ってるの? それってさっきれーちゃんの命が危なかったってことでしょう?」
あれ? そうなるのかな?
── んー。でも体から抜け出たわけではないし? 戻った時の体の重さも前回ほどじゃなかった。これって大丈夫だよね?
「れー、ちゃ、ん?」
気付くとしーちゃんのドアップの顔が目の前にあった。
「はいぃ?」
びっくりして思わず声が裏返ったのは仕方ないと思う。
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