23 母は強し
怜奈のおばさんとのかけあいです。
加筆修正しました 22.11.20
「行った?」
「え?」
何が起きたのか分からず呆然としていると、ふ、としーちゃんが鼻で笑った。それから何もなかったようにすっと姿勢を戻すと、ちょいちょいと手を動かして座るように示す。座り直すと真剣な声で聞いてきた。
「昨日のアレ、感じなかった?」
そう言うと同時にがばっと手を出して私の左手をぎゅうっと握ってくる。その直後頭の中に声が響いた。
『思念波って言葉は、声に出さないで!』
「わ、わかった。けど、どうして?」
圧倒されて心臓をばくばくさせている間に、しーちゃんはまた元の位置に戻るとぱっと手を離した。
「ま、言うなれば予防策? 誰にも知られない、見せない、触らせない。でも持ち歩け、でしょう? あの言葉を言っちゃったら、それを聞いた人は絶対それ何のこと? って聞いてくると思ってさ」
なるほど。
「それで!」
またしーちゃんが今度は両手を握ってきた。直後に声が頭の中で響く。
『思念波って言葉を使いたいときは、こうやって直接話す。これなら誰にも聞かれない。一石二鳥!』
思わずくすりと笑った。なんかほっとするな、しーちゃんといると。すっと肩が軽くなった気がする。身体に力が入っていたみたいだ。よし。力を込めて握り返すと、しーちゃんに向けて思念波を流す。
『了解。でも、一石二鳥って二つ良いことがないとだめでしょう』
すぐに返事が来た。
『これでれーちゃんと堂々と内緒話が出来るっ!』
ぷっ。吹き出してしまった。くすくす笑いながら、
「た、確かに内緒話にはぴったりかも知れないけど……くっ。こうやって手を握ったまま黙ってたら、それはそれで……」
目尻に涙をうかべていると、その時ガチャリとドアノブが回った。おばさんが入ってくる。
「何してるのあなた達。珍しくおとなしいと思ったら、また何かやらかそうとしてない?」
どきりとした。しーちゃんは平然とした顔で、そっと私の手を離しながら言った。
「母さん、あたし達を犯罪者みたいに言うのはやめてよ」
おばさんはしーちゃんがぶーぶー言っているのをさらりと流して、テーブルの上に冷たいジュースの入ったコップとペットボトルをどん、と置く。
「飲みすぎないようにね。今日のお昼はおばさん特製お好み焼きよ」
にっこり笑いながら私に向かって言う。笑顔でお礼を言っているとその後ろで無視するなーと叫ぶしーちゃん。うん、これはいつもの光景だ。そんなしーちゃんをがっつり無視したままおばさんが言う。
「怜奈ちゃんがいないとちっとも家にいないのよ、この子。今日はゆっくりしていってね。なんならずうっといてくれてもいいのよ」
「ありがとうございます」
コップを取って一口こくんと飲む。
「おいしいです」
笑顔で答えるとおばさんはにっこり笑って、うんうんと頷く。しばらく二人で笑顔で会話しているとしーちゃんが、
「あのー、もしもーし。聞こえてますかー。あたしいますよー。無視するのやめてもらっていいですかー」
と手をメガホンみたいに口に当てて言ってきた。その様子がおかしくて、おばさんと二人で吹き出した。
ひとしきり笑った後で、すっとおばさんの眼が細くなる。
「……で、何の話をしてたの」
「「え」」
二人の声が被った。動揺する私達には構わずおばさんが続ける。
「あなた達、また何か企んでいるでしょう。まあ、主犯は詩雛で確定だけれど、で・も、二人を放置しておくと、ろくなことにならないわ。経験上」
さあ、吐け。
どん、と机を拳で叩く。
「えーっと……」
困っていると、
「まだこれからなんだけどなぁ」
しーちゃんがぼそっと言って、ずずーと音を立ててジュースを飲んだ。
「こら、汚い。わざとやったでしょう。あのね、怜奈ちゃん一人なら静かに本を読んでるか、一人でむふってしたりにまにましながら楽しそうに何か考えてるだけだから害がないけど。そこに詩雛が関わるとどんどんとんでもないことになるでしょう、いつも」
いや、私ってそんな風に見えてるんだ……。かなりアレな子じゃん。おばさんの話は続く。
「アリの巣の観察をするってガラス瓶でアリを飼い始めた時は、途中で飽きて放置しちゃったわよね。そのうち蓋を閉めるのを忘れて遊びに行って家中アリだらけにしたわね。蚊除けのためって、庭中クモの巣だらけにしたこともあったわね。火薬の実験といって庭に穴を開けたり。……数えたらキリないわよ。この部屋を水浸しにしたことも二回や三回じゃないわよね?」
……あー。そんなこともあったね。
しーちゃんが興味持ったことを私が調べさせられる。それをしーちゃんに伝えると、じゃ、試してみよう! って、実際にやった結果の数々。うまくいっても失敗しても、しーちゃん自身は楽しんでいるけれど、その後の後始末が大変なんだよね、毎回。おばさんに怒られて、自分達できっちり後片付けまで付き合わされる。
思わず遠い目になっているとしーちゃんがふっと笑って、
「まあ、実験には少々の犠牲はつきものだよね。うん」
と頷いていて、すかさずおばさんにすぱん、と小気味いい音を立てながら頭をはたかれていた。
「さあ、今回はなにをするつもり!?」
おばさんが腰に手を当てて、迫ってきた。
おばさんと二人の関係を書いておきたかったんですけど、おかしい。話が進んでない……。
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