68 大災害防止計画
二回目の会合が終わりました。
加筆修正しました(22.6.14)
更に修整しました(23.05.23)
これはミシェルが喜びそうだ、とレイアーナさんがニヤリといつもの少し不気味な笑い方をする。この顔が別に悪巧みをしているとかそういうのではなく、普通に笑ってるつもりなんだって、もうわかってるけどやっぱりびっくりする。
「あの、私からも質問していいですか?」
思わず手を挙げて言うと、レイアーナさんが頷いてくれた。
「協力者って、何人くらいいるんですか?」
『我らが直接協力者とした者はそなたらも含めて十人だ』
十人か。私たち以外に八人いるってことだよね。
「協力者はみんなSNSで繋がっているんですか?」
『そうだ』
また尋ねるとレイアーナさんが短く答えた。それから、
『これらのアイコンに見覚えはあるか?』
とレイアーナさんが映像を送ってきた。その中には見覚えのあるアプリと見たことがないアプリのアイコンが混じっている。
『通話アプリというそうだな。これらのアプリを使えば無料でミシェルと直接会話することが出来るそうだ。そしてこれらのアプリを利用するときに必要なのがこれだ』
レイアーナさんがIDとパスワードの画像も送ってきた。
『ミシェルからの伝言だ。日本語は得意ではないが話せるから気軽に連絡してほしいと。彼は最初のイルラであり、我らと他の協力者のまとめ役をしてくれている。……少し癖のつよいところはあるが、そなたらのいい相談役になってくれるだろう』
── ミシェルさんって、どんな人なんだろう?
すごく気になる。今晩会えるかもしれないと思うとちょっと楽しみだ。そのとき、ふっと横でしーちゃんが笑った。う、嫌な予感。
「ノートに書かなくても頭の中にメモ出来るって便利だねー。探さなくても思い浮かべるだけでいいんだもん。これ、自分でも出来ないかな?」
やばい。これは余計なスイッチが入りそう。ここは話題転換だね。
「レイアーナさん、大地の力がたまっているところを教えてもらえますか?」
私は勉強机の本棚から地図帳を取り出すと、ベッドに戻りレイアーナさんたちにも見えるように膝の上に地図帳を広げた。日本全体が載っている見開きを示すと、二人が近付いて来て覗き込む。レイアーナさんが地図を見つめながら近畿地方の辺りを指差すと、
『この辺りの詳しい地図はあるか?』
と言うのでそのページを広げると、見開きの右側いっぱいに近畿地方、左側に淡路島と四国の一部が載っている。
『この辺りだな』
レイアーナさんが指差した場所は大阪湾のちょうど真ん中辺りだった。
「しーちゃん、ここって……」
「うん。待ってて」
しーちゃんが自分のリュックからノートを取り出すとパラパラとめくり、貼ってある地図を横に並べた。二つを見比べるまでもなく、ぴったり重なるものが書き込まれている。思わず口から、
「やっぱり」
という言葉が漏れた。しーちゃんも頷き、
「もろ断層の上だね」
と食い入るように覗き込んで言った。
『ほう。これは断層の分布図か。ではこちらは地震のものか?』
レイアーナさんが興味を持ったみたいだ。
「これは震源の位置を示しています。丸の大きさは地震の強さで、横の数字は年代です」
そう説明するとレイアーナさんは顎に右手の親指と人差し指を当てる仕草をして、
『ふむ。このデータによると過去にも大きな地震が起こっている場所になるな。だとすると比較的浅い位置で今度の地震は起こる可能性がある』
と言った。
「そうなのですか?」
── どうしてそんなことがわかるのかな?
と思っていると、レイアーナさんが説明を始めた。
『今ある大地の力が長い時間をかけて溜まった物であれば、地面の奥深い場所にあることが多い。だが一度溜まった力を吐き出した場所であれば、大地の力は地面の奥深く迄潜り込めず比較的浅い場所に溜まる。これはいつ頃にあった地震だ?』
地図に書かれている数字を確認すると約二十年前に起こった地震だとわかった。それを聞いたレイアーナさんの目がきらりと光る。
『そなたらは運がいいぞ。これならば海底に思念石を沈めて爆発させるだけで、かなりの力を削ぐことが出来るだろう』
「思念石って……これを?」
私は手の中に握りしめていた勾玉を見つめる。
『そうだ。その思念石をなるべく速く育て、出来るだけ多くの思念波を集めよ。なるべく人の多い場所で集めれば効率良く採集できるだろう』
それを聞いたしーちゃんがにやりとする。
「れーちゃん。明日、さっさとこれを終わらせて月曜日はお出かけをゲットしよう。父さんたちもお休みのはすだから車を出してもらえるよ。あと、母さんたちに頼んで夏休み中にいろいろ連れてってもらおうよ!」
「そうだね!」
『では、我らは二日後に来よう。その時に次の予定を立てるからそのつもりでいるように』
レイアーナさんたちには月曜日の昼前に来てもらえるように頼むと、二人はまた天井を通り抜けて消えて行った。
多くの思念波を集めるためには、多くの人がいる場所で思念波を抜いてもらい、思念石を育てる方が効率良く集められるのは今日経験したばかりだ。
──よしっ、明日は頑張って自由研究を終わらせるよ!
下から母さんが、いつまで起きてるのー 早く寝なさい、という声が聞こえてきた。
興奮してはいたものの、一日中外にいた疲れから、横になるとすぐに眠ってしまった。
第10回ネット小説大賞の方から感想いただきました。
感無量です。これからも頑張って書き続けますので、応援よろしくお願いいたします!
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それではまたお会いしましょう。
皆様に風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。




