106 結果発表
ソーセージ勝負に決着がつきました。
おかしい。なんでこんなにかかったんだろう(笑)
少し加筆と修整しました(05.9.27)
おばさんが慌てて、
「ちょっと、詩雛! 紛らわしいからやめなさい!」
と言いながらしーちゃんの口を押さえた。それでもしばらくしーちゃんは、まずいまずいーと大騒ぎしていた。
「何これ、漢方薬の味がする。うぇーー」
とすごい顔で言うしーちゃんに、おそるおそるソーセージを口に運び、一口かじってみた。途端に口の中に何とも言えない味と香りが広がる。ソーセージにはもともとうすい塩味がついていたんだけど、そこに苦味と薬くさい香りが。もったいないから頑張って食べたけど、これは完全にアウトだ。私もごくごくオレンジジュースを飲んで流し込んだけれど、微妙にまだ口の中に変な香りが残っている。申し訳ないけれど、二度と口にしたくはない。
母さんたちも恐々口に運び、微妙な顔をした。母さんは何も言わずにジンジャーエールを口に運び、じろーりと父さんたちを見る。おじさんと父さんは二人と目を合わさず、普通に見えるようにわざとらしく振る舞っている。うん、あやしさ満点だね。
おばさんは父さんたちのソーセージを口に放り込み、数回│咀嚼したら無理に呑み込んでいた。
「うん、身体に良さそうな味ね」
一言言うと、おじさんたちの方に黙ってソーセージの束を差し出した。
「崇俊さん、由くん。二人で責任持って食べなさい。あなたたちはそれを食べ終えるまでお肉禁止です」
そうきっぱり言ったおばさんの顔は、笑みを浮かべていたけれど目が笑っていなかった。母さんもにっこり笑って、
── 笑っているのにとってもひんやりするよっ
そんな凄みのある笑顔で、
「由幸さん、守川さん。大人しく自分たちで処理してくださいね。きっと、身体にいいから疲れも取れるでしょうね」
と言うと、お肉のお皿を私たちに近い場所へさっと移動させた。ん? ちょっと不思議に思って聞いた。
「母さん。父さんたちのソーセージ、身体にいいの? たしかに薬っぽい味はしたけど」
ちらりと父さんたちを見ると、肩を落として黙々とソーセージを焼いている。私たちの側では、おばさんが残りのソーセージを網に乗せて焼いてくれている。どちらのソーセージも見た目はそんなに変わらないのに、驚きの味の衝撃はまだ尾を引いている。考えるだけで口の中にさっきの味がしたような気になるくらいだ。すると母さんがくすりと笑いながら、教えてくれた。
「良薬口に苦し、って言うでしょう。ソーセージに使われていた香辛料はハーブをパウダーにしたものよ。ハーブにもいろいろな種類があるけれど、今回用意されていたのは刺激が少なくて肉の臭みを取ることが出来るものだったの」
「ふうん」
ソーセージが焼けるのを待つ間、母さんの話に耳を傾ける。
「ハーブってヨーロッパの方の言い方で、同じものをアジアで言い換えると漢方薬の材料になるの。今日使われたハーブの主な原料は、セージとローズマリーだと思うわ」
しーちゃんがぴんときたって感じで、
「ソーセージのセージって、ハーブのこと?」
と母さんに目を丸くして聞いた。
「正解。そのセージよ。ちなみにソーはsaw から来ていて、焼くという意味があるの。セージの効能には疲労回復があるわ。ローズマリーも同じ。アンチエイジングにも効くみたいよ」
と教えてくれた。すると、おばさんがふんと鼻を鳴らした。
「だから、あの人たちにはぴったりの食材よね?」
父さんたちの背中がピクリと動いた。おじさんが、とってもなさけなさそうな声を出した。
「恵、わざとじゃないんだ。大人の味にしようと思ったらこうなったわけで。……いや、ちゃんと全部食べる。食べるから、頼む。せめてビールをください」
おばさんはあきれた、という顔をしたけれどくすくす笑って、
「もう、仕方のない人たちよね。まあ、ここまで我慢してくれたし、昨日までの慰労も兼ねて由実さん、いいかしら?」
と母さんに聞いた。母さんも笑いながら、
「あーあ、私も明日は仕事あったんだけどなー」
そう言ってちらりと父さんを見る。父さんがさらに縮こまる。面白い。それからわざとらしく大きなため息を吐いた。
「仕方ないなー、今日だけよ?」
父さんたちはとっても嬉しそうに生ビールを注文した。
そこからバーベキューが本格的に始まった。しーちゃんたちのソーセージは、ハーブがほんのり効いて味は良かったんだけど、食感がいまいちだった。おばさんいわく、しーちゃんがこねすぎてお肉の中の空気が少なかったかららしい。何事もほどほどが大事ってことだよね。そういうことでソーセージ対決は私としーちゃんチームの引き分けということになった。ちなみに父さんたちの反応は、二人とも自分の子の作ったものが一番、というよくわからない意見だった。おじさんも娘大好き人間だったみたい。
私としーちゃんはそれを聞いて二人で肩をすくめ合った。お酒飲んで酔ってるのもあるだろうし、と二人して放置することにした。
父さんたちが自分たちのソーセージと悪戦苦闘している間に、私としーちゃんはお肉をお腹に納め続けた。だって、焼きすぎると固くなっておいしくなくなるからね。早く食べないと美味しさが逃げちゃう。どんどんお肉を口に放り込む私たちに、母さんたちが、
「あなたたち、お肉ばっかり食べないで野菜も食べなさい」
と隙を見てはこんもりお皿にキャベツや玉ねぎ、ピーマンにヤングコーンを載せてくる。私としーちゃんは何とかその攻撃をかわそうと必死の攻防を繰り広げながら、楽しくバーベキューは進んでいった。
あんまり次回予告しないのですが、(できないともいう)次回は姫様達が登場します。
面白いな、続きが気になる!っと思っていただけたら下の方にある⭐️を5個ぽちぽちしたり、いいね、ブクマしてくださいね。まりんあくあのやる気が補充されます。
感想、レビューいただけたら、変な舞いを舞って感謝を表します(え、いらない?出ちゃうので仕方ないです)。
本編の外伝として惑星アレトのお話を冬童話2022に投稿しました。少し未来のお話がエピローグにあります。そちらもお楽しみいただけたらと思います。レビューもいただきましたので!
こちらからどうぞ。
https://ncode.syosetu.com/n2812hj/
それでは、またお会いしましょう。
皆様に風の守りがあらんことを。




