序章7話 「根源構築要素確定人物《プライドユーザー》」
固有名詞が増えますが、感覚だけ掴んでもらえば大丈夫です。
「……あの」
何か言いたげな青年の様子を見て、再度エイトさんはハッとした様子を見せた。
「そういえば説明の途中だったね。ごめんごめん」
先程までとは打って変わって態度が明るくなる。
もともとエイトさんはこういう人なのだろう。
「どこまで話したっけ」
「根源構築要素と超能力が同じような物……だってところですね」
「そうか。その発現条件はまだかな?」
「そうですね。違いが生まれるのはそこ、ってことは教えてもらいましたけど」
「おーけー、わかった。じゃあその続きから話そうか」
無理に明るく振る舞おうとしているのを感じてしまう。しかしそれについて触れるのは恐らく野暮というものなんだろう。
今はおとなしくエイトさんにご教授願うしかない。
「前提として根源構築要素が発現する条件は、実はまだそんなに詳しくは分かっていないんだ」
「……?そうだったんですか」
「うん。ただ発現した人の特徴として、『その時考えたもの、もしくは望んだもの』が関係してくるらしい」
まるで誰かから聞いたみたいな話し方が気になった。
「エイトさんはそれをどこで知ったんですか?」
「僕かい?僕は首都に訪れた時に聞いたんだよ。ちょうど封印執行中だったみたいで、空気がぴりついててさ。怖かったな~」
少しおちゃらけて見せるエイトさん。
「封印執行……って何ですか?」
根源構築要素確定人物の説明が終わっていない状態で、知らない単語が出てきてしまった。
困ったことに、どうやらこの世界の常識の記憶はそこそこ欠落しているらしい。
「そうか、それも覚えていないのか。なかなか大変だね」
エイトさんは苦笑交じりにそう言った。
「封印についてはあとで話すとして」
ベッドに腰かけをかけ、ふぅ、と息をつく
「話を戻そうか。といっても、簡単に言ってしまえば、『根源構築要素』が超能力なら、『根源構築要素確定人物』は超能力者、って関係になるんだよね」
「根源構築要素を持っている人ってことですか?」
「そうなるね、根源はその人の源、核になる部分を指しているなんて言われているよ」
「よく知っているんですね」
「子供が消えてるんだ。やっきになって調べ回るのは親として当然だろ?」
今度は落ち着いた様子で子供について触れるエイトさん。
そう、奥さんが言っていたように、本来なら彼は落ち着いた人なはずなんだ。周りの人からの信頼を的辺りにすればいやでも分かる。
それに、消えたかもしれない。と言わずに断言している辺り、エイトさんの覚悟が垣間見えるような気がする。
「そうですね。でも息子さんが根源構築要素確定人物になったことと、他の人の記憶から消えたことはどう関係しているんですか?」
「根源構築要素確定人物の中にもかなりの差があるんだ。」
「そうなんですか?例えばどんな―――」
「身体能力向上や超常的な現象の行使、それに……常識改変」
ほぼ万能に思えるその力の内容は、現在の状況と照らし合わせてみると非常に納得がいった。
でもそれなら―――
「息子さんは、皆の記憶を消したいと願ったことに……」
聞いてしまった、聞かずにはいられなかった。エイトさんが気付いていないわけがないと分かっているのに。
「……そうなるね。僕にはなぜそう思ったのかは分からない。」
それに、もう一つ不可解な点がある。
どうしてエイトさんは……
「あの、お聞きしたいんですが―――」
「―――どうして僕が息子のことを覚えているのか、だろう?」
ちなみに「プライダー」は俗称で、正式名称は「プライドユーザー」だったりします。