67 記憶の共有
お姫様を目の前にした二人の反応をお楽しみ下さい。
加筆修正しました。(22.6.14)
更に修整しました(23.5.23)
パスワードはアルファベットの小文字と数字を組み合わせたもので、二人の名前の一部が使われていた。受け取ったパスワードは直接脳に書き込まれたような感じで、パスワードのことを考えるとすぐに思い浮かぶみたい。なんか、便利。
「……あ」
『何だ?』
「まだ聞きたいことがあります」
私がそう言うと、しーちゃんも慌てて言う。
「はっ、そうだった。最初の質問の答え聞いてなかった」
『ああ、我らが王女かというものか』
レイアーナが何でもないというふうに答える。
『私はこの地球とは異なる世界にある、アレトという星の大国の一つ、エミューリアの第一王女で世継ぎの君と呼ばれる立場にある』
続けてシュリーアも、
『わたくしはそのエミューリアの第二王女となります。アレトはこの地球にとてもよく似た姿をしております。おそらくアレトと地球は並行世界にあるのでしょうね』
そう言うと、ふふっと微笑んだ。
── 本当にお姫様だったんだ。
え、待って。私、一応年上だしと思って丁寧に言うようにしてるつもりだけど、お姫様に話すならもっと言葉に気をつけるべきなんじゃ?
ええっ、何て話せばいいの? やっぱり、姫様、○○いたします、とか?
思わず軽いパニック状態になってあわあわしていると、レイアーナ姫様が、ふっとお笑いになって、お口を開かれた……ああ、何か変な感じがするっっ!
『我らが姫だからと言ってそなたらが気にする必要はない。この世界で我らは存在しないようなもの。今までと同じように話せばよい』
とりあえず、ほっとした。そのときしーちゃんが、
「ならよかった。今さら丁寧に話すのはめんどくさいし、助かるよ」
と言ってにやりと笑った。さすがしーちゃん、強い。それから、
「じゃあそのまま聞くけどさ。さっきから出てくるミシェルさんって、フランスのパリにいて、何か門みたいな形をしたビルで働いてる男の人で合ってる?」
レイアーナさんが……とりあえず呼び捨てはやめよう。お姫様だと思ったら、名前だけで呼ぶの私にはもう無理だ。さんをつけてごまかすことにする。レイアーナさんが頷いて言う。
『そうだ。そのミシェルで合っている。……だが、なぜミシェルの働いている場所がわかったのだ?』
これは面白がっている時の反応だと思う。口の端が軽く引き上がっている。しーちゃんが答える。
「あなたたちに会うちょっと前から、あたしもれーちゃんも夢を見るようになったんだよね」
しーちゃんが顎に拳を当てる。反対側の手はスマホを持ってぷらぷらと動かしている。
「最初は何か変な夢だなって思うくらいで、宇宙船っぽい船の中に誰かがいるなって感じだったんだけど、この受容体? をもらってからはあたしがシュリーアさんの目で見て、シュリーアさんが感じている風景を一緒に見ているような夢に変わったよ」
しーちゃんが思念石をじっと見ながら言う。
「その夢であなたたちが思念波を集めて何かをしようとしているのがわかった。たぶん、元の世界に戻るためと、同じ船に乗っている人たちを助けるためなんだろうなって思ってる。そのためにはすごくたくさんの思念波が必要だから、シュリーアさんも思念波のコントロールを一生懸命練習して協力者を探しているってこともわかった。国際宇宙ステーションで思念波を集めて、それから地球に来ていること。パリに行ってミシェルっていう男の人を協力者にしていることも、全部夢で見たことだよ」
しーちゃんはスマホをウエストポーチにしまうと、顔を上げる。
「ミシェルっていう人を見たのは昨日が初めてで、顔はまだ見えなかったから、たぶん今日の夢で会えるんじゃないかと思ってる。あたしが夢で知ったのはそこまで」
『なるほどな。レナも夢を見ているのか?』
「私もしーちゃんと同じくらいの時から夢を見るようになりました。私はレイアーナさんが見たものや感じたことに感応して見ているんだと思います。初めて見たのは、レイアーナさんが宇宙に一人でいる姿です。受容体をもらってからは、宇宙ステーションで思念波を集めて、それから地球に降りて思念波を取り込んで宇宙にもどったこと、シュリーアさんと一緒に地球に来てミシェルさんに紹介したところまでです。私もミシェルさんの顔はまだ見ていません。パソコンで何かをしているところにレイアーナさんが声をかけたところで目が覚めました」
最後まで黙って聞いていたレイアーナさんは、ふむ、そうかと言うと、しばらく何かを考えているように目を閉じていた。やがて目を開けると言う。
『そなたらが夢として見ているのは我らの記憶に間違いない。私とシュリーアは協力者を探すため、思念波を地球の上空に薄く広く展開している。我らに感応した者を感知しやすくするためのものだ。思念波網と呼んでいる。その網の元は我らがこの世界に来てからの記憶だ。そなたらはその記憶を、夢を見るという行為でたぐり寄せているのだ。他の協力者の中にも断片的に感知したものはいるが、やはりそなたらは破格に感応しているようだな』
ぶれないしーちゃんと混乱する怜奈でした。
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それではまたお会いしましょう!
皆様に風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。




