53 説明会に行こう
新章に入りました。
修整しました05.4.20
目が覚めてもしばらく目を閉じていた。なるべく覚えていたかったから。
ここ数日、必ずレイアーナさんの(レイアーナ姫って呼ぶ方がいいのかもしれないけど)記憶としか言いようのないものを夢で見ている。
今日は二人が空からパリに向かい、ホッチキスの芯みたいな形の変わったビルの窓を通り抜けて、その部屋にいた栗色のくるくるした髪の男の人に『ミシェル』と声をかけていた。あの男の人がChatterの掲示板を作った人なのかな。松永さんと同じくらいの年の人だよね。でも、もう働いてるみたいだ。IT 関係の仕事かな? たくさんの大画面に囲まれて、キーボードをものすごい速さで打っていた。
レイアーナが声をかけたところで終わってしまって、ミシェルがどんな顔をしているのかはわからなかった。うーん、ちょっと残念。
目をパチリと開けて、よしっと気合いを入れる。ベッドの上でうーんと伸びをした。ちらりと外を見ると、昨日の雨が嘘のように晴れ渡っている。絶好の説明会日和だ。
今日は、あの二人との会合の日でもある。うう、緊張するな。それからしーちゃんのお泊まり会。こっちは楽しみすぎるっ。
ベッドからぽいっと出て着替える。
説明会には母さんの車で行くことになっている。父さんは準備があるから先に出るって言ってた。もう出かけちゃったかな? 今日は発掘するわけでも古墳の中に入るわけでもないから、普通にカジュアルな服をチョイス。
衣装タンスからクリーム色のキュロットスカートと、空色に虹色のプリント文字の入ったTシャツを選んだ。後はUVカットのうす青チェック柄のブラウスを用意して、御守り袋をスカートのポケットに入れれば準備完了。
とんとんとんと足音も軽く階段を降りて洗面所に行き、さっと顔を洗って身だしなみをチェックする。と、げっ、寝ぐせが左右両方にぴんぴん出ている。髪の毛をいじるのが面倒だから短めショートカットにしているのに。
この髪の毛は太くて量が多いらしくてヘアサロンでカットする時に毎回梳いてもらっている。でもそのせいかちゃんと乾かしてから寝ないと、寝ぐせがついてしまう。慌ててスプレー式のスタイリング剤を吹きかけて、ドライヤーで軽くブローする。
よかった。収まったー。
再度鏡でチェックしてからリビングに入ると、父さんがダイニングテーブルでアイスコーヒーを飲んでいた。片手でスマホを操作しながらテレビのニュース番組もチェックしている。器用だな。
「おはよう、父さん」
声をかけるとぱっと顔を上げ、三割増しくらいのにっこり笑顔で、
「おはよう怜奈」
と言った。これは、あれよね。今日の説明会のことで朝からテンション高め、ってことだ。思わず、うっとなって若干引いてしまったのは責められないと思う。
「ん? どうした?」
父さんが不思議そうに首をかしげているけれど、それでも嬉しいオーラが出ている。た、楽しみなのはいいことだ、よね? この状態の父さんをへたにつっつくとまた十八番の研究談義が始まっちゃう。よし、ここは話題転換だ。
「父さん、説明会って何時から?」
すると、待ってましたとばかりに前のめりになって話し出す。しまった、チョイスミスしたかも。
「十一時からだよ。その後、十三時と十五時にもする予定だ。博物館の開館が10時からだからね。そこから移動してもらうことを考えて、少し余裕のある時間に始める予定だなんだ。一昨日のテレビがいい宣伝になっているはずだから、今日は忙しくなるんじゃないかな」
うーん。テンションがさらに上がっている気がするよ。これは、止まらなくなる予感っ。
「怜奈、おはよう」
そのときナイスタイミングで母さんが台所から声をかけてくれた。
「母さんおはよう。何か手伝うことある?」
すると父さんが、
「怜奈は優しいねえ。自分から手伝おうって言ってくれて」
とうんうん頷きながら喜んでいる。
── 父さん、残念だけど違うから。
これも宿題のため。そのままいつも通り父さんのことは放置して台所に向かう。
「怜奈、今日は朝ごはんを食べたら部屋の掃除をしなさい。家を出るのは急がないから、しーちゃんが泊まれるように綺麗にしておかないと。母さんは布団を出して、怜奈の部屋で乾燥機かけるから」
昨日天気が悪くて布団を干せなかったから、布団乾燥機で湿気なんかを飛ばすらしい。私はあんまり散らかす方じゃないと思うけれど、しーちゃんが気持ちよく過ごせるようにはしたい。
テーブルにつくと母さんが朝食の準備をしてくれる。
今日の朝食はベーコンエッグとイチゴジャムトースト。それにバナナとリンゴのスライス入りヨーグルト。目玉焼きは大好きな半熟だ。
父さんはアイスコーヒーを飲み終わると、グラスを母さんに渡して慌ただしく出かける用意をする。玄関に向かう前に、
「じゃあ、向こうで会おう」
と、とてもイイ笑顔で言って出かけて行った。
おいしい朝食をゆっくり食べると、掃除機を持って自分の部屋に戻る。空気を入れ替えようと窓を開けたら、むわっとした熱気と湿気が襲いかかって来た。一瞬速攻で閉めかける。
今日も蒸し暑くなりそう。父さん、熱中症にならないといいな……。いや、なってもテンション上がってて気付かないかな?
そんなどうでもいいことを考えながら掃除機をかけ始めた。
怜奈視点に戻りました。ようやく普通にしゃべれます。(笑)
今回から転の部分に入ります。
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明日はコラボの更新日となっています。今回のコラボではしーちゃんの人物紹介(イラスト付)がありますよ!
れーちゃんは次章に登場します。
「しーちゃんが行く!~絶望の箱庭~鳥籠の姫君~のワールドエンドミスティアカデミーにお邪魔しました!」
はこちらからどうぞ
https://ncode.syosetu.com/n0156hr/
それでは、またお会いしましょう。
皆様に、風の恵みが共にあらんことを。お祈りいたします。




