4 待ちぼうけ
加筆修正しました。22.8.18
しょんぼり。
やはり、というか、そりゃそうだ、というか……。
目の前では何人かの大人達が穴の中で作業をしている。私としーちゃんは、それを上から見ていた。
中には入れてもらえなかったのだ。
私達では見ただけで遺構かどうか分からないこと、足場が不安定なこと、などなどいろいろ理由はあるみたいだけど。
何か見つかったら教えてくれるということで、穴の上で待機することになった。
父さんと小鳥遊さんは古墳の探索に行ってしまった。こちらも、危ないからとやっぱり置いていかれた。
── 早く何か見つからないかなー。
じーっと地面を見つめていても、素人の私達にぱっと見つかるわけがないよね。父さんが熱く語っていた地層の違いだって、どれだけ目を凝らしてもさっぱりわからない。
作業をしている人達の手つきが丁寧で、刷毛やへらで細かく地面を触っているなあと思っていると、いきなり大きく掘り返していたりもする。どういう基準でその違いが分かるんだろう、とは思うけど、みんな黙々(もくもく)と作業しているばかり。
……暇だ。
ずうっとしゃがんで下を向いていたら、首が痛くなってきた。しーちゃんもさっきからもぞもぞしだしている。
陽射しはきつく、何もしないでいるうちに背中が熱を持ってくる。基本インドア派なので、はっきり言ってここにいるだけできつい。発掘作業ってこんなに大変なんだ。こんなあっつーい中で掘り続ける大人ってすごい。
そんなことを考えながら頑張って見ていたんだけど、
「あぁ! もう、無ー理ー!!」
とうとうしーちゃんがギブアップした。
「暑いし暑いし、土ばっかりでわけわっかんないしっ!!」
足をバタバタさせながら、わめきちらす。
ちょっと……、いや、かなりうるさい。
発掘中の人達が苦笑しているのが見えた。
しーちゃんは、無理無理無理ー、と叫び続ける。さすがに恥ずかしくなってきた。
「と、とりあえず。日陰に避難しようか」
私は観察するのをあきらめて木陰にしーちゃんを連れて行った。
基本アクティブ派のしーちゃんは待つのが苦手だ。発掘作業をただじいっと見ているだけというのは、かなり苦行だったみたい。
木陰で水筒のお茶をぐびぐびと飲む音が隣からする。
私は未練がましく穴の方を見ながらため息をついた。
たしかに座って見続けるのは大変だったけど、せめて欠片でもいいから発見する瞬間、見たかったな。
そんな事をぼーっとかんがえていると、ぷはっ、と息をつく音がした。しーちゃんがパーカーの袖でぐいっと口をぬぐうと、ぐだぐだ文句を言い始めた。
「あーもう! 発掘って、もっと面白いと思ってた! あーんなにちまちまちまちま掘るなんて、無理無理無理!」
ま、そうなるよね。うん、知ってた。
じっくり研究したり、そこから昔のことを想像したりして楽しむのが好きな私と、根っからアクティブなしーちゃんは、ずっとでこぼこコンビと言われてきた。
そんな二人がどうして仲良くしていられるのか。
それは小さい頃から一緒にいることが多かったから、としか言いようがない。
普段アクティブに行動するしーちゃんは、それゆえか人一倍好奇心も旺盛だ。
自分が見つけた珍しいものがあると、いつも持ち帰って来て私に見せる。それが何か分かるまで調べるのが私の役目だった。持ち帰れない時は問答無用に連れ出されて、「これ、何?」と調べさせられた。
自分で調べるのは苦手なくせに、一度教えると二度と同じことは聞かない。基本的に頭はいい。でも、めんどくさいーと言って絶対に自分では調べないで、いつも私を巻き込む。
次から次へと興味を持つものが変わるので、付き合わされていろいろ調べさせられているうちに、すっかりインドア派になった。もともと本を読むのは好きだから向いてたのもあるんだろう。
私はしーちゃんの肩をよしよし、とやさしくとんとんしながらなだめる。
「あー。まだどこが遺構かわからないからだよ、きっと。探しながら掘ってるんだと思うよ」
しーちゃんが、きっ、とにらみつけてくる。いや、私に八つ当たりされてもね。
「本っ当に遺跡なんかあるの!?」
「まあまあ。すぐには見つからないんでしょ」
「……れーちゃん、何で平気なの」
じとりとにらまれた。
いや、そんなふうに同意を求められても、と思わないでもないけど、ここで放置するとさらにぐだぐだ言われるのは経験でわかっている。
よし、ここは、話題転換だ。
「元気してた?」
さらりと聞いてみる。
一瞬しーちゃんはきょとんとしたけれど、んー、と言いながら答えてくれた。
「れーちゃんいなくなって外に出ることが増えたからねぇ。図書室ダッシュしなくなったし、怒られるのも減ったね。でも、いろいろ聞けなくなったのはちょっとめんどくさいかなあ。……はっ、れーちゃん、授業遅刻してない!?」
ぎろり、と目を光らせながらしーちゃんが見返してきた。
……よし。無事に意識を逸らすのには成功したね。ちょっとやぶへびが出たけど、まあ、よしとしよう。少しほっとして答える。
「それは大丈夫」
ちなみに図書室ダッシュとは、私が図書室開館中は高確率で籠るので、いつも休憩時間が終わる直前にしーちゃんが猛ダッシュで駆け込んで来て、先生に見つかる前に私を引きずって帰っていた日課のことだ。
アクティブしーちゃんは休み時間しっかり運動場で活動しつつ、なおかつ私のお迎えまでこなしていた。
今の学校で遅刻しないのは、校歌のおかげだ。
「れーちゃん、成長したね」と感動しているしーちゃんには内緒にしておこう。うん。
それからしばらくはお互いの近況報告をしあった。
今日私が来ることは、やはり小鳥遊さんが知らせてくれたらしい。
しーちゃんも私に会いたいと思ってくれたことが、素直に嬉しい。
前の学校の様子とか、新しい学校の様子を話していると、発掘中の穴の中から大学生のお兄さんっぽい人がひょい、と顔を覗かせた。
ちょいちょい、と手まねきしてくれる。
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それではまたお会いしましょう!
皆様に、風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。




