100 協力者 シエナさん
祝100話!
ここまで読んで下さってありがとうございます!
お互いの記憶を確認しあいます。
加筆修整しました(05.9.7)
うーん、せっかくのイケメンカップルの話題が日本のボカロって……。まあ、似たもの同士で良かった。そういうことにしておこう。
なるほど。思念石や受容体を使って記憶を送り合いっこできるのは便利かも。ちらりとしーちゃんを見ると、腕を組んで胸を張ったまま、どうよ、という感じで待っている。
「ね、すごいでしょ?」
「うん、これ便利だね」
「でしょでしょ。ほら、れーちゃんも早く!」
そう言ってぐいと差し出してきたしーちゃんの思念石に、私は昨日見た夢の記憶を流しこんだ。
時計を確認すると、八時までにはまだもう少し時間がある。少し過ぎてから降りても大丈夫だよね? しーちゃんを見ると、私が送った記憶を目を閉じて確認している。私も今のうちに……。もう一度軽く目を閉じると、記憶の続きを追うことにした。
最初に見えたのは、ゆるくウェーブを描く少し長めのブロンドの髪の女性だった。風にふわりと動くその髪は少し赤みがかかっていて、とても綺麗だった。
『うわ、すっごく綺麗な髪!』
しーちゃんも同じように感じたみたい。その女性はスタイルも良く、長い手足がすらっとしなやかに伸びていて歩いている姿勢まできれいに見える。大きめのショルダーバッグを肩から下げ、古めかしい建物から出てきた。同じような年齢っぽい人が何人も出入りしているから、ここは大学かもしれない。
その人は中庭のようなところをすたすたと歩き、木陰のベンチに腰をおろすと、スマホを取り出して耳に当てた。その様子を上空で見ていたシュリーアさんはタイミングを見計らっていたようで、ベンチの前に降り立つとその女性に『シエナ』と呼び掛けた。
シエナさんが顔を上げて柔らかく微笑む。うわぁ。シエナさんの瞳がびっくりするくらい綺麗で思わず見とれてしまった。
『すごい。星がとんでるっ!』
しーちゃんも同じことを考えていた。シエナさんの瞳は明るい茶色で、その瞳の中にキラキラと光って見える部分があった。すごい。こんな瞳があるんだ……。
シエナさんはスマホに話しかけているふりをしながらシュリーアさんと会話している。とってもキュートな人で、口元を引き上げて笑うと、笑顔がとても華やかになる。見とれているうちに、シュリーアさんが思念波を回収するためにシエナさんに手を伸ばす。シエナさんの思念石はタイガーアイのペンダントトップだった。
回収後、シエナさんは軽い思念波酔いを起こしていたけれど、それほどひどい状態ではなかったみたいで、次の約束をするとベンチから立ち上がり建物に戻っていった。
シエナさんの記憶はここまでだった。
その次に見えたのが、再びヤーンさんとルークさんだった。……へー、ルークさんはヤーンさんの協力者なんだね。協力者が協力者を作ることも出来るんだ……。
『ほほう。ということは、あたしも協力者を作れるのかな? なら、母さんに受容体をつければあたしの思い通りに母さんを動かせるかも!』
しーちゃんが良からぬことを考えている。そこで受容体を作ったり、くっつけているところを見ようとしたみたいだけれど、残念ながらその記憶は見られなかったみたい。悔しそうに、チッと舌打ちすると、
『肝心なところ見られないじゃん。使えねー』
とぶつくさ言っていた。しーちゃんが文句を言ったり、何かを考えている間は映像も止まっているので、私はさらりとその辺りを流して次の記憶を探す。……とりあえずしーちゃんが協力者を作るのは難しそうだ。良かった。
記憶を見ながらつい考え事をしていたら、しーちゃんが突然、
『え、待って。あたしひょっとして、れーちゃんの協力者なの? あたし、シュリーアさんとれーちゃんの両方に協力しないといけないんじゃあ……』
とちょっとパニックを起こしかけていたけれど、ちょうどそのときシュリーアさんが、
『ヤーンのパートナーにはわたくしの強制力が働きます。わたくしが不都合だと思うことがあれば、躊躇なくパートナーの記憶は消去させていただきます。パートナーが回収した思念波は、あなたの思念石が吸収を行います。ですので、わたくしが吸収する前に、必ずパートナーの思念波を回収しておいてください。パートナーの思念波は、ヤーンの思念石を通してわたくしが回収することになります』
とシュリーアさんがヤーンさんに告げている場面の映像が流れて、しーちゃんはおばさんに受容体を付ける計画をしぶしぶあきらめてくれた。
『どっちにしても受容体が作れなきゃ無理か。れーちゃん教えてくれないかな』
── うーん。しーちゃんの考えがわかるのっていいような悪いような。
どっちにしても教える気はないし、勝手に増やしていいとも思えないから黙っていよう。
その後はさっき見た場面に繋がっていて、しーちゃんの記憶は終わった。ゆっくりと目を開けると、しーちゃんが目を閉じたまま百面相をしていた。思わずぷっと吹きそうになって、あわてて口を押さえた。
少し遅れてしーちゃんも目を開けた。そして目を開けるなり口をとんがらせて文句を言い出した。
「れーちゃんの記憶、つっまんないー。サイイドさんと悠然さんが協力者だってことしかほとんど情報ないんだもん」
「え? だって、どんな人が協力者なのかな、と思って見ていたんだからよくわかったでしょう?」
するとしーちゃんがちっちっちっと言いながら人差し指を出して振る。なんですか、そのもったいぶった態度は!
ブクマがまた一人増えて9人になりました。応援ありがとうございます。
誤字報告をいただき、修正しました。ありがとうございました。
100話めまで更新することが出来ました。読者の皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。まだまだ続きます。引き続き応援よろしくお願いいたします(*- -)(*_ _)ペコリ
改稿再読の皆様、いつも本当にありがとうございます。ようやく三分の二終わりました。もう少し! 頑張ります!
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それではまたお会いしましょう。
皆様に風の守りが共にあらんことを。




