18 作戦を練る
二日目の発掘作業が終わります。
大幅に改稿しました22.10.28
古墳の入口には、工事現場によくある黄色と黒の縞の入ったコーンとバーが置いてあり、立ち入り禁止の立て看板が置いてある。作業着姿にヘルメットを被った人が数人、父さんと小鳥遊さんと話し込んでいる。
明日の棺を開ける作業の相談かな。
私の古代ロマンへのわくわくが、数々の副葬品を前にして少し戻ってきた。明日のことを想像してみる。棺が開いた途端に目に飛び込んでくる美しい埋葬品の数々。色とりどりの玉に勾玉、他にも装飾品が見つかるかもしれない。
目を閉じてうっとり想像に浸ろうとしたそのとき、膨らんた気持ちがしゅるりとポケットの中の石に吸い込まれていった。
思わすビクリとしてしまい、周りの様子を見回す。みな作業に忙しくて、気付かれなかったみたい。
ほっと胸をなでおろしていると、おじさんが戻って来た私達に気付いて手を振ってくれる。しーちゃんが軽く手を挙げて合図を送った。
「……れーちゃん。また妄想してたでしょ」
ぼそりと隣で呟いたしーちゃんの突っ込みに、ぎくりとする。
「な、何のことかなー」
しらじらしく言ったけど、見透かされているのは痛いほどわかっていた。思わず冷や汗を流していると、いつの間にか工事の人達はいなくなっていた。
父さんが皆を集めて話す。
「皆さん、今日も猛暑の中での作業、お疲れ様でした。本日は、発掘された遺物を博物館に収納次第、終了させていただきます。明日は機械を入れての玄室での作業を、学芸員と研究生で行い、それ以外の方には昨日同様、側溝での発掘作業を行っていただきます。明日も……」
「れーちゃん」
つんつん、としーちゃんが私の服の袖を引っ張って囁きかけてきた。しーちゃんを見ると、くいと顎を引いて木陰を示す。
木陰に移動すると、しーちゃんが腕を組んでにやりと笑った。
「ふっふっふっ。いよいよ明日はお宝ザックザクだねっ。なにが出るかなー………って、いつものあたしなら言うところなんだけど」
しーちゃんが急にまじめな顔になって、まっすぐに私を見た。
「れーちゃん。怖がってても仕方ないよ。本当は私も怖い」
力のこもった強い目が私の心の奥にある恐れを見透かしている。どくりと心臓が打った瞬間に、すっと私の思念波と、それからしーちゃんの思念波の一部が石に吸い込まれていく。一瞬怖い、と思ったその揺らぎも、吸い込まれる。もう何度目かなのに、やっぱり気味が悪い。
なのに、受容体が溢れてくる強い気持ちを吸収するからパニックにはならない。気持ちがなくなるわけではないので、余計に気味悪さが増していく。……だめだ、これじゃ堂々めぐりだ。よし。すーはー。
何度か深呼吸を繰り返すと、気持ちが落ち着いてきた。
「しーちゃん。心配してくれて、ありがとう。」
感謝を込めて言うと、すっと自分の思念波がしーちゃんに向かうのがわかる。
しーちゃんがはっとして、一瞬受容体が入っているポケットに目を向ける。それを見たらふと頬が緩んだ。
「私の思念波、しーちゃんの受容体に吸収された?」
「うん。ちょっとだけど」
しーちゃんも同じように感じ取れたみたい。
「ふむふむ……これは検証が必要だね」
そう言ってまた顎に拳を当てる。しばらくすると、
「れーちゃん。明日までに、どれくらい他の人の思念波を吸収できるか調べよう」
「わかった。いつ、どんな時に吸収されるのかも調べた方がいいかな」
「そうだね。これからたくさん集めないといけないと思うんだ。どうやったらたくさん集められそうか考えなくちゃね! そうだ、いい考えが浮かんだよっ。明日はちょっと付き合ってくれる?」
ものすごく嬉しそうに言うしーちゃんに、とっても嫌な予感がしながらも、どうせ避けられないのでしぶしぶわかった、と返事をした。
テントの方を見ると、もう片付けが始まっている。手伝いに行かなくちゃ。
しーちゃんのいい考えは、きっとろくでもないことだ。でも、私一人だったら怖くて何も出来なくても、一緒ならなんとかなる。だから大丈夫。しっかりと顔を上げると、にやりと笑ってみせた。
「わかった」
「真似すんな」
残念。怒られてしまった。
それから二人で協力して博物館への荷物運びを手伝い、その日の作業は終わった。
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現在、こちらの本編は改稿中で更新ストップしていますが、しーちゃんを主人公にしたコラボ小説はゆっくり更新しています。こちらは私がアドバイザーをしている小説にしーちゃんが突撃していく物語となっています。良ければそちらも応援してください。
「しーちゃんが行く!~絶望の箱庭~鳥籠の姫君~のワールドエンドミスティアカデミーにお邪魔しました!」
https://ncode.syosetu.com/n0156hr/
それではまたお会いしましょう。
皆様に、風の恵みが共にあらんことを。お祈りいたします。




