39 シュリーア の罪
前回に引き続きレイアーナ視点です。
ようやく二人でこちらの世界に来ました。
新章を作成し、タイトルが変更になりました。
一部、加筆修正しました。読みやすくなったと思います。(21.6.25)
さらに加筆修整しました。R5.2.13
『シュリーアには私の補佐を任せたい。その為、本来は学園で学ぶはずのものだが思念波を扱えるようになってもらう。先ずは、思念体の状態に慣れ、身体から出入り出来ること、この空間内で動けるように身体を動かす訓練をすること。この二点に取り組むように』
『かしこまりました。御姉様』
私がそう言うと、シュリーアは片膝を立て、額の思念石に右手を当てる臣下の礼で答えた。
年が離れており、共に暮らした年月が短いとはいえ彼女は私の唯一の妹だ。あまりの堅苦しさに思わず苦笑がもれた。
『そなたは年が離れているとはいえわが妹だ。そこまでへりくだらなくてもよい』
だが固く口を引き結び、決意を宿した目を向ける。
『いいえ、御姉様。わたくしは自分が大きな罪を犯したことをわかっています。わたくしのせいで皆がこのような空間に閉じ込められることになったのは事実です。ですからわたくしは御姉様の指示に全て従い、わたくしの犯した罪を償いたく存じます』
心の中でため息をつく。やはり妹は何も分かっていない。自身にどれ程の価値があるのかを。
努めて冷たい声を出して言う。
『ならばそなたは我の補佐官として与えられた仕事に全力で取り組め。そなたの成長がこの計画の完遂にかかっていると心せよ』
すると再び跪き、私の右手を取って自らの額に当てようとする。
『わたくしは姉であるレイアーナ姫様に忠誠を誓い、ここに主従となる誓いを交わします。わが誓約の証として、わたくしの思念核を捧げます』
慌てて手を引き抜くと告げる。
『シュリーア。私はそなたの主になるつもりはない』
だが激しく首を振る。
『わたくしは王家の姫として臣下を守る立場にあるにもかかわらず、その命を危険にさらし、なおかつ王国の世継ぎであるレイアーナ姫様の命まで危険に晒すという償い切れぬ罪を犯しました。わたくしの命では支払えないくらいに大きな罪です。もう王国の姫として生きていく資格などございません。どうかわたくしを臣下として扱い、これよりはレイアーナ姫様の命を守る立場として、わたくしを盾としてお使いください。そして、もしも無事この危機を脱しました後にはわたくしを処分していただきたく存じます』
曇りのない瞳で強い意思を露わにする。……脆いな。そっとその視線から目を逸らし、大きなため息をつくと再び目を向けた。
『そなたは罪を犯したと言うが、この空間で意識を保てるのはおそらく我らしかおらぬ。この空間を抜け出せなければそなたの言う罪を償うことも出来ぬぞ』
そこでわざとニヤリと笑って見せた。狭い視野でしか物事を捉えきれていない妹に教えるとしよう。
『だが、上手くいけば消失したのとほぼ同じ時刻に元の空間に戻れる可能性がある。ここは時空外の空間だ。そして我々以外の乗艦者は全て意識を覚醒出来ずにいる。この意味が分かるか?』
頬に手を当て、かすかに眉を寄せるのに構わず話を続ける。
『つまりだな、我らの力で元の世界に戻れたならば、この空間に閉じ込められていたという事実を知るのは我ら二人のみ。我らさえ口を噤んでおればここで起きたことを証明出来る者は誰もおらぬということだ。そなたが罪を犯したという証拠は何も残らないことになるのだ』
すると、目を丸くして口を押さえた。
『そなたが学園で学ぶことにはそなたが考えている以上に大きな意味がある。優秀な成績で卒業すれば、今後のそなたの身の振り方にはより多くの選択肢が与えられる。そして、どの選択肢を取るにしてもそなたの命をここで奪うことよりも、王国に貢献出来ることは大きくなるのだ。故に、そなたの命を奪うのは最も最悪の選択をした時だけだ。それまではそなたは私の妹で私の補佐官だ。良いな?』
シュリーアは花がほころぶように微笑んだ。
『御姉様のご厚情に感謝いたします。誠心誠意取り組みます』
それからは、課せられる課題に次々と取り組んだ。思念体の移動、身体を動かす訓練。思念波の感知と送り方……。程なくして基本的な操作を身につけた。
頃合いだな。ついに並行世界へと連れ出した。
『こちらが並行世界の……?』
不思議そうに辺りを見回したシュリーアが船体の残骸を見て表情を強ばらせた。
『後ろから見てみよ』
そう声をかけると恐る恐る船体の後ろに回る。途端に目が見開かれる。
『御姉様これは……』
船体の裏側は歪みがあるだけだ。
『本当に異世界なのですね』
そう呟くとこちらの世界の母星を見て目を見開く。
『本当に宇宙港がありません。……でも、アレトによく似ております』
じっと母星を見つめる妹に言う。
『私も全てを見た訳ではないが、大陸の位置等はほぼ同じようだ。だが、この世界には思念波の概念そのものが存在していない。……さて、そなたが母星に降りるには、残存する思念波が足りぬ。先ずはその受容体に思念波を取り込む訓練からしてもらおう……む?』
その時、艦の残骸にふと違和感を覚えた。……何だ?
『御姉様。どうかされましたか?』
訝しげに問いかけてきたが、違和感の正体についてすぐに結論は出なかった。
……気のせいかも知れぬな。
今はそう思うことにした。それよりも先ずは今のことだ。
『これから向かうのは成層圏上にある研究施設だ。そこにこちらの世界の研究者らしき者達が数人滞在している。そなたはそこで思念波の吸収をしろ。充分な量を確保出来たら、一度艦に戻り、主核と補助核に思念波を放出するのだ。それを繰り返し行え。……ただし、』
妹の方に向き直ると続ける。
『研究施設は速いスピードで母星を周回している。艦の位置を見失わないように。衛星を目印にすると良いだろう』
『わかりました、御姉様。それで御姉様は?』
『私は研究施設まではそなたと共に行き、そこから母星に向かう。そこで、協力者を手に入れる』
いくつかの受容体を手に、そう告げた。
シュリーアとレイアーナの関係がうまく伝わればと思います。
次はようやく彼が登場します!
ここまで読んでいただきありがとうございます。また、改稿を再読してくださっている皆様、心より感謝申しあげます。頑張ります。
それではまたお会いしましょう。
皆様に、風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。




