表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/191

14 情報を集める

ようやく異世界の二人の名前が出てきました。

受容体についての話です。


修整しました。22.10.23

 すぐには声が出なかった。副葬品ふくそうひんについては父さんから聞いたり、今までに連れて行ってもらった博物館や資料館で見て、どんなものがあるかは知っていた。


 けれども展示してあるのと、実際に見るのとでは全然違う。暗闇にひっそりと置かれた副葬品には、埋葬された人への敬意やとむらいの気持ちが込められているよう。千三百年以上も前に閉ざされた空間に自分が立って、その当時の人々の想いにまで触れたような気がして、何というか、胸がいっぱいになってしまった。


「……れーちゃん?」


 しーちゃんの問いかけにあわてて声を出した。


「うん。何か、すごいね……」


 私が感動して声も出せないでいるとしーちゃんが、


「父さん、これナントか鑑定団に出したらあっという間に、ん百万! ていわれるんじゃない?」


 と食い気味におじさんに詰めよった。おじさんは笑って言う。


「あはは。詩雛らしいなあ。そういう観点でみればおまえの言うところのお宝は石棺の中にあるんじゃないかな」

「おおおおぉ。この中にまだ見ぬお宝がザクザクとっ!」


 ずさっと音を立てて石棺の方ヘ向き直るしーちゃんの目がギラギラしている。おじさんがそれを見て苦笑いしながら言った。 


「そちらはまた明日のお楽しみ、だね。……さあ、そろそろ外へ出ていなさい。埋葬品をテントに運び出すから。また外でゆっくり見ればいいよ。ここは暗くて狭い。君達に手伝ってもらうのは難しいから」


 私達は元気よくはいっ、と返事をして外へと向かった。



「さて、と」


 しーちゃんが腕組みをして切り出した。

 古墳を出た私達は、自動販売機で買ったジュースを手に博物館の休憩スペースに移動して会合を開くことにした。当然あの二人もいる。


 移動中に収集した情報によると、二人は思念体という状態で、実際の体はとても離れた場所にあるらしい。体のある場所が特殊な状態にあるため、長時間体を離れていても大丈夫なのだそうだ。姉の名前がレイアーナ、妹はシュリーア。コスプレのような衣装はなんと宇宙服だった。


「じゃあ、あなた達は宇宙人ってこと?」


 しーちゃんが興味津々(しんしん)という風に、ちょっと体を前のめりにしながら聞く。唇の端がくいっと上がっている。確実に面白がっている時の顔だ。こういうときのしーちゃんはとても頼りになるので、私は情報収集に徹することにする。しっかりと話を聞いて考えるんだ。気合いを入れて二人を見つめた。


 姉のレイアーナは相変わらず姿勢よく背筋を伸ばし、腕組みしている。妹のシュリーアは姉より半歩後ろで控えるように立ち、片手を頬に当ててゆるく微笑んでいる。

 レイアーナが口を開いた。


『いや、我らの住む世界は、この宇宙とは異なる空間に存在する』

「じゃあ異世界人ってこと? ……え、何? ラノベの設定それともドッキリ?」

『言葉の意味がよく判らぬが、嘘は言っていない。先程まで話せずにいたのが、受容体をそなたらがうけとって話せるようになったであろう。その受容体が証拠にならないか。』

「これだよね」


 しーちゃんがさっきから握ったままの白い欠片を、手のひらを広げて見せた。

 ずっと、握ってたんだ。


 ──あれ?


「ん?」


 しーちゃんも眉を寄せた。

 え、こんな大きさだった? もともと砂粒くらいに小さい欠片かけらだったはずなのに、ちっちゃい小石くらいの大きさにみえる。


「こんな大きさだったっけ? あれ? ねえ、れーちゃんのは?」


 言われて私もポケットからティッシュごと取り出し、そっと広げてみた。中には少し青みがかった欠片があるはずだった。なのに、なぜかごくごく小さなガラス玉がそこにあった。うす青く光るそれをつまみ上げてみる。


「えっ、何これ?」


 これは、やばいのではないだろうか……。欠片だと思っていたのが玉なら、れっきとした副葬品だ。これって、完全に猫ババになるんじゃあ……。


「返さなきゃ」


 私が焦って言うと、


『ふむ。成長が早いな。想定以上に強い』


 今までより二割増しでレイアーナがニヤリとした。この人の笑顔、怖すぎっ!!

 思わず引いてしまったら、そっとシュリーアが姉の前に手を出した。


『御姉様。もう少し柔らかく笑んでくださいませ。レナさんが怖がっておいでです』


 歌うような不思議な口調でたしなめるように言った。シュリーアが話すだけで空気まで柔らかくなるみたい。私の肩の力がすっと抜けた。眉をしかめたレイアーナが、むっと口を閉じて無表情になった。


『受容体はそれを持つものの思念波を感知して成長する。喜び・驚き・哀しみ。ヒトは感情が動くと思念波が放出される。感情の動きが大きいほど思念波は強くなる。思念波の放出が多ければ受容体の成長も早い。そなたらの感情の波に呼応して、受容体が成長したのだ』


 レイアーナの声は、女性としては少し低めであまり抑揚よくようがない。はっきりしていて聞き取りやすいけれど、とても冷たくて一切の感情がこもっていないように聞こえる。シュリーアと容姿は似ているのに、声も表情も全然違う。


『もともと形のあったものと受容体が融合した場合、原型と似た形のものに成長することがある。そなたらの受容体はわざと壊れた形のものに憑依ひょういさせた。いずれは元の形になるだろう』


 なるほど。私の拾った欠片はもとは菅玉だったのかもしれない。砂粒くらいだった欠片が成長して、もとの形がわかるようになったっていうことかな。

 でも、それじゃ、これよりもどんどん大きくなるってこと? 私の頭の中で、首飾りの菅玉の一つがどんどん巨大化し、自分が押し潰されるビジョンがぶわっと浮かんだ。

 私が自分の想像に冷や汗を流していると、


『石の成長は受容体を持つ者の思念波の強さによる。だが大きくなるとはいっても、元の形を超えることはない。我らの持つ主核よりは大きくならぬであろう。主核とはこれだ』


 額のティアラの中央にある、大きな青く透き通った宝石を指し示した。菱形の宝石はトランプのAのマークくらいの大きさだ。それ、結構大きくない?

続けて読んで下さってありがとうございます。

ユニーク100越えました。ありがとうございます。200と週間100越え目指して頑張ります!


意見、感想、アドバイス、いいね、何でも受け付けてます!


それでは、まだお会いしましょう。

皆様に風の守りが共にあらんことをお祈りいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まりんあくあ様おはようございます! れーちゃんとしーちゃんの物語。 忙しさにかまけて途中で読みに来れずいて申し訳ないです! また再開!楽しませていただきますね"ค(*'ࠔ' *)
[良い点] 副葬品を見て胸がいっぱいになるれーちゃんと、なんとか鑑定団に出そうとするしーちゃん(*´艸`) レイアーナとシュレイアも、れーちゃんとしーちゃんみたいに性格が対照的で面白いですね。 そ…
[良い点] 受容体というのは、今のところ通信機器みたいなものだと思っておけばいいのかな(*'ω'*) 成長して形が変わっていくのはちょっと楽しみかも!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ