36 実験するの!?
おばさんの昔話としーちゃんの暴走です。
れーちゃん止められるかな?
加筆修整しました。
05.2.2
「やっぱり降って来たわ。予報通りね」
窓の外を見ると久しぶりに雨が降っていた。
「父さん達、大丈夫かな」
つい口からこぼれた不安に、おばさんが優しい声で答えてくれる。
「二人ともこんな日の作業には慣れっこだから大丈夫よ。雨の日は雨の日の仕事をするんだ、て言ってたしね」
おばさんが買い物袋からいろいろ取り出しながら続ける。
「この雨も明日には上がるって予報でも言ってたから、明日の説明会も無事開催出来そうだし。何よりも楽しみにしてるのはお父さん達だと思うわよ」
おばさんがくすりと笑って言った。二人とも研究バカなんだから、と。
二人とも…?
「おばさん、父さんのこともよく知ってるの?」
おばさんがエプロンをかけながら目を丸くした。
「あら、言ってなかった? 私達大学のとき同じ地学サークルに入ってたのよ」
「え、そうなの?」
しーちゃんもびっくりして、がばっと振り返った。
「大学生の時から仲がいいのよ、あの二人。サークルの活動以外でもしょっ中山に入って化石を探したり、あちこちの発掘作業のアルバイトしたりしてたわ。今の仕事は天職ね」
おばさんがその頃のことを思い出してかくすくす笑いながら教えてくれた。
「母さんも父さんみたいに考古学が好きだったの?」
しーちゃんが聞くとおばさんがカウンターキッチン越しに答えてくれる。おばさんの手は休みなく動いていて、今は野菜を洗っている。
「父さんほどではないわよ。母さんは埋まってるものよりも、その場所に興味があったの」
野菜を刻みながら続ける。
「地質って言うんだけれど、土を調べるとその場所がどんなところだったかが分かるの。昔はそこが海だった、とかお城だった、とかね。だからあなた達の自由研究も面白いな、と思ってるのよ。……さ、あなた達はもう少しそれをやっちゃいなさい。後で見せてもらうから。早くしないとお昼ごはんができちゃうわよ」
はーいと返事をして私達は自由研究の続きを書いた。
しばらくして出来たわよ、という声に私達は手を止めカウンターに向かった。
今日のお昼はラーメン。麺はインスタントだけれど、その上に豚肉と野菜炒め、さらに半熟のハムエッグが乗っている。
「「いただきます!」」
元気よく言って、はふはふラーメンをすする。塩味のスープに麺と塩コショウの効いた野菜炒めが絡んで、とてもおいしい。そこに半熟玉子を少し崩して麺や野菜炒めと絡め、半分はそのままハムエッグとしていただく。
とろりとした黄身とぷるぷるの白身が、ハムと一緒に食べると絶妙な甘さとともに口の中に広がる……はあ、幸せすぎる。
ラーメンと一緒に食べても塩味のスープとの相性が抜群で、あっという間に完食してしまった。
「今日は仕事帰りだから簡単なものでごめんなさいね」
とおばさんが申し訳なさそうに言ってたけれど、
「すっっごく、おいしかったです」
と満面の笑みで返しておいた。
冷たい麦茶を飲んで一息つくと報告会だ。午前中の成果をノートで確認してもらう。しばらくノートをじっと見ていたおばさんが、
「うん。よく頑張ったわね。順序よくまとめられてるわ。地震の型にわけてまとめたのがわかりやすくて良いわね」
そう言ってもらえてほっとした。
「さっっすがれーちゃん。父さん達みたいな研究者になれるんじゃない?」
しーちゃんがぱちぱちと手を叩きながらほめてくれる。
「しーちゃんだって頑張ったじゃない」
私だけの意見でまとめたわけじゃない。しーちゃんと相談しながらだから上手くまとめられたんだから。
「ん? あたし意見は言ったけど、自分だけじゃこんなにうまくまとめられないよ。これはれーちゃんのお手柄確定」
そう言ってにかっと笑った。ちょっと照れくさいけど、ありがとうと言っておいた。
その後細かい言い回しとか図の説明とかを手直ししてもらい、うまくまとめることが出来た。
ノートを閉じた途端、しーちゃんがうずうずしだした。私の方を見てにやりと笑う。う、嫌な予感。
「さあ、れーちゃん。いよいよ実験だよ!」
────はい?
しーちゃんが腕組みをしてふんぞり返る。
「ふっふっふっ。いくら調べたって実際に確かめてみなけりゃ本当かどうかわからないじゃない! これは是非とも確かめてみなくちゃあ」
そう言うとぐっと拳を握りしめる。
「ちょっと待って、しーちゃん。こんなのどうやって実験するつもりなの?」
慌てて止めようとしてそう問いかけると、しーちゃんが拳を顎に当てて考え始める。ヤバイ。完全にスイッチ入っちゃってるよ。つーと背中に冷や汗をたらしていると、横で見ていたおばさんがため息をついた。
「はあ。怜奈ちゃん、あきらめて」
ちょっと、おばさん待って! 巻き込まれるのは私なんですけどっ! あわあわしているうちにしーちゃんがぶつぶつと独り言を言い始める。
「地震には二パターンあるから、断層型と海溝型の両方を実験をしたいよね。ということは地面で……」
ちらりと庭を見ると、きらんと目が光る。ああ、これ絶対やばいって!
「今ならちょうど水もあることだし!」
おもむろにガバッと立ち上がるとずんずんとそのまま庭に向かって歩き始める。そして、
「れーちゃん、行くよ」
と私の手をむんずと掴む。
「え?」
問答無用に引きずられて庭の方へ連れて行かれそうになる。
「ちょ、ちょっと待って、しーちゃん。せめて何をしようとしてるのかだけでも説明して!」
「心配無用。私の頭の中にはすでに計画が出来てる」
説得むなしくずるずる引きずられそうになるのに必死で抵抗していると、おばさんがすたすたと歩いてきて私としーちゃんをぺいっと引き剥がした。
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それではまたお会いしましょう。
皆様に、風の恵みが共にあらんことを。お祈りいたします。




