60 花火って火器?
60話目です。
アクセス増えて嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします。
修正しました。(22.5.15)
再度加筆修整しました(23.5.4)
『はい』『うん』
私達が答えるとレイアーナがニヤリと笑った。
『ここは人が多い。夜までに、さらに集めてもらうとしよう』
『……え?』
何をするつもりだろう? どくん、どくん、と心臓の音が大きく聞こえる。そのとき、
『戻って来られます』
シュリーアがそう言ってしーちゃんの側に降りて来た。するとレイアーナが、
『シュリーア。一度思念波を回収する。半分程で良い』
と指示を出す。シュリーアは、
『かしこまりました』
と言うとしーちゃんに声をかける。私には、
『今から思念波の一部を回収する。回収後は思念核の空いたスペースに一気に周囲の思念波が流れ込む。波に呑まれ、思念酔いしないように気をつけろ。受容体にそなたの思念波をしっかりと繋ぎ止めておくのだ。出来るか?』
と確認してきた。だけどこれはさっき経験済みだから、
『大丈夫です』
とはっきり答えた。
『そうか。では、思念波を回収する』
ぞわり。今までとは違う感覚が襲ってくる。何これ!? とびくりとした身体をはうように、強い思念波が受容体へと向かう。
『じっとしていろ。すぐに済む』
同時にレイアーナの思念が読み取れた。急いで自分の思念波を受容体に繋ぎ止める。そのままぐっと力を入れるように橋を維持していると、川の流れが逆流するように受容体から何かが流れ出て行くのがわかった。今までと反対方向の流れに、ぞわっと鳥肌が立つような気持ち悪さを感じたけれど、流れから意識をそらすとすぐにただ動きを感じ取れるだけに落ち着いた。
本当は一瞬の出来事だったのかもしれない。でも、数分か、もっと長くかかったように感じた。流れが止まると再びレイアーナの声が聞こえた。
『回収は無事に済んだ。だが気を抜くな。私の思念波が離れると一気に周りの思念波が流れ込むぞ。呑まれぬようにして耐えろ』
ほっとして受容体から意識をそらそうとしていたので、慌ててもう一度繋ぎ止める。
『では離すぞ。先程と同じようにしていれば大丈夫だ』
そう言うとレイアーナの思念波がスッと引いていく。その途端、今までとは比べものにならないくらいたくさんの思念波が一気に押し寄せてきて、飛び込むように受容体に吸収されていく。まるでジェットコースターで急降下しているかのような勢いで、こちらも引きずられそうになる。必死で踏ん張っているうちに、徐々に流れが緩やかになり、いつの間にか元の状態に戻っていった。
流れを感じなくなり、ほーっと深く息をついた。気付くと身体中が汗でじっとりとしている。
『……気分はどうだ?』
レイアーナが私の顔を覗き込んできた。少し眉が寄っている。きれいな濃い水色の髪が、キラキラしながら顔の横を流れ、顔の周りを彩っている。白い肌に、あまりにも整った顔立ち。思わず心臓がとくんと跳ねた。ラピスラズリ色の瞳と目が合う。宝石みたいにきれいだ……。見とれていると、すっと顔が離れる。
『異常はなさそうだな』
無表情にそう言うと、シュリーアに声をかけた。
『そちらはどうだ?』
シュリーアはしーちゃんの顔を覗き込むように身体を屈めていたが、レイアーナの方へ向き直ると答える。
『シーナさんは少し酔われたようですが、回復してきておりますわ』
しーちゃんは少し顔色が悪いけれど、しっかり立ったままで大丈夫そうだ。レイアーナはちらりとその様子を確認すると、
『ではまた今夜に』
と言うと、身体を浮かせる。その時はっと思いつき、離れていくレイアーナの手に自分の右手を重ね、
『待ってください』
と伝えた。
『どうしたレナ』
訝しげに見下ろすレイアーナに急いで伝える。
『今晩、家の庭で花火をします。良ければ見に来ませんか?』
『ハナビとは何だ?』
けげんそうに聞く。あ、やっぱり知らないんだ。そのときシュリーアが、
『もうすぐ到着されます』
と知らせてくれる。私は慌てて伝えた。
『見てもらえばわかると思います。夜、お待ちしています』
『わかった。ならばその時に来よう』
二人は以前と同じように天井を突き抜けて帰って行った。それを見送り、しーちゃんに声をかけようとした時に母さんが戻ってくる。そして、
「ごめんなさいね。職場から連絡があったのよ」
と申し訳なさそうに言う。……あれ、職場?
「今日学校って休みだよね?」
不思議に思って聞くと、
「それがね、若い子たちは仕事が終わらないからって休日返上で学校に来て仕事してるの。急がなくていいって言ったんだけど……」
と苦笑してため息まじりに言った。するとしーちゃんが、
「お休みはしっかり休むのが仕事なのにねー」
と訳知り顔に言った。……良かった。そんなにひどい思念酔いじゃなかったみたい。顔色も元に戻っている。
すると母さんもくすりと笑って、
「それがね、仕事が残っていると思うと気になってゆっくり休めない、って言うの。しっかりと仕事を終わらせてからお休みを満喫したいんですって。さ、この話はもうおしまい。二人とも気に入った花火は見つかったの?」
と聞いてきた。私たちは途端に、うわっ、やばっ、と声を出して、大慌てで品定めを始めた。「大体しーちゃんがあんな大きな打ち上げ花火したいって言うからー」と私が言えば、しーちゃんは「花火は女のロマンだよっ」と良くわからないことを主張してきたりして、相変わらずわちゃわちゃ言いながら、無事に手持ち花火をゲットすることが出来た。
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それではまたお会いしましょう。
皆様に、風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。




