15 本当は怖い受容体
受容体についての説明が続きます。
ようやく最初の山場が近づいて来ました。
修整しました。22.10.23
『そなたらにはその石を育ててもらいたい。肌身離さず持ち歩いておればそのように成長する。ただし、くれぐれも他の者に触れさせぬように。そして、受容体が決して顔に触れぬようにせよ。』
「他の人が触っちゃダメなのは何で?」
しーちゃんが自分の受容体を手のひらの上で転がしながら聞いた。二人を睨みつけるように見ている。警戒しているみたいだ。私も気を引き締める。二人が異世界人なら、見た目は同じようにみえても油断しちゃ駄目だよね。私達と同じように考えてるかわからないもの。
しーちゃんの問いかけに、シュリーアが軽く首を傾げながら答えた。
『そうですね。この星の方々は、わたくし達のように思念波に慣れておられません。他の協力者の方々が起こされた事をお話ししましょうか……』
そう言って話してくれたことは、結構トンデモなかった。
ある協力者は受容体を恋人に見せ、その彼女が受容体に触れた途端に彼女の思考が筒抜けになり、実は彼女が二股をかけていて自分が貢がされていたことがわかった。
また他の協力者は友達に見せびらかし、数人がよってたかって受容体に触れた結果、一度に多くの思念波が流れ込んできて意識を失った。他にも身内に異世界人からもらったと打ち明けた人が、心の病気だと思われ入院させられたり、いろいろとあったらしい。
『……このように様々なことがございました。ですので、受容体を持つことを、他の方にお伝えすることは避けた方がよろしいでしょうね』
本当に困りましたわ、というシュリーアは微笑んだままで言う。このようにトラブルを起こした人の受容体は、即座に回収しているらしい。シュリーアの仕草や表情が穏やかな分、何か余計に薄気味悪い。ぞわっと鳥肌が立った。思わず腕をさする自分の手が震える。これ、返しちゃ駄目なのかな……。
「じゃあ、顔に近付けちゃ駄目っていうのは?」
しーちゃんも気味悪くなったのか、眉をしかめてぎゅっと受容体を握り直している。
怖い。正直、返してなかったことにしてしまいたい。
そっとしーちゃんを伺うと、顔色は少し青いけれど、まだ二人から目を逸らしていない。強くにらみつけている。
だめだ、怖がってるだけじゃ。しっかり聞いて、しっかり考えなきゃ。ふーっと大きく息を吐いて、ぐっと手に力を入れると受容体をポケットに押しこんだ。
レイアーナの姿勢は変わらない。相変わらず無表情だが、微かに眉が寄っている。シュリーアは柔らかく微笑んだ同じポーズのままだ。
私の視線とレイアーナの視線が合った。するとレイアーナは一度目を閉じて、くっと開くと話し出す。
『そなたらと我らは思念波を使って会話をしている。我らにはそなたらの言葉が判らぬ。故に我らの世界にしか存在しない概念や言葉は伝わらぬところもあるだろう。だが、とりあえずは聞け』
『我らが思念波と呼ぶ力は、感情の揺れ動く力だ。感情や思考は脳が送り出す波のようなものだ。そして、最も強く発生する部分が、この眉間の辺りにある』
そう言って指差す部分には、さっきレイアーナが主核と呼んでいたティアラの一番中央に輝く宝石がある。
『受容体は思念波を感知し、吸収すると同時に強い思念波には惹かれる性質がある。眉間に受容体を近付ければ、より思念波を吸収しようと自ら触手を伸ばし、結果、受容体が皮膚に装着されることになる』
「皮膚に装着される?」
私としーちゃんが首をかしげると、シュリーアがにっこり微笑みを深くする。
『くっついて離れなくなります』
それは嫌だ!!
思わず身体ごと引いてのけぞった。そんな危ないモノを受け取ってしまったなんて! 身体が震えそうになった時、すっとその揺れ動いた感情が、ポケットの中に吸い込まれていく感覚があった。ぞっとすると同時に、頭が冷えて気持ちが落ち着くのがわかる。私は大きく深呼吸した。流されちゃ駄目だ。考えろ、私。
この人達は異世界人だ。私達と考え方が同じとは限らない。
最初、なんて言われた? 協力者になってもらう、と言っていた。なってほしい、じゃない。私達が協力者になることは二人の中ではもう決まっているんだ。それから、失敗した協力者の受容体は回収した、と言っていた。
失敗すれば回収されるんだから、わざと失敗して回収させる?
……でも、そんな簡単にいくだろうか。
「受容体を回収された、協力者だった人達はその後どうしているのですか?」
思い切って聞いてみた。しーちゃんも顎に拳を当てて何か考えていたみたいだけれど、私の言葉にはっとして顔を上げる。
レイアーナが目をすがめるようにしてこちらを見ている。
『この地の子らは賢しいのか?』
さかしい、って言ったのかな。私達に聞かせるというよりは独り言のようだ。しばらく眉を寄せて何かを考えているようだった。やがて口を開く。
『不適格と判断した者は、受容体を回収する際に我らに関する記憶を消去した。我らと出会ったことすら覚えてはいない。そなたらも不適格と判断した時点でそうさせてもらう』
だが、とレイアーナは続ける。
『そなたらはその受容体を育て、思念波の扱いを覚えた方がよい。これはそなたらにとっても益のあることであり、しかも早急に対処出来るようにならねば、そなたらの命に関わることだ』
「へ?」
「はい?」
淡々と言うその衝撃の言葉に、思わず私達は間抜けな声を出してしまった。
二人が危惧している通り、レイアーナもシュリーアも嘘は言ってないけれど、事実を全て伝えているわけではありません。
その辺り、本編では書かないと思います。相手は子どもですから。
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それではまたお会いいたしましょう。
皆様に、風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。




