43 イルラ ミシェルとの会話 3
ようやく終わりが見えて来ました。
一回目の会合は、たぶん次回で終わると思います。
加筆修正しました。(22.4.19)
大幅に加筆修整しました。(23.3.4)
ミシェルが真面目な顔で聞いてきたので正直に答える。
『そなたが一人目だ。ミシェル、そなたに頼みたいことがある。私はこの星のことを知らぬ。だから教えてくれないか。そしてこの地でイルラを見つける手助けをして欲しいのだ。……頼めるか?』
ミシェルの瞳がきらりときらめき、口元が引き上がる。嬉しそうで良いのだが、何故か過度に喜ばれている気がする。こやつに悪意は全く感じられない。だから信用は出来るはずなのだが、解せぬ。
「いいですよ。僕は姫にこの地球のことを教えます。ですから姫は僕にアレトのこと、エミューリアのことを教えて下さい。姫のことをもっと知りたいと思います」
そう言ったミシェルからは純粋な喜びを感じる。……少し確かめるか。
『それでは、よろしく頼む』
そう言うと、右手を差し出した。彼が嬉しそうに手を差し出してくる。もちろん私は思念体なので直に握手出来るわけではないが、形にはなる。その隙に紫水晶の指輪にさり気なく触れた。
ミシェルの思念波が流れ込んでくる。
『くうー! リアルでゲームプレイ出来るとかこんな奇跡逃すはずないよね。しかもヒロイン、クールビューティーな推し顔! 僕の人生にこんなドラマティックな未来があったなんて。神様、感謝します。』
……覗かなければ良かった。思わず表情に出そうになり、取り繕った笑顔で距離を取った。残念そうな顔をされたが知らぬふりをする。とりあえず裏切られる可能性はないだろうが、あまり近付きたくはない。
ミシェルからこの世界について学んでいく。母星を地球、衛星を月と呼んでいること。今いるのがフランスという国であること。この世界には多数の国が群立していること。王政はかなり昔に廃止され、議会制民主主義が主流であることなど、アレトとの違いに目をみはる、興味深い情報ばかりだった。
「ところで、姫」
『何だ?』
ざっくりとではあるが互いの世界について情報交換したところで、ミシェルがまた額に人差し指を当てて言った。
「姫は自分の世界に戻るために思念波を集めたいんだよね?」
『そうだが?』
答えると人差し指でとんとんと額をたたきながら続ける。
「……姫はどうやって僕を見つけたの?」
む? どういう意図で聞いてきたのだ?
突然の話題転換に一瞬頭が付いていかない。
『無論、思念波を使って探し出したのだ。私の思念波に最も馴染む個体を割り出したのが、ミシェルだ』
そう答えると軽く首をかしげる。
「そのイルラって、簡単に見つかるものなの?」
『いや。ミシェルを探し出せたのは運が良かった。この地……フランスと言ったか?』
「うん、ここはフランスの首都、パリだよ」
……なるほど。イルラをどうやって増やすか、どれくらい必要かということだな。
『この地に来たのは二度目だが、思念波を集めるだけなら容易くとも私の波長に合う思念波を見つけ出すのは容易ではないと思う。今回ミシェルを見つけられたのは本当に運が良かったのだ。次のイルラが同じように容易に見つかるかは分からぬ。……だが、より効率的に集めるにはイルラ同士が離れている方が良い』
「どれくらい離れていた方がいいの?」
『……そうだな。なるべくこの地球全体を覆えるように設置出来れば更に効率が良いだろう。出来れば人の密集している地で見つけたい』
「そうだよねー。人が多いほど思念波は集め易いんだよね? 単純に人口が多いだけの場所なら簡単に割り出せるんだけど、先ずは姫のことを受け入れ易いところから攻めた方がいいよね。……と、なると」
ミシェルが立ち上がり、いくつものモニターが設置してある机に向かう。
ここは彼が個人でオフィスを構える仕事場で、「個人投資家」として仕事をしているらしい。その投資先の企業のテストプレイヤーというものもしていると言っていた。
── ミシェルをイルラに出来たのは幸運だったな。
彼は基本的に一人でこのオフィスにいることが多く、時折来客はあるものの、仕事のほとんどはモニターさえあれば出来るらしい。経済的にも余裕があるため仕事に追われることもなく、気が向けば仕事をし、それ以外はテストプレイヤーや、似たような仕事をしており、時間に追われることなく過ごしていると言っていた。ここを拠点にすれば他人に干渉されず、心置きなく計画について相談することも出来そうだ。
ミシェルはモニターの一つに向かい、何やら作業をし始めた。近付いて後ろから覗き込むと、精巧な地図が表示されている。降りて来るときに見たのと寸分違わぬ画像に驚く。
『随分精巧に作られた地図だな』
「……ん? ああ、これ?」
操作をしながら視線を動かさずに答える。
「ゴーグルアースっていう地図表示アプリだよ。地図だけじゃなくて航空写真でも表示してくれるから便利なんだよね。……レイアーナ姫、これを見てくれる?」
大陸の地形がよく分かるサイズの画像を提示し、1点を指さすと、
「ここが僕たちの今いるパリ。……そしてこの地球で人口が多いのが、この辺り。……ここがインド。そして……ここが中国。後ここが、アメリカ合衆国」
指示された場所を地図で確認する。
『ほう。どこも大国だな。この北の国はどうだ?』
「そこはロシア。国土は大きいけれど人口はそれほどでもないんだよね」
『ふむ……。そのあたりは我らがアレトとそう変わらぬようだな。ならば、この中国から行くべきか?』
ミシェルがまた額に人差し指を当て困ったように言った。
「んー、人口から行くとそうなんだけど、僕があんまり詳しくない国なんだよね。あそこはちょっと国の成り立ちが特殊なんだ。この中国とロシアは共産圏で社会の仕組みそのものが違うんだよね。……ちょっと調べる時間をくれる?」
また聞いたことのない単語が出てきた。つくづくこの地球は面白い。私はミシェルとの会話を楽しみながら次のイルラを探す場所の特定を進めることにした。
今回で10万字を越えました。ようやく一冊分書き終わった計算になります。……まだまだ続きますよ!
加筆したら更にミシェルのユニークさ(オタク度)が明らかになりました(笑)
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それではまたお会いしましょう。
皆様に、風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。




