33 協力者を探せ 1
自由研究を進めるはずが。
夢の話から協力者を推理することに。
大幅に修整しました
05.1.28
あいにくの曇り空を眺めながら、運転中の父さんに聞いてみた。
「父さん、雨が降ったら発掘はどうするの?」
「さすがに発掘作業は中止になるね。降り始めたら雨で流されないように地表をビニールシートで覆って、屋内で洗浄作業や復元をしてもらうことになるよ。……まあ、父さんは雨の中でも説明会のための作業をしないといけないけれどね」
風邪ひかないでねと言うと、怜奈は優しいねー、と感動している。相手をするのがめんどくさいのでここは放置しておく。
今日もしーちゃんの家で自由研究の続きをする。明日と明後日の土日は博物館で現地説明会が開催される。もちろん説明会にも参加させてもらう予定だ。その後しーちゃんが私の家にお泊まりすることになっているから、すごく楽しみだ。うー、久しぶりのお泊り会だ。明日が待ち遠しくてたまらない。
昨日と同じようにしーちゃんの家で降ろしてもらう。
「ただいまー。来たよ!」
ガチャリとドアを開けて家の中に呼びかけると、しーちゃんがリビングから走って出てきた。
「おかえりー。来たねっ」
にやりと笑う。あれ? 家の中が静かだ。
「おばさんは?」
「今日はパート。でも、昼から帰ってくるって」
シフトの都合がつかなくて、どうしても午前中は出なくてはいけなくなったらしい。しーちゃんに続いてリビングに入る。パソコンの電源が入っていて、ホーム画面が表示されている。今日はこれを使って昨日の調べものの続きをしていいそうだ。しーちゃんの名前でログインしてあって、詳しくは分からないけど、そうすると変なサイトには繋がらなくなるらしい。私達だけでも安全に使えるらしい。
スマホの画面だと小さくて、二人でのぞき込むとすごく見にくかったからほんと助かる。
しーちゃんがジュースを用意してくれて、リビングのテーブルで作業開始。しーちゃんがものすごくいい笑顔(いつもの問答無用に巻き込まれるタイプのやつ)で切り出す。
「母さんのいないうちに情報交換するよっ!」
そこで急に真面目な顔になった。他に誰もいないのに声を潜めて言う。
「今日も見たよね?」
「うん、見た」
「んじゃ、あたしから」
しーちゃんが昨日見た夢の話をしてくれた。予想通り、シュリーアの夢を見たらしい。レイアーナと二人揃って思念体になって、何とISS(国際宇宙ステーション)に行って思念波を吸収する練習をしていたそうだ。
私も夢の話をした。レイアーナの目で空から夜の街を見ていたこと。黙って聞いていたしーちゃんが腕組みをして考え込む。
「うーん、街の真ん中に大きな川があって、塔と何か古くて大きな建物と、宮殿ねえ。……なんかすごく特徴がある感じだよね。れーちゃんはどの辺のことだと思う?」
「ヨーロッパじゃないかなあ……塔の形が東京タワーに似てた気がするんだよね」
それを聞いたしーちゃんががばっと体を乗り出し、食い気味に言った。
「ねえ! それってエッフェル塔じゃない!?」
「エッフェル塔? ……あっ!」
はっとした。そうだよ、あの形見たことあるじゃない!
「思い出した! あのピラミッドみたいなやつ。テレビで見たことあるよ。あの建物、確かルーブル美術館だ!」
「確かめてみよう」
しーちゃんはパソコンに向かうと、ゴーグルアースを立ち上げ、「パリ」と入力した。画像を写真に切り替えてクリックしていく。私もじっと画面を見つめた。
「しーちゃん、そこで止めて」
画面の中央を川が曲がりくねりながら流れている。その川岸、左側にエッフェル塔、近くに古い建物。それから川の近くのルーブル美術館にベルサイユ宮殿!
見たのは夜だったけれど、確かにこの景色に見覚えがある。
「うん、ここだ。間違いないよ。レイアーナさんがいたのは夜だったけど、ここで間違いないと思う」
しーちゃんが画面を睨みつけるように見ながら顎に拳を当てる。
しばらくして言った。
「ねえ、あの人達他の国にも協力者がいるって言ってたよね」
「うん、言ってた。他にもいるって」
私の目を見てしーちゃんが続ける。
「ひょっとすると、いるんじゃない? パリに」
「協力者が?」
深く頷くしーちゃん。
「でなきゃ、わざわざそこへ行かないでしょう? んー、何かないかなあ。協力者を探す方法!」
協力者を探す方法かー。私も考える。
「パリって、フランスだよね。んー、フランス語で探す? ……ボンジュール?」
しーちゃんが白い目で見てくる。……なんか、ごめんなさい。
「フランス語の挨拶で分かるわけないじゃん。大体、れーちゃんフランス語分かるの?」
首を降って身体を小さくする。うう、穴を掘って埋まりたくなってきた。
そんな私をあっさり放置して、しーちゃんがぶつぶつ言いながら考え込んでいる。拳が顎から離れずにくっついている。しーちゃんが考え込むときの癖だ。
「……だとすると、……ちがうか。でも、……なら、……うーん」
他に何も考えつかなくてしーちゃんが答えを出すのを待った。
「…………」
しばらくしてぱっと顔を上げたしーちゃんが、
「ねえ。世界中にあの人達の協力者がいるとしたら、その人達が連絡を取り合うことって、あると思わない?」
そう言って、どうだ、というようににやりとした。
無事に協力者を見つけることが出来るでしょうか。
次回に続きます。
改稿中の再読ありがとうございます。たくさんの方に支えられて続けられています。
この物語を愛して下さる全ての方に感謝。
まりんあくあの新作もどうぞ。この本編のアナザーストーリーでもある、
「しーちゃんが行く!~絶望の箱庭~鳥籠の姫君~のワールドエンドミスティアカデミーにお邪魔しました!」
こちらは怜奈と再会するまえの詩雛が主人公の物語。
改稿しながら執筆のため、二週間に一度のスローペースですが、こちらも楽しんでいただけると嬉しいです。
しーちゃん主人公のどたばたコメディです。現在アカデミーに転移して大暴れ中(笑)
こちらからどうぞ。
https://ncode.syosetu.com/n0156hr/
それでは、またお会いしましょう。
皆様に風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。




