35 大災害を探れ
協力者探しを終えて、自由研究に戻ります。
修整しました。05.2.2
「それにさ、ここ! 協力者だよ? 間違いないよね?」
しーちゃんが食い気味に聞いてくる。私も強く頷いて返す。
「うん。間違いなく当たりだと思う」
だけど、ここから先は「SECRET」の文字に阻まれて見ることが出来ない。何か他に情報はないかと、表示されている内容を目を皿のようにして二人でよーく見てみると、小さく何か書いてあることに気づいた。
Michel in FR。
「しーちゃん、これ見て」
早速しーちゃんが調べてくれると、
「ミシェル イン フランス……」
この瞬間、私達は他の協力者の存在を確信した。
「……ふう」
ミシェルのサイトを見つけたことで、私達はしばらく興奮状態になった。自分達だけが協力者ではないとわかった安心感。他の協力者を見つけた達成感。いろいろな気持ちがわきあがって、しばらくは声も出なかった。しーちゃんはわけもなく身体を動かしたり、バタバタとリビングの中を走り回ったりしていた。私は頭の中が何かでいっぱいになって、しばらくぼーっとしていた。
ようやく興奮状態が落ちつくと、二人してジュースを飲んで一息ついた。無事協力者を見つけることはできたけれど、そのミシェルという人にコンタクトを取るかどうかは、すぐに決められなかった。どんな人なのかわからないし……。とりあえずそのことは保留にして、自由研究を再会する。
もともと今日はそのために来たのにまだ何も進めていない。時計を見るともうすぐ11時になるところだった。しーちゃんの家に来てから既に1時間以上たっている。
「やっば。もうすぐ母さんが帰ってきちゃう!」
「しーちゃん、急いで進めよう。おばさん絶対に報告してって言うよ」
「よしっ。やるよ!」
慌ててパソコンとスマホの画面を、ヤッホーキッズとゴーグルのスタートページに戻すと作業を開始した。
昨日はメモしただけだったので、新しいノートに整理して書き直していく。自由研究のタイトルは「大災害を探れ」に決定した。しーちゃんがプロジェクトなんとかだーと盛り上がって命名した。
ふんふんふんふんふんふんふんふふん~とかなんとか鼻歌を歌いながら書いている。
「そこで大阪府で起こりそうな大災害を調べてみることにしました、と」
この辺りで起こりそうな災害として、地震、津波、火山の噴火を予想したこと。調べてみると近畿地方には火山がないことが分かり、噴火による災害は起こらないだろうと思ったことを書く。
「次に、津波について調べたら、津波が地震で起こることが分かりました。だから地震について詳しく調べてみることにしました、でいいんだよね?」
しーちゃんにそう確認すると、
「そうそう。それで過去に起きた地震の場所を調べたのがこの地図」
昨日おばさんに印刷してもらった地図をしーちゃんが指差す。
「待って。その前にこっちの説明からした方がいいと思う」
別の地図を差し出す。
「ああ。えっと……、プレートなんとかだっけ」
「プレートテクトニクスだね」
メモを確認しながら言う。地球の表面はプレートといういくつかの大きな岩みたいなものに覆われている。それが少しずつ動いていて、そのプレート同士がぶつかるところに地震が発生しやすい、というものだ。地図にはそれらの名前と動いている向きが書かれていた。その地図の中で日本はいくつかのプレートがぶつかるちょうど上にある。だから地震が多いということだった。
「この南海トラフ、ていうところで地震が起こると大地震になって、大津波も起こるんだよね」
「大体百年から百五十年に一回くらい起こっていて、今後三十年以内に起こる確率が高いと言われているね」
これも昨日のメモに残っている。
「大災害が起こる、ていうところがドンピシャだよね」
「でも、レイアーナはこの地にエネルギーがたまってる、て言ってたよね? それがこの場所だとすると結構遠いから、どうかなあ」
「それそれ。あたしもそこは気になった」
南海トラフの場所は東海から九州までの沖の方で、細長くかなりの長さで日本の沖に横たわっている。ものすごく大きいしここからは結構離れている。
「候補の一つではあるけど、他の場所の場合も考えた方がいいよね」
しーちゃんもそうだね、と頷いた。よしよし、ここまでは順調にまとめられている。
「うん、順調順調。このままいっくよー!」
しーちゃんも同じように思ったみたい。テンションがぐんぐん上がってきた。
「地震はこのプレートで起こるものと、断層で起こるものの大きくわけて二種類がある。東日本大震災がプレートタイプの地震で、阪神大震災が断層で起こった地震です、と」
メモを確認しながらどんどん書いていく。しーちゃんもノリノリでそれを写していく。時々鉛筆を振って楽しそうだ。
「そんで、これが過去に起きた地震の震源がかかれた地図で、こっちが日本の活断層がかいてある地図。あたし、昨日この地図見たとき、すごっ! って思ったんだよねー」
「うん、私も思った! この二つの地図、ぴったり重なるよね」
「そう! それからこの内閣府が出してる地震のハザードマップ!」
しーちゃんが、ばばーん、と言いながら地図を並べていく。それを目で追いながら、頷いて言う。
「そう。大阪府は真っ赤なんだよね。この地図見てるとほんとにいつ巨大地震が起きてもおかしくないって思ったよ」
「だよねー! そう思うよね!」
二人で盛り上がっていたら、あっという間に時間が過ぎていて、玄関からおばさんの「ただいまー」という声がした。
しーちゃんがヤバい! と大慌てでノートに書き出したけれど、しっかりおばさんには聞かれていて結局叱られることになった。私も側で一緒にしおらしく謝るとおばさんが、怜奈ちゃんは悪くない。どうせ詩雛が暴走したに決まっている、と逆に慰められた。
しーちゃんが恨めしそうに見てきたけれど、日頃の行いのせいだから私に責任はないはず。こっそり心の中でぺろっと舌を出したら、通じてたみたいでさらに恨みがましく見られた。だから気づいていないふりをしておいた。
レイアーナの言っていた大災害を地震によるものと推定しました。
大災害の可能性が高いのは南海トラフで起こる地震ですが、こちらはもしも起こると二人のいる近畿地方だけでなく西日本全体に甚大な被害が出ると言われています。
レイアーナはこの地、と言っていたのでどうでしょう?
それでは続きをお楽しみいただければと思います。
皆様に、風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。




