22 アノ言葉は言わないで
三章めに入ります。
怜奈と詩雛が、受容体を育てながら、思念波を集めていきます。
加筆修整しました22.11.7
ベッドの中で目を開けずに、今見ていた夢の切れ端を捕まえる。
濃い青と薄い青が広がる美しい海。茶色と緑に色分けされた大地。
宇宙から見た美しい地球。そして、その上空を移動する国際宇宙ステーションから漏れる微かな光の輝き。
それを宇宙空間で見ていたのは……。
──レイアーナ。
鮮明に見えた夢。
ここ数日見ていた夢がつながっていく。
そうか。私はずっとレイアーナの夢を見ていたんだ。
宇宙服を着ていたから彼女達が宇宙から来たとは思っていた。
「並行世界からの脱却……」
前の日の夢の意味がわかった気がする。あの人達は元いた世界に戻るために思念波を集めてるってこと?
目を開けてお守り袋を見つめる。そういうことか。
私はレイアーナと自分が感応していることを、初めて実感した。
朝から父さんの機嫌がいい。今にもまた変な鼻歌を歌い出しそうだ。
母さんが呆れ顔で、
「くれぐれも安全運転で行ってらっしゃい」
と送り出してくれたくらいだ。
父さんから思念波がしゅるしゅる流れ込んでくる。私もつられて楽しみ度が上がっていく。お互いのテンションが高いからどんどん石が吸収している。そのお陰で思念波の流れていく感覚にも大分慣れてきた。
でも家族は全く気付いていないし、そんな波が自分から出ていることにも気付いていない。私も昨日までは全然知らなかった。
もう一つ気付いたのは、受容体があると興奮したり、恐怖にかられたりすることがないこと。大きく感情が動いたときに、受容体が自動的にそれを吸収するから心が落ち着いていく。
受容体は着実に成長している。昨日よりも既に一回り大きくなっていて、もうすぐ小豆粒くらいになる。
今日は午前中、父さん達はリフトを使って棺を開け、中の状態と埋葬品の確認をする。それから昨日と同じように全て運び出して検証するそうだ。
その間私達は中に入れない。
なので、しーちゃんの家で受容体の検証をする計画だ。父さんが博物館へ行く途中で降ろしてくれる。埋葬品の引き揚げが済んだら連絡をもらい、合流する予定になっている。私達が行く頃には発掘された埋葬品がまたテントの下で並べられているはず。考えるだけでわくわくしてくる。
父さんの話ではいい状態で残っていそうだから、運が良ければ遺体も見つかるはずなんだって。
昨日玄室に入るかどうかで気遣っていたのはなんだったのかというくらい、夕食中から「遺体」を連呼していた父さんは、途中で母さんに「ご飯がまずくなる」って怒られていた。
今日もいい感じに晴れている。「頑張って。いい報告待ってるよ!」と父さんを送り出し、しーちゃんの家に入れてもらった。なんだか懐かしい。
転校する前はしょっ中お邪魔していた。うちはがっつり共働きだけれど、しーちゃんのお母さんはパートで近所のドラッグストアに行っているので、毎日仕事に行ってるわけではない。今日はお休みの日だそうだ。
「お邪魔します」
久しぶりなので丁寧に言うと、
「お帰りなさい怜奈ちゃん。ちょっと背が伸びたんじゃない?」
とおばさんがいつものように出迎えてくれた。しーちゃんと一緒に帰って来る時は、一緒に「ただいまー」と言っていた。なので、
「ただいま。おばさん」
と言い直したら、なんだかとてもくすぐったかった。
「良かった。よく日に焼けてるじゃない。怜奈のことだから家にとじ込もってるんじゃないかって、ちょっと心配してたのよ」
内心ぎくりとしながら、
「あはは」
と笑ってごまかした。水練学校行ってて、良かった……。
おばさんと話していると、どたた、と音がして二階からしーちゃんが降りてきた。にやりと笑って、
「来たね」
と言うので私もふっと笑って、
「来たよ」
と返した。
「詩雛。階段は静かに降りなさいっていつも言ってるでしょう」
おばさんに怒られたしーちゃんは、うへっ、と一瞬首をすくめた。それから、
「れーちゃん上がって」
と言うと、そのまま私を二階のしーちゃんの部屋へ引きずり込んだ。部屋につくなり折り畳み式テーブルの向かい側に私を座らせると、
「さあ、始めるよ」
と目をギラギラさせながら身を乗り出すようにして言った。しーちゃんの勢いに思わず、ずざっと身を引いてしまう。テンション高っ! って思った瞬間、ざあっと音がするんじゃないかと思うくらい勢い良く、しーちゃんの思念波が流れ込んで来た。
え!? 何この勢いは!?
しーちゃんがすごくいい感じに、にやりと笑った。
Twitter企画でいただいたFAを掲載させていただきました。
幽夜屍姫(@EdVlEgs9sncME96)さん、ありがとうございます。
思念波に少しずつ慣れ始めた怜奈、レイアーナに感応していることを自覚しました。
それでは、続きをお楽しみください。
ブクマ、いいね、⭐、感想お待ちしています。
皆様に、風の守りが共にあらんことをお祈りいたします。




