143 怜奈は精霊を仲間にした
前回に引き続き、ファンタジー全開です
怜奈の進化が止まりません(笑)
加筆修整しました。(06.3.3)
わくわくしながら周りを見渡してみたけれど、空気の壁があることはわかっても、精霊がいるのかはさっぱりわからなかい。
── 精霊さん、姿を見せてーーー!
心の中で叫んでみたら……あ、しまった。三人とも生あたたかい目をしている。やっちゃった。
けれどもその時、透明な空気の壁だと思っていた「風の護り」のところどころに、チラチラとうす青い光が瞬いているのに気がついた。見間違いかもしれないと思って他の場所と何度もきょろきょろと見比べてみたり、目をぎゅうっと閉じてから開けてみたりしたけれど、やっぱり光が見える気がする。
『どうした、レナ』
「何やってるの? れーちゃん」
不審そうに尋ねるレイアーナさんと白い目で見てくるしーちゃんに思わず一歩後ろに引いてしまった。風の護りに当たっちゃう! って思ったけれど、空気の壁は私と一緒に動くみたい。すごい。本当に魔法みたいだ! 私が動いた瞬間、青い光は一瞬大きくなったような気がする。
「あの……この『風の護り』の中に小さな青い光がチラチラしているみたいに見えるんですけど」
おそるおそる指差しながらそう言うと、しーちゃんの目がキラリと光った。
「なになに!? 魔法の光? どこどこ?」
しーちゃんは目をまん丸に見開いてじーっと壁を凝視しだした。それから目を細めてみたり、角度を変えて見たりしていたけれど、
「えー? 何にも見えないよ。気のせいじゃない?」
と唇を尖らしてぶーぶー言い出した。『まーたれーちゃんの妄想が始まっちゃったよ』って思ってるのバレてるからね! もう。
でも、見間違いなんかじゃない。さっきは一瞬光が強くなった。すぐに小さくなって今はまたチラチラ瞬いているだけだけれど、よく見るとあちこちに小さな光の粒がある。
『そなたは本当に優秀だな、レナ。その瞬いて見えるのが精霊の欠片のようなものだ。この世界の精霊は力が弱く、そのように小さな片鱗しか見せぬ。それでも思念エネルギーに反応して力を借りることは出来る。技を外すときは思念石から流れ出ているエネルギーを戻しながら「解除」と唱えれば良い。風の護りは思念石からエネルギーが供給されている限り継続する』
手元の思念石を見ると、ハート型の思念石から少しずつエネルギーが引き出されているのがわかった。どんどんエネルギーが減っていくのがわかったので、慌ててその流れが思念石に戻るイメージをしながら、
「解除」
と唱えた。シュッとエネルギーが戻って来る。ほっとしたその時、うす青く光っていた粒のいくつかが私の目の前にふわりと寄ってきて、何回か瞬くとスーッと消えていった。まるで「ありがとう」って言っているみたい。思わず微笑んだら、すかさずしーちゃんに、
「きもっ」
と言われた。ちょっとムカついたので、
「今ね、空気の精霊が挨拶したんだよ」
と言ってやった。するとレイアーナさんが、
『空気の精霊か、そうとも言えるだろうな。我らは風の精霊と呼んでいる。思念波をエネルギーとして使うと、そのエネルギーと相性のいい精霊が力を貸してくれるのだ』
すかさずしーちゃんが、
「あたしもやりたい!」
と手を挙げる。
『無理だ』
「何でーーー! おっと」
叫びかけたしーちゃんが思念石をぐっと握ってゆっくり深呼吸した。溢れ出かけた思念波が見事に思念石に吸収されていく。
「あぶないあぶない、またやっちゃうところだったよ。危険回避。あたし、レベルアップしたね」
しーちゃん、ナイス。親指を立てて見せると「ふん」と横を向かれた。何で?
それからしーちゃんはもう一度レイアーナさんに向かって聞いた。
「何であたしは無理なの?」
『それはそなたがまだ真の意味で自らの思念石を持たぬからだ』
レイアーナさんが淡々(たんたん)とした声で言う。しーちゃんもきょとんとして首をかしげる。
「どーゆーこと? あたし、思念石持ってるよね?」
『確かにそなたは思念石をいくつも持ってはいる。だが、それらの思念石はシュリーアの受容体かレナの受容体を核として作られたものだ。精霊の力を借りるには自ら作った受容体を核にした思念石が必要なのだ』
「なんということでしょう……」
しーちゃんが芝居がかった仕草でがっくしとベンチに手をついた。
『レナには必要だから教えたが、この技はまだシュリーアにも使えぬ。普通はもっと小さいものから練習して覚えていくのだ』
── 小さいもの? あ、それって。
「風の盾」
言った瞬間に、しゅっと私の目の前に小さな壁が出来る。中でチラチラとまたうす青い光がいくつか瞬いている。
「出来ちゃった」
すごい、あっという間に小さな空気の壁が今度は私の正面にだけ出来ている。あれ? シュリーアさんが珍しく目を見開いて固まっている。しーちゃんはじろりとすごい顔でにらんできている。レイアーナさんが額に手を当てて言った。
『規格外過ぎる。なぜそうも簡単に……』
そこではっとしたように顔を上げ、苦々しそうに言った。
『あれか。記憶で知ったか…… 』
それから私の風の盾を呆れたように見て、ふと青い光に目を止めた。
『なるほどそういうことか。レナ、そなた精霊に気に入られたようだ』
すると、その声に反応するように光が大きく上下に動いた。
『精霊は目新しいものを好む。そなたのエネルギーを得て力を使えたことがよほど面白かったのだろう。そこにいる精霊は先程召喚された時にいた者だ。次にまたそなたが何かしないかと待ち構えていたらしいな。それゆえそなたの言葉にすぐさま反応して、盾を具現化させたようだ』
「あなたたち、私が気に入ったの?」
そうっと光に声をかけると、その場でくるくると回って見せてくれた。けっこう可愛いかもしれない。
「ずっるーーーい! ずるいずるいずるい。なんでれーちゃんばっかりーーー!」
あ、やっぱりキレた。うん、予感はしてた。
本日はコラボ小説とのダブル更新です。両方お楽しみいただければと思います。
明日と6日 どちらも21時から、YouTubeの空色配信で、本編が紹介されます。明日は15分程度、6日は1時間たっぶりの配信です。良ければ遊びに来てください。(現在アーカイブで見られます)こちらからもどうぞ。
https://www.youtube.com/live/CXniiGONGiY?si=aOVMu2iyZyZwRQWq
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それではまたお会いしましょう。
皆様に、風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。




