49 受容体の複製
もう少し、レイアーナ視点続きます。
次回、50話になります。
39話~42話に加筆修正を行いました。話の流れに影響はありませんが、より読みやすくなったと思います。(21.6.28 PM13時)
加筆修正しました(22.4.26)
更に加筆修正しました(23.3.24)
「シュリーア」
呼びかけると驚いたように目を開ける。
「お帰りなさいませ、御姉様」
シュリーアはゆっくりとならば話せるようになっていた。
「お戻りに気付かず、申し訳ありません」
眉を寄せて言うのに柔らかく首を振る。
「良い。そなたが集中していたから声をかけなかったのだ。……受容体をうまく分割出来ないようだな」
気遣いながら言うとシュリーアが唇を噛んだ。
「……はい。主核を思念波で満たすところまでは出来たのです。けれど受容体に思念波を集めてみてもうまく分割することが出来ず……」
ふう、とため息をつき、目を閉じると再び試している。だが、受容体は分割されない。力のかけ方がまずいようだ。
「思念波を動かすのに苦労はないか?」
そう問うと、シュリーアが柔らかく笑む。
「お気遣いありがとう存じます。最初は苦労しましたが、今は慣れました。思念波を動かすだけなら大丈夫です」
「そうか」
少しほっとして口元に笑みが浮かんだ。ふむ、ならば簡単なアドバイスですみそうだ。
「では、主核の受容体に、中の思念波で圧力をかけつつ、補助核の受容体から思念波を一気に流し込んでみろ」
「……やってみます」
シュリーアは再び目を閉じると、意識を集中させる。幾度かの試行錯誤の後、遂に受容体を分割することに成功した。シュリーアの主核の中に二つの煌めきが見える。
「……出来ました」
シュリーアの口元が震え、目にうっすらと涙が浮かんだ。
「良くやった」
ねぎらいの言葉をかけると、落ち着くのを待ち次の指示を出した。
「では、分割した受容体を一度外に押し出せ。先程と同じように周囲の思念派で圧力をかけ、主核の外壁に寄せろ。受容体が外壁に触れたらそこで一気に思念波を流し込み、勢いをつけて押し出すのだ」
「やってみます」
力強く言ったシュリーアが眉間に力を込める。するとゆっくりと分割された受容体が主核の外壁に近付いてきた。外壁に触れたところでさらに思念波を流し込むと主核の中の思念波が力強くうねり、無事外へ押し出された。
薄青い光をまとった受容体がシュリーアの主核の前に浮かんでいる。
「……出来ました」
シュリーアの口元が緩み、少し眩しそうに分割された受容体を眺めている。微笑ましく思いながらもすぐに次の指示を出す。
「では、外に出した受容体を補助核に移せ。そうすれば補助核が機能するようになる。これで主核がある程度満たされれば、自動的に補助核に思念波が流れるようになる。手元に残っている思念波を吸収させてしまえば今回のミッションは終了だ」
シュリーアが補助核に受容体を移し、残りの思念波を吸収させていく。思念波の流れを感じ取っている様子も見受けられた。
「よく頑張ったな」
そう声をかけるとゆっくりと顔を動かし、目を合わせてくる。達成感からか頬が少し赤らんでいる。
「御姉様のご指導のお陰です。ありがとうございました」
「疲れたであろう。……私は一度休息する。そなたも休め」
その言葉を聞くとシュリーアもすぐに目を閉じた。
休眠から目覚めるとすぐに日課を始める。鍛錬、巡回、確認……いつも通りこなしながら考える。
次のミッションはシュリーアに受容体を作らせることだ。
……しかし。乗り越えられるだろうか。
ここには予備の思念石などない。本国でもそれを手に出来るのは限られた者だけだ。だが、シュリーアがイルラを得られれば、格段にミッションの遂行は早まる。
「シュリーア次第、だな」
しばらくするとシュリーアも目を覚まし、同じように日課をこなし始める。その様子を見守りながら確認する。
どうやら無事に補助核も機能しているようだ。日課を済むのを待ち、声をかける。
「シュリーア。次のミッションだが……」
思わず言葉を濁しそうになり、自分を自嘲する。
── ここまで来て何を躊躇うことがある? いかに残酷なことであったとしても、やらねば前には進めぬ。他に有効な方法はないのだ。
目を閉じ、自分を叱咤すると無理やり意識を切り換えた。目を開けると淡々(たんたん)と切り出した。
「これから複数の受容体を作成してもらう。見本を見せるので付いて来なさい」
思念体になるとコントロールルームを出る。少し遅れてシュリーアが続く。移動を始めると何も知らぬシュリーアが話しかけてきた。
『御姉様、新しいイルラは見つかったのですか?』
『ああ、無事に二人目のイルラを手に入れた。そのうちそなたにも紹介しよう』
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それではまたお会いしましょう!
皆様に、風の恵みが共にあらんことを。お祈りいたします。




