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古墳に入ったら異世界の姫様の協力者にされちゃったので、精霊を仲間にして日本を救います!─ We are enlisters. Save the princesses of Emulia. ─   作者: まりんあくあ
地球編4 第四章 レイアーナ視点 イルラ ミシェル

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45/194

45 アレト帰還計画1 シュリーアの育成

 アレト帰還計画。より思念波を集めるため、シュリーアを鍛えます。


読みやすくするために、少し加筆修正しました。

(21.6.25)

更に加筆修正しました。

(23.3.11)

 見送るとすぐに次の計画を確認した。それからしばしの休息を取ろうとしていると、すぐにシュリーアが帰還してくる。


 ── む? 地球をニ周してくると言っていた割には随分ずいぶん早い帰還きかんだな。


「シュリーア。何かあったのか?」


 そう問いかけると不思議そうにほおに手を当て、軽く首をかしげる。


『御姉様、ただ今戻りました。……いえ、特に変わったことは御座いません。こちらの母星をきっちりとニ周して思念波を回収して参りました。施設内の者にも気付かれた様子はありませんでしたが……何か御座いましたか?』


 そこで、はっと気付いた。思わずふと自嘲じちょうしてしまう。


「……いや。何もない。私がこの空間の特異性を失念していたのだ」


 すると得心がいったようで、ああ、とつぶやいた。


『わたくしも船内で思念波の取り込みを行い、再度あちらの世界へ戻りました時に驚きました。研究施設の移動速度を計算して向かったのですが、ほとんど変わらない位置にありました。本当にこの空間では時が止まっているのだと実感いたしました』

「うむ。私も理解していたつもりなのだがつい失念した。一人で行動していた時はさほど違和感を感じていなかったのだ。……だが、お陰で確信が持てたぞ」


 知らず口元が引き上がる。


『確信……ですか?』


 シュリーアが思念体を身体に戻し、問うのに答える。

 

「ああ。この空間にいる間は時間が止まっているという確信だ。ここから抜け出し、我らの世界に戻った時、向こうではほとんど時間が経過していないだろう。我らがこの空間を抜け出せば、まさしく元の状態から始められるということだ」


 朗報ろうほうだ。気付くと右手を強く握りしめていた。身体中を喜びが駆けめぐる。まだ勝機はあるのだ。


 一度目を閉じ、気持ちを切り替える。あせる必要はないと分かっても気持ちがく。落ち着け。思念核にあふれた思念波を吸い込ませると目を開いた。


「シュリーア。次のミッションに進むぞ」


 受容体を一つ手渡す。


『これは、受容体……ですか?』

 

  いぶかしげに問うのにうなずく。


「そうだ。私の作成したものだからそなたの思念波には少し馴染なじみにくいかも知れぬ。その受容体に今収集してきた思念波を注ぎ込め」


 シュリーアが思念体の手を出して受け取りながら、戸惑とまどった様子を見せる。この反応は当たり前だ。学院を出たばかりで、受容体を知っているだけでもよく勉強していることが分かる。受容体だけを目にすることなど普通ならばありえない。手の上で薄青く光る受容体をじっと見つめていたシュリーアが言う。


『かしこまりました。……ですが、この受容体は一体?』

「質問は後だ。先ずはやってみろ。私の思念波はすでに抜いてあるが、抵抗ていこうはあるかも知れぬ。もしも抵抗を感じたら、それを破るように一気に思念波を流し込め」


 有無うむを言わせず指示すると、まだ疑問に思っている様子ではあったが、


『やってみます』


 と言うと、受け取った受容体を両手で抱え込むようにして持ち、そこに取り込んできた思念波を流し込んでいく。

 最初はやはり抵抗があったのか、眉を寄せて力を込めている様子だったが、一旦いったん流し込めるようになると落ち着いた表情になった。ここまでは上手くいっている。


 やがて、


『終わりました』


 と言う声が聞こえた。その様子に少しほっとしながらも続けて指示を出す。


「よくやった。では次に、既に主核に取り込んである思念波も同じように移し替えてみよ」


 シュリーアは言われた通りに主核から思念波を送り出そうとしたが、うまくいかないのか眉を寄せる。う、と声を出しながらも何度か試しているが、思念波が流れる様子は見られない。


── 主核から思念波を取り出すイメージが難しいか。


 しばらく見守っていたが、眉間みけんしわを寄せ、動きを止めたところで声をかけた。


「シュリーア。やり方は先程と同じだ。先ずは主核の中の受容体を意識し、主核内にある思念波を受容体に集める。それから再度、その思念波を手の中の受容体に流し込むのだ」

『わかりました。やってみます』


 そう言うと何度か試行錯誤しこうさくごした後、無事に思念波を移動することが出来るようになった。

 思念波の流れが止まるのを待ち声をかける。


「まだ続けられるか?」


 するとかすかにうなずいて見せる。そこで再び指示を出す。


「では、今移動させた思念波をもう一度主核に戻せ」

『はい』


 何を指示されているのか分からないままにも、素直に指示に従ってもらえるのは助かる。……さて、どのような反応を返す?


 その直後、シュリーアの目が驚きに見開かれた。


『御姉様。これは一体……』


 我が妹は優秀なようだ。些細ささいな思念波の違いに気付けるならば、この先の学園生活が実りあるものになるはずだ。思わず口元がゆるんだ。その瞬間妹の体がぴくりとふるえたように見えたが、表情には何も現れていないのでそのまま説明を始める。


「一度受容体を経由けいゆしたことで思念波が濃密のうみつになったのだ。普段ふだん我々が身近に感じている思念波は、一度既に受容体や思念石に取り込まれ濃縮されたものだ。しかし、あちらの世界には思念石そのものがない。ゆえに思念波の放出は我らの世界に較べ非常に多いが、雑多ざったで感情の起伏きふくによる個体差が大きい。それゆえにエネルギー変換率がバラバラで取り込んだ後もそのままではムラが残っていたのだ」


  シュリーアは目を閉じ、思念波の流れを確認しているようだった。やがて目を開けると言う。


『違和感の原因が分かりました。宇宙ステーションで取り込んできた思念波は、取り込むのは簡単でしたが、何というか……主核の中に納まった時にどこか隙間すきまが空いているような感じがしていたのです。ですが一度受容体を経由させたものはその隙間がなくなり、主核の中でもまとまっている感じがします』

「元の状態に比べると、どうだ?」


 すると軽く眉を寄せ、主核に意識を集中させているようだ。ここまでの育成計画は上手くいっている。この試験にクリア出来るかが次の計画を進めるための重要な布石ふさきとなる。注意深く観察しながら様子を見守る。


『御姉様。わたくし……』


 一瞬辛そうな表情を見せたが、ぐに何事もなかったように続ける。


『この空間に隔離かくりされることになったあの事件後、サークレットにはまだ思念波がわずかながら残っていました。その思念波はそのまま主核に残し、収集してきた思念波を再吸収に回したのですが……上手く説明出来ないのですけれど、質が違う気がします。アレトで蓄積ちくせきされていた思念波は均一きんいつで、それだけで一つにまとまっている感じがします。ですが……こちらの世界で吸収した思念波にはまるで統一感がなく。濃い部分とそれ程でもない部分が混在している感じがいたしました。ですが……力の大きさで較べるならば、今回集めた思念波の方が圧倒的に強い気がします』


 うむ。合格点だ。さすがは我が妹。これならば充分な戦力となってくれるであろう。


 次の段階へいざなおう。


 


次回でシュリーアも降下する準備が調う…はず!

それでは、またお会いしましょう。


はじめましての方、ここまで読んでいただきありがとうございます。長い物語はまだ動き始めたばかりです。四人の物語をこれからも追っていただければ幸いです。


再読のかた、いつも本当にありがとうございます。とても励みになっています。頑張って早く続き書けるように進めますので、引き続き応援よろしくお願いいたします

m(_ _)m


皆様に風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。


本編開始前のストーリー


「しーちゃんが行く!~絶望の箱庭~鳥籠の姫君~のワールドエンドミスティアカデミーにお邪魔しました!」


を更新しました。


怜奈と再会する前の詩雛が主人公の物語です。初めての学園訪問もいよいよ終盤です。よろしければこちらも追いかけていただければと思います。


 https://ncode.syosetu.com/n0156hr/



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― 新着の感想 ―
[一言] まりんあくあ様おはようございます! そして続きを拝読させていただきました。 レイアーナと妹シュリーア! 受容体の研究は続く。 この世界における受容体の回収! 次話をお待ちいたしております૮(…
[良い点] レイアーナさんは厳しいですが、計画を着実に進めていますね。シュリーアは従順に頑張っていて応援したくなります。入学前なので学ぶことが多くて大変そうですね(^-^; 学校でゆっくり勉強できたら…
[良い点] 時間が止まっているのが確信できて、ゆっくり作戦を進められるのは本当によかったですね(*'▽'*) 思念派を受容体から出したり入れたり。アレトの人でも誰もができるわけじゃないんですね。想像力…
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