59 二度目の遭遇
二人と遭遇したのは意外な場所。
ですが、すみません。出会っただけで終わってます。
修整しました。05.5.2
「しーちゃん、昨日調べてた実験の方法を相談しようよ」
私がそう言って誘うとしーちゃんは、コップの中の氷をストローでがしがしかき混ぜながら、
「ああ、あの小麦粉とかココアパウダーを使うやつ?」
とつまらなそうに言うと、腕を組んで、むーん、とうなり出した。あ、嫌な予感。
しばらくすると突然、がばっと手をほどき、テーブルにでんっと両手をつくと、
「やっぱり実物でやってこそ……」
「あ、それは却下」
同意を求めてきたしーちゃんを問答無用にばっさりカットした。
「何でええぇぇ?」
ちょっと涙目になってすがりつくしーちゃんのことは放置し、おばさん達に向き直ると、
「あのね、昨日おばさんに地層の話を聞いてから考えたんだけど……」
自分が考えた実験の方法を話した。最初しーちゃんはストローをくわえてみたり、意味もなくグラスの中をかき混ぜたりしてすねてますアピールをしていたけれど、聞いているうちにどんどん目が輝いてきた。そして、
「それ、スッゴくいいっ!! さっすがれーちゃん、あったまいいっ!!」
と大興奮状態になった。テーブルに両手をついてピョンピョン飛び上がるしーちゃんを、慌てておばさんが止める。
「なるほどねぇ。地層を再現してみよう、っていうのはいい着眼点だと思うわ」
よしっ、母さんに誉められた。おばさんも、
「あら、それは面白そうね」
と言ってくれる。いい感じ、ふふん。そんなふうに実験の相談をしながらメロンサンデーを食べ、幸せな気分でファミレスを出た。
おばさんを家に送るとホームセンターに寄った。実験に必要な物を探しながら店内を巡る。と、母さんが、
「せっかくだから花火も買って帰りましょう」
と言ったので、花火コーナーへ向かう。そこにはたくさんの花火がところせましと並べられている。母さんが、
「庭でするから、あまり派手なものは選ばないでね」
と注意した。しーちゃんが目をキラッキラさせながら、興味津々にでかい筒型の花火を見ていたからだ。値段をみてびっくりした。え、一個で○千円って。
そのとき母さんの携帯の着信音が鳴った。画面を見た母さんが眉をひそめる。
「あなたたち、ちょっと離れるからここで花火を選んでいてくれる?」
そう言うと入口の方へ携帯を耳に当てながら向かっていく。仕事の電話かな?
しーちゃんを見ると、まだじーっと大型花火を見ている。
「買えないよ」
と声をかけると、
「わかってる」
目がくぎづけのまま答える。しかたなくもう一度、
「だから買えないよ」
と言うと、
「気にしないで。面白いだけ。こんなに大っきな花火が普通に売ってるんだって思って。ね、ね、どんな風に見えるのかなっ。そうだれーちゃん。これだけ買ってって言ったら……」
わくわくしながらこちらを見てくる。いや、無理だから!
「しーちゃん、ここ見て。離れた場所から見てくださいって書いてるでしょう? うちの庭、そんなに広くないから無理だよ」
やっぱりかー。むーん、残念ー。とまだぶつぶつ言っているしーちゃんの手を力ずくで引っ張ってその場から連れ出した。これ以上暴走されるとまた手に負えなくなるよ。手をつないだまま普通の花火のパックが置いてある場所に移動し、
「ここから選ぼっか」
と声をかけると、
「ちっ。地味なのしかないじゃん」
不満顔だ。
「でもさ。ほら、途中で色が変わるのとか、これなんか星が飛び出すって書いてあるよ。これなら面白そうじゃない?」
しーちゃんの気を引こうと必死にいろいろ探しては声をかけていると、ふいに、
『この国では火器を一般の商店で販売しているのか?』
と頭の中に響く声がした。
「え!?」
「わっ!?」
きょろきょろ辺りを見回すと、すぐ後ろに花火を見つめる二人がいた。レイアーナは眉をしかめ、顎に手を添えている。シュリーアはレイアーナより半歩ほど後ろにいて、柔らかい笑みを浮かべながら興味深そうに花火の棚を見つめている。目が合うとシュリーアがにっこりとしながら口を開いた。
『 ご機嫌よう。三日ぶりですわね』
びっくりしたー。どきどきする胸を押さえていると、すっとレイアーナが近づいてきて、以前と同じように私の腕に自分の腕を重ねる。それから、
『そなたらは火器の方を向いて選んでいる振りをしていろ。付添人が戻ってくるまでに手短に話そう。レナはシーナの手を離さぬように』
シュリーアがしーちゃんの腕に自分の手を重ねるとレイアーナが静かな声で言った。
『そなたら、協力者になる覚悟は出来たか?』
私はまだびっくりから回復していなくて、慌てて考える。どうすれば、いい? ……焦って考えがまとまらない。おたおたしている間にしーちゃんが、
『ちゃんと二人で話し合ったよ。あたしたち、協力者になる』
とあっさり伝えた。レイアーナがふっと笑う。
『そうか』
『だけど、』
しーちゃんが続ける。
『いろいろと聞きたいことがあるから、時間が欲しい』
するとレイアーナが、
『ふむ』
と言いながら顎を引く。
『シュリーア。先程の者を見張っていてくれ』
『分かりました』
レイアーナの指示で、すうっとシュリーアが上に浮かんでいく。
『いつなら良いのだ?』
『夜なら。今日はしーちゃんが私の家に泊まるので、部屋で話せます』
『いいだろう。では、また夜に来よう。思念波は集まっているか?』
最近週末アクセスが増えてとても嬉しいです。読者の皆様、いつもありがとうございます。
ここまでのお話をちょこちょこ修正しています。話の内容に大きく関わるような変更はしていないので、特に読み返していただかなくても大丈夫です。
それではまたお会いしましょう。
熱中症にはお気をつけください。
オリンピック日和。台風が気になりますが。
皆様に風の恵みがともにあらんことをお祈りいたします。




