122 しーちゃんの見た記憶
すみません、少しおくれましたが122話目を投稿します。
今回はまるまるしーちゃんの記憶を見ています。
加筆修整しました(05.12.3)
眠る前にしーちゃんから受け取った記憶を確認する。
しーちゃんも複数の思念石を持っている人がいないか探したみたい。だけど見つからなかった。それで思念波を使っている人がいないか探して、ミシェルさんがシュリーアさんとレイアーナさんから記憶を受け取っているところを見つけた。それは他の協力者たちの情報で、協力者のことをイルラ、と二人が呼んでいることがわかった。その時シュリーアさんが渡した記憶の中に、まだ見たことのなかった協力者がいた。
しーちゃんはその人の記憶を探して、インドにいたアリーシャという女の子を見つけた。三、四階建てのどれも似たような建物がひしめき合っているところにアリーシャの家はあった。一階がお店で布を売っているお店みたい。紫、濃いピンク、鮮やかな赤や青、たくさんの布が店の入口から溢れ出るくらいに吊るされてひらひらと揺れている。どの建物も土壁っぽい色でなんだかうす汚れて見える中に、布だけがキラキラと明るく輝いてみえた。
シュリーアさんはその家の三階の部屋に入って行く。
『うわ、何この部屋? 目に優しくないー!』
としーちゃんが叫ぶ。うるさいなと思ったけど、私もびっくりした。部屋の中は鮮やかな赤と青のカーテンが窓の橫にくくりつけられていて、壁が紫に近いビンクに塗られている。どこかのテーマパークの中に入ったみたい。外とのギャップに目がチカチカする。
『げ、何このデカさ。何人寝るのこれ』
しーちゃんがどん引きしたのは部屋の大部分を占めるように中央に置かれた巨大なベッドのせい。隅に置いてある机と椅子がまるで飾りみたいに小さく見えるくらい大きい。
そのベッドに置かれた長ーい枕に寄りかかるようにしてアリーシャは体を半分起こして座っていた。くるくると縮れた長い黒髪がシーツの上を流れている。褐色の肌に目鼻立ちのくっきりした、とても可愛い人だ。アーモンドアイっていうんだっけ? ぱっちりくっきりとした目。目尻に軽くしわの寄っているところまで可愛くみえる。でも、とても細い手。体も細い。……ベッドにいるところを見ると、病気なのかな。
『はかなげな美少女。絵になるー!』
何か変な感動をしているしーちゃん。いつものごとく無視だ。横にいたら無視するなーって叫んでるだろうけど、これは記憶だからその心配もないよね。記憶の共有って何気に便利。
アリーシャさんを見てもシュリーアさんは驚かない。ということはいつもこの状態なのかな? アリーシャはベッドの上でタブレット画面を見ている。聞いたことのある曲が流れている。この機械的な歌声はボーカロイドだ。……だれだっけ?
『あ、これヤーンさんたちが言ってたシュリーアさん激似のボカロのやつだ!』
── ……ああ、あれかー。
何の反応もないってことはシュリーアさんは曲を知らないのかな。アリーシャはタブレットを見ていてシュリーアさんに気づかない。シュリーアさんが声をかけた。
『ごきげんようアリーシャ、なんだか楽しそうね』
するとアリーシャが顔を上げてにっこりと微笑む。
── か、可愛いっ!
スポットライトが当たって輝いているみたい!
『な、か、神? うぅ、ま、まぶしいっ!』
よくわからない反応をしているしーちゃんがちょっとうるさいけど、それくらい可愛いってしーちゃんも思ったってことだよね、うん。
アリーシャの声は細くて少し小さいけれど、とても柔らかい。やっぱり何を言っているかはわからないけれど、その声と同時に思念波が届く。
『いらっしゃい、シュリーア姫。今Chatterで教えてもらった動画を見ていたの。あなたにそっくりだからってヤーンとルークがトークに送ってくれたものよ。見たことある?』
『ヤーンとルークに教えていただいたことはありますね。ですが詳しくは存じません』
シュリーアさんはヤーンとルークに教えてもらった時のことを思い出しながら答えている。するとアリーシャが嬉しそうに、
『あら、そうなの? じゃあ、最初から見せてあげるわ。私もとてもあなたに似ていると思ったの』
そう言ってタブレットの画面をシュリーアさんに向けた。画面いっぱいに水色のロングヘアでサファイアブルーの瞳のボーカロイドの顔が映し出されている。少し機械的なかん高いボイスに合わせてボカロが踊り出す。ボカロの動きに合わせて水色の髪がふわりと揺れる。
髪の毛の動き方が、シュリーアさんが動く時の揺れ方に似ているかも。でも髪の色や目の色は、どちらかと言えばレイアーナさんの方が似ているかもしれない。でも表情はレイアーナさんと全く違う。大体いつも気難しそうな顔をしてるもの。こんなふうに柔らかく微笑んだところなんか見たことがないよ。
そういえばシュリーアさんは、反対にいつも優しく微笑んでいて親しみやすそうな感じだ。ボカロがふんわりと笑った時の顔は、確かにシュリーアさんによく似ている。
『そうそう、これこれ。……あ、そう。ここ! あー、似てる似てる!』
しーちゃんが盛り上がっている。一緒に踊っているのか部屋がぐるぐる回る。酔いそうだから、やめてー! くぅ、記憶だから止めることも出来ないよ。……だめ、気持ち悪くなってきた。
── あ、そうか。飛ばしちゃえ。
耐えかねて他の場面を見ようと思った、そのとき。シュリーアさんの思念波が伝わってきた。
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加筆修整を待っていてくださるありがたい読者の皆様、いつも本当にありがとうございます。遅くなりましたが、再度お楽しみいただけると嬉しいです。
それではまたお会いしましょう。
皆様に風の守りが共にあらんことをお祈りいたします




