78 思念体になる
ようやく怜奈と詩雛に戻って来ました。
修整しました(05.6.15)
『ふむ。それで?』
促すとミシェルが続ける。
『SNSで協力者専用のトークルームを作ったんだ。暗号化された安全なサイトで、許可された者だけでクローズドチャットをすることが出来る。このサイトにアクセスするためのパスワードは直接姫達から伝えるようにすれば、機密保持もばっちりだと思うんだよね。ユーザーは個人情報をサイトに届けていないと利用が許可されないから、不正アクセス防止にも一定の効果が認められているし……』
次々と話し続けるミシェルについて行けない。思わず頭を押さえ、大きなため息をつくとミシェルを制止した。
『待て、ミシェル。お前の話には理解できない言葉が多すぎる。我らに分かるように丁寧に説明しろ』
目を輝かせ夢中になって話し続けていたミシェルは、はっと我に返ったように動きを止め、頭をかいた。
『ごめんなさい。えっと、つまり……』
ミシェルの説明によると、地球全体を網羅する電子ネットワーク上に、機密保持のできる交流場所を作り、そこをイルラ同士で情報共有出来る場にしたいということだった。我らがどこにいるのか、また我らに伝えて欲しいことや伝えたいことがあれば、その時に面会しているイルラを通じて伝えてもらうようにするということらしい。この機構はグループで共有するだけでなく、個人同士で繋がることも可能なようで、イルラが孤独にならないようにすることも出来るそうだ。
『……なるほど。我らはイルラにそのパスワードと会合場所を伝えれば良いのだな』
ミシェルにそう確認すると、にっこりと頷いた。
「そう。協力してもらえる?」
面白い。口元を引き上げて笑いながら言う。
『いいだろう。我らはこちらの言葉がわからぬ。ミシェルの伝えたいものを見せろ。映像記憶でイルラに伝えよう』
ミシェルがこてんと首を傾げる。
「映像記憶? カメラ持ってないよね? 思念体に記憶させるってこと?」
『イルラには出来ないが、我らなら出来る。とにかく記憶するから映像を見せろ』
「そうなの? ……ま、いいや。じゃ、こっち来て」
ミシェルが先程まで作業していた机に向かい、モニターを操作すると、画面にいくつかの文字が表示される。その中の、「WE ARE ALLY. SAVE THE PRINCESSES OF EMURIER」という文字を指してミシェルが言う。
「これが、僕が立ち上げたSNSのサイトだよ」
我らはミシェルの提示したサイトとパスワードを記憶した。その後、現在の他のイルラの情報をミシェルに伝えた。
「僕を含めて七人だね。まだ増えるの?」
ミシェルがまた額に人差し指を当てながら確認してくる。
『少なくともあと三人は増えるだろう。……ところでミシェル、少々聞きたいことがある。構わないか?』
「ん? なになに? 何でも聞いてくれていいよ!」
ミシェルがわくわくした顔で言う。
『徹ゲー、とは何だ? あと、ドッキリと、ボカロについても教えて欲しい』
「………!」
すると、ぽかんと口を開けてミシェルが固まった。
私は、夢を見ているな、とわかっていた。
昨日の夢と同じ場所で、栗色のくるくる縮れた短めの髪の男の人がパソコンに向かい、何か作業をしている。そこにレイアーナさんが声をかけると、ものすごく嬉しそうな表情で男の人が立ち上がり、目の前に来た。明るい青灰色の細めの瞳がきらきらと輝いている。
想像していた通り、松永さんと同じくらいの年の男の人に見える。笑い顔がとても可愛い人だった。背はレイアーナさんよりもまだ頭一つ分くらい高い。
ミシェルさんは思念酔いしたみたいでレイアーナさんに叱られていた。もう少しで死ぬところだったらしい。思念酔いってそんなに危険なことだったんだ……。私も気をつけよう。
ミシェルさんはパソコンにChatterの画面を出して説明していた。そのとき何となく違和感を感じてミシェルさんを観察していて気づいた。口の動きと伝わってくる言葉が合っていない。だから変な感じがしたんだ。私には日本語でミシェルさんが話しているように聞こえていた。けれどもよく聞いてみると、ミシェルさんが話している言葉と伝わってくる言葉が違う。
これが、思念波で会話しているってことなんだ。……そういえばレイアーナさんたちと話していた時、ふたりともほとんど口を動かしていなかった気がする。
ふと、しーちゃんのことを考えた。しーちゃんも同じ夢を見てるのかな? 周りを見回してシュリーアさんを探すと、レイアーナさんの少し後ろで頬に手を当てて、緩く微笑みを浮かべながらミシェルさんを見ているシュリーアさんがいた。
── しーちゃん、いるのかな?
そう思って、シュリーアさんをじっくり観察してみようと目を凝らしたその時、急に後ろからぐいっと引っ張られる感じがして、びっくりする間もなくその場から引きずり出された。
『な、何? どうなってるの?』
急に真っ暗闇に放り出されて、とまどった。なんだか身体がふわふわ浮いているような感じがする。
── ここは、どこだろう?
途方に暮れていると、急に隣にしーちゃんの気配がするとともに声が聞こえてきた。
『気がついたね』
気配がした方に急いで目を向けると、うっすらと光る透明なしーちゃんがいた。
『うわっ! しーちゃんの幽霊?』
びっくりして飛び上がると、しーちゃんがあきれた顔で言った。
『せめてそこは思念体って言おうよ。れーちゃんも同じ状態だよ?』
言われて自分の体を見ると、確かにほんのり光る透明なナニカになっていた。
いつもアクセスの増える金曜日に投稿したのにPVが増えず、ちょっと落ち込んでいました。
今日はもう少し増えるといいな……。
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それでは、またお会いしましょう。
皆様に風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。




