92 chatty になる
前回に引き続き、ミシェルとの会話です。
修整しました(05.8.9)
何とかChatterにしーちゃんが登録し、この前見つけたシークレットのルームに(Chatty同士でグループを作って交流する場所をChatterroom 、チャタールームと言うらしい)ログインしようとしたら、ミシェルさんに止められた。
「ルゥムに、ログィンするトキはー、IDとパスワード、スマホに、トウロクゥー、しないで、クダサーイ」
「え、何で?」
今まさにクッキーに記憶させようとしていたしーちゃんがびっくりして聞く。
「アナタたち、親父ヤお袋ニ、アリーだって、イッテマスカー?」
「親父やおふくろって……ぷくくー」
しーちゃんがツボったらしい。お腹をおさえて笑いをこらえている。
「あれェー。言い方、ヘンデスカー。オトウサマ、オカアサマ?」
ぷっ。しまった。今度は私がツボった。くすくすが止まらない。おなかが、いたい……!
「モシモシ、キコエテマスカー?」
しまった、またミシェルさんを放置してしまった。でも申し訳ないけど、今は無理。お腹をおさえて必死に笑いをかみころしていると、先に復活したしーちゃんが言った。
「ミシェルさん、すっごい日本語が変なんだけど、どうやって覚えたの?」
「オレ、日本ノマンガ、大好き! ネ。アニメ見て、覚えたヨ!」
「「あー」」
なんか、納得した。いろんなジャンルのアニメを見ているんだろう。せめて、統一して覚えて欲しかったよ……。
「俺の日本語、ゲーマーに、スッゲーウケる! って、言われるよ!」
なるほど。よく使っているらしいセリフは、とてもわかりやすく聞こえるんだ。しーちゃんがぼそりと呟いた。
「日本のおたく文化は最強だね」
「うん」
「オタクハ、日本ノ タカラデース」
その後、脱線した話を元に戻すと、ミシェルさんがスマホにパスワードやIDを記憶しておくと、せっかくシークレットにしてある情報が簡単に見られてしまうから、いちいちめんどくさいけれど毎回入力して使うように、と説明してくれた。私たちが協力者だということは親にも秘密だから、これは大事なことだ。……たぶん、言っても信じてもらえないと思うし。
「アー、バィザウェィ、キャン ユゥ スピィク イングリッシュ?」
「え? いきなり英語? ……えーっと、イエス、アイ キャン スピーク いんぐりっしゅ。で、合ってるよね?」
しーちゃんがそう言って私に同意を求めているうちに、ミシェルさんがスラスラと英語で話し出す。
「In the room,we always use English. So you have to write your messages in English.」
「うわっ、ちょ、待って。無理無理。全然わかんないー!」
しーちゃんがパニックを起こして大声を出しかけたけれど、『静かに!』って、言った瞬間にすぐ声が小さくなった。セーフ。私の受容体、ありがとう。替わりに私がミシェルさんに話す。
「ミシェルさん、チャタールームの中では英語で会話してるってことで合ってますか?」
「ィエース、ザッゥラィ」
その通りってことかな。私は続ける。
「私たちも英語で書かないといけないってことですね?」
「ィエース。ミンナ、日本語、ワカラナーイ」
「れーちゃん、すごい! よくわかったねっ」
しーちゃんが目を丸くして言うのに、私はちょっと笑いながら首を振る。
「ううん。知ってる単語が聞こえたから、たぶんこう言ってるんじゃないかなって想像しただけだよ」
「ふーん。れーちゃんの妄想が役に立つこともあるんだねー」
しーちゃんがにかっと笑って、何気に失礼なことを言ったけど、とりあえず放置してミシェルさんに聞く。
「ミシェルさん、協力者のことを教えてもらえますか?」
「ンー、ナニ、聞きたいデスカー。オレも、よくわかんねーよ。世界中に、いる、ゼ。Chatter見りゃ、ワカル、ゼ。……ゴメン、コレカラ、ゲスト、クルカラ、アトヨロシク! マッタネー」
プツッと通話が切れた。しーちゃんが、
「切れちゃったね」
と言ってスマホの通話アプリを閉じた。そして、Chatterのルームをタップすると、ミシェルさんに言われた通り、記憶させないように注意してIDとパスワードを入力する。すると、SECRETの文字が取れて掲示板が表示された。そのときゴーグルさんがピコンと鳴って『翻訳しますか』と聞いてきた。
「すごい、ゴーグルさん優秀だ。れーちゃん、翻訳してもらう?」
「うん。とりあえずしてもらおう。英語で見てもわかんないよね。それにいちいち翻訳してもらうより便利じゃない?」
「よし。それではゴーグル先生、よろしくお願いします」
しーちゃんが「はい」をタップすると、一瞬で表示されている文字がいっせいに日本語に変わる。掲示板の一番上には、『私達は協力者です。エミューリアの姫達を救え』という言葉が表示され、会員数と入室者数がその下に出ている。
「……あれ? ねえ、れーちゃん。協力者って、私たちを含めて十人だって言ってなかった?」
しーちゃんが指差した会員数は十になっている。
「ほんとだ。そういえばレイアーナさんたち、今は、って言ってたよね。ってことは……」
「うん。誰か一人、すでに協力者じゃなくなってる人がいる、ってことだね」
その人はどうなったんだろう。そのときしーちゃんが、
「きっとその人は記憶を消されたか死んだ、てことかな」
と呟いた。その後で声は聞こえなかったけれど唇があたしみたいに、って動いていた。私は何も言えなかった。
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