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古墳に入ったら異世界の姫様の協力者にされちゃったので、精霊を仲間にして日本を救います!─ We are enlisters. Save the princesses of Emulia. ─   作者: まりんあくあ
地球編4 第四章 レイアーナ視点 イルラ ミシェル

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48 二人目のイルラ

二人目のイルラの登場です。

そして、最初の記憶消去者が……。


加筆修整しました

(23.3.20)

 月を目指し上昇を続けながら思い返していた。


 ニューヨークは驚くほど人の数が多く、人も建物もひしめきあっていた。空を突く高層建築物の数々、交差点を埋め尽くす人の波。深く入り込んだ湾の周囲に、所狭しと多くの人の営みがあった。


 あれで首都ではないというのだから驚きだ。本当にこの星はアレトと並行世界にあるとは思えないほど異種の発展の仕方をしている。


 私はミシェルに教えられた通り高層建築群の中心ともいえる、マンハッタンという場所へと降下していき、その建築物の一つに事務所を構える壮年そうねんの男性をイルラにした。

 野心家の彼は多くの支持者を持つ、下院議員だと言っていた。ジョンソンという名前のその男は、くすんだ金色の髪に濃い灰色の目をぎらつかせた目付きの鋭い男だった。がっしりした体つきで、黒に近い灰色のスーツをぴしりと着こなし、小さなダイヤの付いたピンで止めたワインレッドのネクタイを締めていた。


 彼は初めこそ驚いていたが、思念波に利用価値があると気付いてからは貪欲どんよくになり、最初はネクタイピンのダイヤを差し出していたのが、受容体を飛ばす段になって、急遽きゅうきょふところから懐中時計を取り出し、そのふたに付いていた大きなダイアモンドを思念石とした。思念石を得た興奮を全て吸収される頃には、ジョンソンの瞳は猛禽類もうきんるいのものと同じ光を宿していた。


 ジョンソンの強い想いは私の思念石にも届くほどで、本当に驚いた。彼とは三日後の再会を約束し、その場を後にした。彼がどれだけ思念波を集められているか、非常に楽しみだ。




  ニューヨークという街は想像以上に広く、人も多い。それゆえ他にもイルラを得られるのではないかと広い交差点に行ってみた。


 そこでシェルティと名乗る女優志望の女性と出会い、受容体を渡してみた。金茶色のゆるくウェーブのかかった髪を背中に流し、青灰色のくっきりとした瞳の勝ち気な女性だった。細い身体にぴたりと沿うクリーム色のワンピースにヒールの高い銀色のパンプスがよく似合っていた。ターコイズのペンダントをアクセントに身に付けていたので、それを思念石にした。彼女はこの後恋人に会うというので、ジョンソンと同じ三日後の再開を約束し別れたのだが、帰還しようと上昇を始めた途端、悲痛な思念波が届いた。


 戻って見ると、泣き叫びながら男と大喧嘩おおげんかをしているところだった。相手の男とは結婚間近だと幸せそうな顔で言っていたのだが、どうやら彼は本気ではなかったようだ。


 明るい茶色の髪を短く刈り上げ、くっきりとした形の良い眉の下、灰色の瞳があざけるように彼女を見下ろしていた。真っ青な半袖シャツの首元にサングラスを引っ掛け、黒のデニムのポケットに片手を突っ込んでいる。

 その男の前でパニックにおちいっていたシェルティは、私を見つけると一気に男の所業をまくし立てた。心底彼女が愛しいという顔でペンダントをめ、それを手に取った瞬間、彼の考えていることが伝わってきたそうだ。


 口では「綺麗きれいなペンダントだね。君に良く似合っているよ」と甘い顔で言いながら、『相変わらず安物しか身に付けてねー女だ。だが見栄みばえだけはいいからお楽しみには丁度いい。もう少し付き合ってやるか』という本音が聞こえたそうだ。


 泣き叫びながら男の悪口をわめき散らす彼女にも閉口したが、何よりも人目のある大通りの片隅で、多数の目があるにも関わらず姿の見えない私に向かってわめき続ける彼女は狂人にしか見えなかっただろう。

 男も都合良く彼女を放置して逃走を図っている状況じょうきょうだった。


 私は事態を収拾するため、仕方なく受容体を回収すると同時に彼女の記憶を回収し、思念石に触れたことで感知出来た男の思念も記憶ごと回収した。

 記憶を消去された二人は、その後何事もなかったかのように、今出会ったという風で仲睦なかむつまじい様子を見せ始める。


 一時観客となっていた通行人達は二人を奇妙に思っただろうが、彼女らの知り合いでない限り記憶に残る程のことではないだろうから問題ないだろう。

 何よりも当の本人達は記憶そのものを失くしている。本人達にとって先程の騒動はなかったことになっている。今後あの二人がどうなろうと私には関係のないことだ。


 記憶の回収は多少面倒ではあるものの、結果として強い思念波を得られたので、良しとしよう。




 その後は何事もなく宇宙空間に到達し、そのまま艦へと直行した。


 シュリーアは既に戻って来ており、身体に思念体を戻した状態で何とか主核の受容体を分割しようと苦戦しているところだった。手元にある受容体にはまだ多くの思念波がまとわりついている。


 こちらも計画通り進んでいるようだ。様子を見守りつつ思念体を身体に戻し、吸収してきた思念波を補助核に流し込んでいった。今回の回収でようやく補助核の三割程が回復した。……まだまだ先は長いな。 

 だが、ここまではおおむね計画通りに進んでいる。


 ── 後は、シュリーア次第だ。


 ゆっくりと体を起こし、シュリーアの様子を観察した。シュリーアの主核は満ち、中で受容体が時折明滅する。主核の中の思念波が受容体に集まっては霧散するのを繰り返しているようだ。


 ── そう簡単には行かぬか。


 苦戦するシュリーアに声をかけた。

 二人目のイルラが登場しました。これからどんどんイルラが増えていきます。アレト帰還へはまだまだかかりそうです。


 はじめましての方、ここまで読んでいただきありがとうございます。再読の方、いつも本当にありがとうございます。改稿頑張って終わらせます!



 面白いな、続きが気になる!っと思っていただけたら、ずーっと下の方にある⭐️をポチポチポチっと押したり、ブクマ、いいねで応援してください。


 感想もらえるとまりんあくあが大喜びします。レビューいただけると、変な舞いを踊って喜びます。


 それではまたお会いしましょう。


 皆様に、風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 二人目のイルラ登場。 しかし中々簡単には事は進まないようで! シュリーアも焦りと困惑が。 続き楽しませていただきますฅ(´꒳`໘̳)ꪆ。
[良い点] レイアーナ視点で突風のように並べられる人々が、それぞれに人生や思いがあって面白かったです。そして、やはり別世界ということで、少し淡白なレイアーナのスタンスも改めて見られて、そこもまた味があ…
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