26 研究を始めよう
夢の話と、大災害についてです。
加筆修正しました。22.12.21
「しーちゃん。私、昨日夢を見た」
自分がレイアーナの内側にいるような感じで見ていたこと。宇宙にいて、国際宇宙ステーションや地球を見ていたことを話した。
「……だから、この前見た夢がレイアーナのことなんだってわかったの。たぶん、もらった受容体のお陰で今までよりもはっきり見えるようになったんだと思う。それでね、レイアーナの言ってた感応者ってこういうことなのかな、て思ったんだ。あの人の思……アレを感じ取ることが出来るからなのかなって」
じっと私を見ながら聞いていたしーちゃんが腕を組みながら言う。
「あたしも考えてた。あたしも昨日見たよ。あたしはシュリーアの目線で見てた。やっぱり宇宙船の中で……泣き叫んでた。『わたくしのせいです! これはわたくしが起こしたことです! わたくしのせいでみなが犠牲になってしまった!』って。それを思念体のレイアーナさんが見下ろしていて、『全てがそなたのせいというわけではない』って言ってたんだ」
そのまま上を見上げて続ける。
「あたしが見たのは、そこまで。れーちゃんとおんなじで前よりもはっきりと宇宙船の中が見えたよ。あの二人の他にもたっくさんの人が乗ってたけど、誰も動かないんだ。意識がなかったか……ひょっとしたら死んじゃってたのかもしれない。とにかく動いているのは二人だけだった。でもね、二人ともやっぱり思念体だったよ。あの二人の体があそこにあったのかはわからない。だからあたしも確信したんだ。あたしはシュリーアの感応者なんだって。シュリーアの感じたことを一緒に感じて、見たものを一緒に見られるんだと思う」
しーちゃんの目線が戻ってきたのを確認して言う。
「あの人達は宇宙船に乗っていて、事故か何かで二人だけが助かって。それを何とかするために、し……アレを集めてるってことなんじゃないかな」
おっと。思わずまた口から思念波、と出そうになった。あぶないあぶない。しーちゃんが頷く。
「あたしもそう思う。だけど、あの人達のことを考えるのは今はやめておこうよ。まだ情報が少なすぎるし……たぶんだけど、これからも見る気がするんだよね」
私も頷いた。うん。そんな気がする。
「でもね、問題はここからだよ」
しーちゃんの目がきらりと光る。う、嫌な予感。
「ところでれーちゃん。夏休みの宿題なんだけど」
「え、宿題?」
なぜにここで宿題の話が?
急な話題転換についていけなくて思わず聞き返すと、にっこにこしながら話してくる。
「ほら、ドリルとかプリントの宿題の他にいろいろ出てるでしょ?」
何でうれしそうなの? ちょっと不気味に思いながら、
「うん、あるね」
と答える。夏休みの宿題にはドリルやプリント課題の他に、標語を作るとか、ポスターをかくとか、貯金箱を作る、みたいな工作や読書感想文など、いろいろおまけみたいな宿題が出る。夏休み開けにコンクールなんかもあって、いいやつはそこに出されるんだよね。
「……で、それが何?」
でもその宿題に何の問題があると? 頭の中がクエスチョンマークだらけになっていると、
「れーちゃんとこは、その宿題ってどうなってる?」
「えっと、確かポスターか絵画一つ、標語を一つ、読書感想文とその他何か……だったと思うけど。だから、それが何?」
うんうんと頷いて聞いていたしーちゃんがにやりとする。
う、さらに嫌な予感。
「よしよし。だったら問題ないね。あのさ、こっちは四年生全員自由研究が課題なんだ」
「はあ」
とりあえず相槌をうつ。でもさっぱり話が見えて来ないんだけど?
「で、どうせだから自由研究しようと思って。れーちゃんも一緒にすれば宿題片付くでしょう?」
「はあ……って、え、自由研究!? うわ、めんどくさいやつじゃない」
「そ。でもこっちは必修だから、合わせてやればれーちゃんも宿題一つ出来ていいでしょう?」
「えー! それ、しーちゃんの中では決定事項なんだよね……じゃ、一緒にやるよ。で?」
こうなったしーちゃんが一歩も引かないのは、いやというほど経験済みだ。また巻き込まれたなと思いながらも仕方なく同意した。しーちゃんがさらににっこりを強くする。何か圧がすごい。
「だから、これから自由研究しよう」
「……だから何の?」
さっぱり理解出来ないでいると、しーちゃんがしびれを切らしたように叫ぶ。
「あー! 何っでわっかんないの!」
キレられても、さっぱり何のことだかわからない。こてんと首を傾げると、しーちゃんに睨まれた。ちょっとこわい。
びくびくしていると、しーちゃんが、はあ、と大きなため息をついた。察しが悪くてすみません。すると、諦めた顔で説明してくれた。
「あのさ、あの人達が最後に言ってたこと覚えてる?」
「近い将来に大災害が起こるっていうやつ?」
「そう、それ。その時に『この地に詳しくないから災害の内容はわからない』って、言ってたでしょう?」
「確か……埋没するって、言ってたよね?」
その時の会話を思い出す。
「それがいつ、どこで起きるかで、大津波になるか、隆起が起きる、だっけ」
「うん、そう!」
「それで自由研究??」
「そう。自由研究」
必死で頭の中で考える。
「えーと、つまり、その大災害について研究するってこと?」
しーちゃんがこくりと頷く。
「そう。この辺りで起きる大災害を予想するの。過去に起きた災害、その中でも自然災害を調べてみようかと思ってる」
「自然災害……」
ようやくしーちゃんのやりたいことがわかってきた。自然災害といえば?
「地震。津波。あとは火山噴火かな?」
調べるのは得意だ。しーちゃんにこき使われて鍛えられたからね。
「だったらそれがどの辺りで、どれくらい起きているか。どこで起きたか。なぜそこで起きたのか。それから……。」
「待って待って」
ぶつぶつ言いながら考えていると、しーちゃんがバタバタとメモ帳を用意する。鉛筆を持って、
「もっかい、最初からよろしく!」
と言ったので、私もメモ帳を用意した。
大災害を調べるついでの一石二鳥を考えたしーちゃんです。怜奈はきっちり巻き込まれました。
次回、研究の続きです。
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