58 空気読んでみました
季節が追いついて来ましたね。
まだまだ二人のアツイ夏は続きます。
修整しました。(05.4.30)
そこからは快進撃の始まりだった。他の見学者に混じって存分に古代ロマンを堪能し、感情が揺れる度にすかさず受容体に吸収させる。どれだけ感動しても、溢れ出る思念波は受容体が吸収してくれる。ある意味感動し放題。あっという間に説明会は終わり、私は心地よい疲れを感じながら会場を後にした。
しーちゃんは当てにしていたお宝大発見報告が、写真と映像だけだったのでちょっとがっかりしていた。一部の宝飾品は現物展示もあったけれど、肝心の大物遺物(冠とか鎧など)は調査中ということで、展示されていなかったから。
発掘現場では出土品の説明と、実際に発掘する様子が見学出来た。松永さん達が穴の中で説明に合わせて作業して見せている。途中で目が合うと、にっこりと笑ってくれた……ちょっとかっこいい。連日の発掘作業ですっかり日に焼けてたくましくなったみたい。うん、やっぱりかっこいい! 埴輪はまだまだ発掘出来そうなので、引き続き調査を続けるという説明だった。
ちなみに父さんはスタッフの一員としてその場にはいたけれど、説明は博物館の学芸員さん達がしていた。うん、正解だと思う。父さんには悪いけど、説明が専門的すぎて普通の人はさっぱり分からないと思うもん。
私としーちゃんは思念波を集めまくったことで満足感に包まれていた。私たち、やりきった。
その後近くのファミレスに移動し、ランチタイムになった。
ドリンクバーで冷たいメロンソーダをくんできて、一気に流し込む。汗をかいた身体がすうっと冷えていく感じがたまらない。すかさずおかわりをして一息つく。ああ、ファミレス最高。
オーダーしてしばらくは説明会の話で盛り上がった。
母さんは今日が初めてだから、冠や鎧なんかを見られなかったことを残念がっていた。
私たちもすべての実物を見たわけじゃない。それでも現場にいて、説明してもらった強みがある。何よりも古墳の中で実際に見た経験は、百聞は一見に如かずだ。
私としーちゃんは代わる代わるその話を夢中で話した。家では父さんがしゃべりまくるから、自分で話す隙が全くなかったのだ。……つい古代ロマンに意識を持っていかれてしーちゃんにしばかれながらも、楽しく話に花をさかせた。
暑い中を移動した分お腹も空いていたので、お昼のハンバーグランチは本当においしかった。ファミレスのハンバーグって、あの鉄板の上でじゅわーっと焼けて肉汁がしみだしてくる感じがたまらない。付け合わせのほかほかお野菜も、ハンバーグのソースをからめて食べると、お肉の旨みも一緒に味わえてよりおいしく感じられる。
このファミレスにはサラダバーがついていて、自分で好きなように取って来て食べることが出来る。私は糸みたいに細くカットされた人参と大根をレタスの上にトッピングし、プチトマトときゅうりで周りを飾り、ブロッコリーを添えてその上からシーザードレッシングとパラパラのオニオンフライをかけた。カリカリのオニオンがシーザードレッシングのさっぱりとしたところにアクセントになって、いくらでも食べられそうだ。ブロッコリーにちょっとつけて食べると。うーん、最高。
私たちがランチを堪能していると、母さんが言う。
「あなた達、今日は少しお腹を残しておくのよ。後でデザート頼んであげるから」
一瞬、夢かと思った。何、この贅沢気分は。……はっ、ひょっとしたら何か裏がある!?
私が警戒した目で母さんを見ると、ため息をついて言った。
「ここでないと全員で話すことが出来ないもの。あなた達を放っておいたらどんな無茶するかわからないし。報連相は大事よ」
目を合わせてきてきっぱりと言われた。隣でおばさんもうんうんと力強く頷いている。無言の圧力に、思わずごくりと喉をならした。
……ん? でも、ちょっと待って。私、無茶してる?
確かにしーちゃんと二人でいろいろやらかした自覚はある。でも、自分から騒動の種をまいたことはない。いつもしーちゃんのパワーに押しきられて巻き込まれているだけだ。私、無茶なこと、自分からはしてない!
そう思って抗議をしようと口を開いたら、すかさず母さんに、
「一緒にやってるってことは、怜奈も同じよ」
とばっさり切られてしまった。
── それ、誤解だからー!!
心の中で大きく叫んでいると、しーちゃんが、
「ほうれん草? ……のデザート??」
と言って、こてんと首をかしげる。
思わず机に突っ伏した。
母さんがくっくっとお腹を押さえて笑っている。ツボにはまったみたい。おばさんもあきれた顔で苦笑していた。
母さんが、報告、連絡、相談のことだと説明すると、しーちゃんは、ああそっちね、とけろっとしている。そして、
「んで、何のホウレンソウ?」
不思議そうに聞く。
「宿題に決まってるでしょう!!」
「自由研究のことよ!」
母さんたちの声が被った。思わずおばさんが頭を抱えている。そして、
「守川さんごめんなさい。出来の悪い娘で。……詩雛、お泊まり止めて帰るわよ」
おばさんが低ーく冷気の漂う声でしーちゃんに言う。
「え? 何で?」
しーちゃんはきょとんとしている。うん、見事に自覚していないよね。……あ、おばさんのこめかみに青筋が。
せっかくのお泊り会がなくなったら困る。うん、ここは話題転換だねっ。
時間軸は数年前の設定ですが、夏の暑さは変わらないですよね。皆様も熱中症にはお気をつけください。
はじめましての方、先の長い物語ですが、これからもよろしくお願いいたします。
再読の方、いつも本当にありがとうございます。皆様の応援が改稿の励みとなっています。頑張って終わらせます!
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それではまたお会いしましょう!
皆様に、風の恵みが共にあらんことを。お祈りいたします。




